rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

日本の医療問題とは何か?

2008-05-06 18:59:01 | 医療
日本の医療問題とは何か?

今日はご主人様の専門の医療についてです。ちなみに今病院で急患待機をしながら書いています。医療崩壊という言葉が頻繁にマスコミに取り上げられるようになりました。救急診療にかかれなくてたらい回しにされるとか、出産を扱う医療機関が減少しているとか、またこの4月から後期高齢者医療制度が導入されて保険料を年金から天引きされた上、自由に医療機関にかかれなくなるとか、どうもいままで我々日本人が普通と考えていた医療制度が変化していることは分ってきたのではないだろうか。しかしそもそも「日本の根本的な医療問題というのは何なのだ?」と問われると明確に答えられる人はあまりいないのではないかと思います。

マスコミは医療ミスばかりを取り上げて騒ぐので、ここ数年で日本の医療はレベルが低下してミスだらけになったのが問題だと勘違いしているひとが実は沢山いるのではないかと危惧します。

日本の医療問題と言われるもの、実は立場によって全く違ったことを論じているのではないかと言うのが私の考えです。

<政府:日本の医療は金がかかりすぎるから医療費を抑制せよ。>

実は日本の医療問題はこの一点しかないのです。それも日本の医療が国民皆保険制度の上に成り立っているから、それを支える政府と企業が経済的にきつくなったので、今まで通りの右肩上がりの医療費増加は認めない、という経済的視点に立った問題のみが本来の日本の医療問題のはずです。医者の倫理だ、患者のアメニティだなんだと息巻いている問題も実は予算があれば解決することばかり、金を出さずに解決しようとするから誰かを悪者にしてその悪者の隠忍自重によって解決するしかなくなるわけです。

少し古いですが、(http://club.carenet.co.jp/JM/2003/09/0917_02.asp?SID=)に「医療構造改革の現況と今後」と題された日本臨床内科医学会のシンポジウムが紹介されていますが、ここで話されている内容は「医療構造改革」=診療報酬体系のことのみです。政府にとっては医療費抑制をしないと国民皆保険を前提とした医療は崩壊してしまうので日本の医療問題=医療費になるわけです。一方医療者側にとっても、医療費高騰の原因が病院の儲けによるものでなく医療材料や機器の増加が原因であるのに診療報酬がどんどん下げられて倒産する病院が増加している現状(現在9割以上の病院は赤字です)から、これ以上診療報酬を下げられたら医療は崩壊してしまう、と指摘するのです。

<医師会:診療報酬を下げることが日本の医療問題の原因である>
という主張になります。

問題を複雑にしているのはマスコミです。純粋に経済のことだけを論じていれば問題がすっきりしているのに、金がかかりすぎるのは病院の儲け主義がいけない、と特定の悪者を作ってしまった。おまけにアメリカの医療産業(薬や医療機器といったハード面のみでなく、病院や医療保険といったソフト面も)を日本に進出させるようアメリカの医療を宣伝しろという圧力がかかってしまった(米国の日本政府への年次改革要望書01年版http://tokyo.usembassy.gov/pdfs/wwwfec0003.pdf )ようです。

マスコミは乗り心地の良いアメリカ車がいかに素晴らしいか、大量生産の国産車がいかにみすぼらしいかを見境なく喧伝してしまいました。アメリカ車は燃費が悪く小回りがきかないなんて一言も言わない。世界では日本車が一番であるとの評価が下されている(WHOは日本の医療が世界一であると評価しているhttp://www.who.int/whr/2000/en/index.html)にも関わらずです。最近は減ってきましたが、一時アメリカの医療がいかに素晴らしいかを喧伝する番組が多くなかったですか。私もアメリカに留学しましたが、アメリカは医学は一流ですが医療は三流というのが医者の常識ですよ。

一方、新聞の投書欄などにみる国民(患者側)からみた日本の医療問題は、

<患者側:患者中心の医療でないことが日本の医療問題である。>

という主張ではないでしょうか。病院も政府も医療に関して何を策しているのかよく判らない。隠ぺい体質、事故隠し、もっと患者に分かり易くしなさい、ということでしょう。

本来、国民皆保険を維持するための純粋な経済問題であった医療問題が、国民に届いた時には倫理や医療制度の問題にすり替えられてしまった。そして巧妙にアメリカ資本が30兆円産業である日本の医療に食い込もうとしていたので複雑になってしまったと言えましょう。

食い込もうとしていた、と過去形なのは、小泉政権の時代に医療特区とか株式会社の病院経営参加とか盛んに宣伝されていたものの、病院経営自体があまり儲からないということが分り、アメリカは日本の医療への参入を諦めたようなのです。04年の年次改革要望書(japan.usembassy.gov/pdfs/wwwfj-regref20051207.pdf )では、98年頃の要望書(http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-2505.html#_Toc433083716 )に書かれていたように、輸入障壁を無くしてアメリカの医薬品や医療機器を沢山買いなさいと書いてあるものの、医療市場を開放しなさいと書かれなくなりました。

我々はもう一度日本の医療問題とは一体何なのかを整理して考えてみるべきでしょう。簡単には行きませんが「はじめに医療費抑制ありき」の前提を棄却すれば今問題になっていることの殆どは解決します。別の問題にすり替えて論争をしているところに医療問題が一向に解決しない理由があると思います。
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