ついに、待ちに待った日がやってきた。ベルリンのフィルハーモニアで、ウィーンフィルを聴くのだ!フィルハーモニアに行くたびに、ここのホールが良いのかベルリンフィルが良いのか悩んできた。ここでウィーンフィルを聴けば、比較ができる、と思っていた。
ベートーベンの交響曲第6番、ドビュッシーの海、ラヴェルのダフニスとクロエ第2組曲。
ベートーベン-弦の美しい響きに思わず震えて、涙が出そうになった。フィルハーモニアホールはとりわけ残響が美しいのだけれど、ウィーンフィルは、残響を待たずとも、とにかく弦の音が美しい、と私は思う。木管も上手いが-ザルツブルクでのフルート、今日のクラリネットとフルート-、私に一番響くのはウィーンフィルの弦の音だ。
もし世界の街々が、その街のオーケストラが奏でる音と同じ美しさを持っているとしたら、私にとっては、間違いなくウィーンが一番美しい。この音を毎日聴くことができるだけで、人生は美しいのではないか?この音が日常にある生活とは、一体どんな生活なのだろう?この音と共にない人生を、どうして選択できる?ウィーンで私を雇ってくれる会社はないか?ドイツ語はできないけれど。。。?
そういえば朝日新聞のインターネット版でウィーン少年合唱団が入団希望者激減、レベル低下の危機に瀕している、という記事を読んだばかりだった。なんだか信じられない。こんな美しい音楽がある街で、音楽以外何をするというのだ(相変わらず暴論)?ウィーンフィルはどうなのだろう?
ベートーベンの毒気に当てられて、それ以降は少々集中力が落ちてしまった。ダフニスは、最後の「全員の踊り」に入る、ちょうどそのテンポが変わるところで、誰かが何かを落して、その音が、見事に音楽を断絶してしまった。客席だったのか(コーラス席が客席として開放されていた)、パーカッションあるいは金管なのかは不明だが-とにかく残念であった。ただ、最後はものすごい音量で皆圧倒されて終わった。
アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第1番。これも弦の美しさがたまらない。このテヌートをかけたような演奏がウィーンフィル独特なのだろうか。まさに琴線に触れる音、演奏である。高いお金をかけて、ロンドンからわざわざ来たのは決して無駄ではなかった。今度は是非ウィーンで聴きたいものである(あー、危険度さらに上昇)。