内田光子、ピアノリサイタル。2009年5月20日、ロンドン、ロイヤルフェスティバルホールにて。
Mitsuko Uchida: Piano
W.A. Mozart: Rondo in A minor K.511
A. Webern: Variations Op.27
L. V. Beethoven: Sonata in A Op.101
R. Schumann: Fantasie in Op.17
考えてみると、とても久しぶりのピアノリサイタル。
ロンドが始まって、ピアノの演奏会はまるで水墨画のように、静寂(白紙)も音楽の一部なのだ、と気づく。このところ、騒がしい(失礼!)オケばかり聴いていたし、ヴァイオリンなんて、大きく煌びやかな音が出てなんぼ、のような聴き方をしていたので、広いホール全体に水を打ったような静けさがとても新鮮に感じられた。
ウェーベルンは、ご免なさい、良く分からない。アンコール1曲目(誰か分からないけれど無調系の曲)はかわいらしい曲だった。
ベートーベンは演奏会向きの演奏であるように-彼女の同曲のCDよりさらに表情や弾き方の変化が大きく-感じられた。内田光子は、ピアノに向かうと、とても叙情的だと思う。メロディアスな部分は、まるでシューマンやシューベルトのようにすら聴こえる。彼女はプログラムの中で、ベートーベンとシューマンを同時に取り上げた理由として「主音」をあげているが、この美しいメロディにあるのかと思ってしまった。
後半はシューマン。これも「歌」の美しさと、激しさのmixされた演奏。それにしても、若い。既に60歳を過ぎているというのに。彼女は演奏を始めると本当に妖精のよう。最近、80歳近いおじいちゃん達の指揮を見て、若い演奏家を発掘しなくちゃ、なんて思っていたけれど、彼女のような演奏を聴くと、年齢ではないな、と思う。まだまだこれから、頑張ろう。