むかしむかしのお話です。
クロという名前の雌犬がいました。
クロは名前どおり、頭のてっぺんからシッポの先まで真っ黒でした。
クロは雑種でしたが、しなやかな体つきで、真っ黒い短い毛はツヤツヤ。
トリミングもグルーミングも何のことだか知りません。
よごれたときは、お母さんがホースで水をかけるだけ。
お父さんが庭に作ってくれた犬小屋で暮らしていました。
ご飯はたいていご飯にみそ汁、残り物。
ドッグフードなんて知りません。
首輪はあるけど、鎖につながれる事もほとんどなく、
毎日、近所の犬たちと、そこいら中を駆け回っていました。
そんなのんびりした時代でした。
クロにはちょっぴり悲しいことがありました。
この家の二人の女の子は、真っ黒い犬が苦手で、怖がっていたのです。
クロは二人に遊んでもらいたかったのに、
女の子はクロがいると絶対庭に下りて来ません。
クロはお母さんになりました。
全部で8匹、黒に赤に白黒の斑、色んな毛色の赤ちゃんでした。
2匹は生まれてすぐに死んでしまい、お父さんが庭の隅に埋めました。
二人の女の子はお墓を作ってお花を飾りました。
二人の女の子は白黒の斑の子犬が気に入りました。
二人はそれにタロという名前をつけて可愛がりました。
しばらくして、他の子犬達はもらわれていなくなりました。
クロとタロは庭の小屋で仲良く暮らしていました。
二人は、タロと遊ぶために庭に下りてくるようになりました。
クロは少し離れてそれを見ていました。
ある日、クロは珍しく鎖をつけられました。
お散歩です。
お父さんが鎖を持ち、二人の女の子はタロを抱いてついてきます。
放飼いだから、こうしてお散歩に行くのはめったにありません。
どこまで行くのでしょう?
クロの縄張りからはとうにはずれています。
クロは不安になりました。
途中、とうふやさんでお父さんはちくわを買ってくれました。
ちくわはクロの大好物です。
でも、今日は食べたくありません。
目的地の公園には、たくさんの犬がいました。
クロはここで家族とさようならしました。
お父さんと二人の女の子はタロだけを連れて家にかえりました。
女の子たちはまだ小さくて、その公園に立てかけてあった看板の文字は読めません。
「不用犬交換所」
女の子は大きくなって、自分のしたことの意味を知りました。
ごめんなさい。
クロ。
あんなにきれいな犬だったから、
もしかしたら、新しい飼い主にもらわれていったかもしれないね。
そう思いたい。
でも、そうであって欲しいと思うのは、人間のエゴです。
茶々、
ママがあの本を読んで泣いたのは、だからなの。
クロという名前の雌犬がいました。
クロは名前どおり、頭のてっぺんからシッポの先まで真っ黒でした。
クロは雑種でしたが、しなやかな体つきで、真っ黒い短い毛はツヤツヤ。
トリミングもグルーミングも何のことだか知りません。
よごれたときは、お母さんがホースで水をかけるだけ。
お父さんが庭に作ってくれた犬小屋で暮らしていました。
ご飯はたいていご飯にみそ汁、残り物。
ドッグフードなんて知りません。
首輪はあるけど、鎖につながれる事もほとんどなく、
毎日、近所の犬たちと、そこいら中を駆け回っていました。
そんなのんびりした時代でした。
クロにはちょっぴり悲しいことがありました。
この家の二人の女の子は、真っ黒い犬が苦手で、怖がっていたのです。
クロは二人に遊んでもらいたかったのに、
女の子はクロがいると絶対庭に下りて来ません。
クロはお母さんになりました。
全部で8匹、黒に赤に白黒の斑、色んな毛色の赤ちゃんでした。
2匹は生まれてすぐに死んでしまい、お父さんが庭の隅に埋めました。
二人の女の子はお墓を作ってお花を飾りました。
二人の女の子は白黒の斑の子犬が気に入りました。
二人はそれにタロという名前をつけて可愛がりました。
しばらくして、他の子犬達はもらわれていなくなりました。
クロとタロは庭の小屋で仲良く暮らしていました。
二人は、タロと遊ぶために庭に下りてくるようになりました。
クロは少し離れてそれを見ていました。
ある日、クロは珍しく鎖をつけられました。
お散歩です。
お父さんが鎖を持ち、二人の女の子はタロを抱いてついてきます。
放飼いだから、こうしてお散歩に行くのはめったにありません。
どこまで行くのでしょう?
クロの縄張りからはとうにはずれています。
クロは不安になりました。
途中、とうふやさんでお父さんはちくわを買ってくれました。
ちくわはクロの大好物です。
でも、今日は食べたくありません。
目的地の公園には、たくさんの犬がいました。
クロはここで家族とさようならしました。
お父さんと二人の女の子はタロだけを連れて家にかえりました。
女の子たちはまだ小さくて、その公園に立てかけてあった看板の文字は読めません。
「不用犬交換所」
女の子は大きくなって、自分のしたことの意味を知りました。
ごめんなさい。
クロ。
あんなにきれいな犬だったから、
もしかしたら、新しい飼い主にもらわれていったかもしれないね。
そう思いたい。
でも、そうであって欲しいと思うのは、人間のエゴです。
茶々、
ママがあの本を読んで泣いたのは、だからなの。