rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

映画 「マッカーサー」 1977年 感想

2008-05-05 17:53:40 | 映画
映画 「マッカーサー」 1977年 感想

監督 ジョセフ・サージェント
出演 グレゴリー・ペック ダン・オハーリヒイーほか

太平洋戦争で日本軍にフィリピンを追い出されてから有名な“I Shall Return”の言葉とともに帰還、飛び石作戦で日本軍を窮地に落としいれながら本土まで迫り、戦後は占領軍司令官として日本の占領政策、日本の戦後の国のありかたまで作った人物。その後朝鮮戦争で総司令官として殆ど北朝鮮を消滅寸前まで追い詰めながら中共軍の介入で38度線に押し戻されてついには司令官を解任「老兵は死なず、ただ消え行くのみ」の言葉とともに歴史の舞台から消えたマッカーサー元帥の半生を簡潔に描いた大作である。

簡潔に描いた大作というのは矛盾している評価だけれど、軍神と評しても良い軍人としての能力を持ちながら、パットンほどの癖のある人物ではないし、日本の占領政策で見せた優れた政治能力を持ちながらもアメリカ国内で政治家としての活躍がなかっただけに、どろどろした人間模様もなく人生が簡潔に描けてしまう所が映画としての見所を少なくしてしまったのかもしれない。それでも日本における天皇の立場を評した所、日本が軍隊を持たず、戦争放棄をうたった憲法を持つ過程(これは日本人の方から言い出したと描かれている)、ソ連代表にシベリアに抑留された日本兵を帰せと言ったり、北海道に進駐することは絶対に許さないと言ったりした史実はそれなりに描かれていて、70年代後半のアメリカ人にとっては新鮮な部分も多くあったのではないかと思われる。

朝鮮戦争において、台湾の蒋介石と個人的?に何らかの約束を交わして大統領に不評を買うところも描かれている。70年代ではまだ描くことが憚られたのかも知れないが、北朝鮮を中共国境の鴨緑江近くまで追い詰めて(マッカーサーライン)、あわよくばそのまま新生間もない中共に突入、中華民国再興という野望まで視野に入っていた可能性にも触れると(ならずもの国家アメリカ Kブレストウイッツ 著 講談社 2003年刊)ぐっと深みのある映画になったかも知れませんが、総論的な伝記映画としては難しいところでしょうか。いずれにせよ米国内、米軍内での親共産主義勢力との確執やその後のレッドパージなどについてはあえて触れていないところが何か物足りなさを感ずる所以かも知れません。

映画「パットン」においても本作においても強く感ずるのはアメリカにおけるシビリアンコントロールの強さである。時には軍事的に愚作と考えられ、味方の犠牲が増える決定になる場合でも政府の決定が優先される。民主国家のみでなく、独裁国家ドイツにおいてもヒトラーの命令がロンメルの進言よりも絶対であったし、ソ連でもスターリンの命令がジューコフの献策より絶対であった。これは当然といえば当然のことで、日本も明治の戦争まではこの国家として当たり前のことが通っていたのである。日本だけがなぜこの当たり前の事が途中から通らなくなってしまったのかを見つける事が日本を戦争へ導いた鍵となると思っている。
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