ヨーヨー・マ&エマニュエル・アックスの演奏会。勿論、Sold out。リターンチケットを入手したため、席は2階席の5列目中央。
いくらマとはいえ、この広い演奏会場で演奏すると、「もうちょっと音をください」にはなる。これはやむをえない。音自体はとても美しい。この楽器自体の音が好きな音であることから、Wigmore hallで聴いていたら、絶対に泣いていた、と思われる。この人数でこの値段、Wigmore hallでやったら、一人いくら取れるだろう。£200は確実か?そう思うと、4月のジョシュア・ベル£40は相当安い。勿論、マの人気は特別なものがあるが。
マの人気が特別であることは、観客の反応からも見て取れた。現れたとたん、歓声があがるのである。勿論、ロックコンサートのような歓声ではないが。出てきただけで歓声って?と思うが、それだけ期待しているのだろう。
曲目はシューマン、LiebersonのRemembering Schumann (2009, UK premiere)、ショパン。
シューマンはそれほど好きな作曲家ではないので、あまり聴いたことのない曲が多かった。アックスの伴奏が、出すぎず、やわらかい音で終始マを支える感じが素晴らしい。2人の素晴らしい関係が音や演奏態度にも表れる。曲の間に2人の交わす会話が気になる。
Liebersonが意外と良かった。2009年に作曲され、UK premiereであるので、勿論初めて聴いたのだが、とても良かった。マが現代曲を相当得意としていることが見て取れたような気がする。シューマン自体より好きかも?
前半最後はショパンの「序奏と華麗なるポロネーズ」。いつこの曲を集中して聴いていたのかバックグラウンドが思い出せないのだが-懐かしい。ショパンだけあって、ピアノパートにショパンらしい美しいフレーズが沢山ちりばめられている。その部分になると、マはピアノを聴くような仕草をして、チェロを控えめにする。2人が協奏している感じが素晴らしかった(でもアックスの伴奏はちょっと??な部分もあり残念)。
後半はシューマンの幻想小曲集Op.73とショパンのチェロソナタ。本当にマのチェロの音は美しい。音楽は皆で共有するべきものだから、このバービカンの大ホールで皆で聴くのは悪いことではない。でも、やっぱり、Wigmore hallくらいの適正なサイズのホールでマの演奏を聴いてみたい。昔堤剛氏の演奏をヴァイオリンの先生のホールで聴いて、あまりの美しさにヴァイオリンが弾けなくなったことを何度も思い出した。目を瞑って聴くと、本当に美しい音だけに自分が満たされてゆく。でも、こんなではない、もっとすごいはず、そんな思いで演奏を聴いていた。
良い演奏会ではあった。皆が叫ぶ理由も分かる。でも、マから受けられるエネルギーはこんな程度ではないはず。満足度70%2000人と、満足度98%500人とどちらが大事なのだろう、と思いながら家路についた。