早春の味覚の代表格、イチゴ。埼玉県の秩父地域には毎年多くの人がイチゴ狩りに訪れるが、今年は厳冬によりイチゴの色づきが遅れ、観光客を受け入れられなかったり、規模を縮小する農家が相次いでいる。農家は「昨年は震災、今年は厳冬。惨憺(さんたん)たるありさまだ」と悲鳴を上げている。
秩父地域では、秩父市や横瀬町、長瀞町などで約30のイチゴ農家が1月から4月にかけて一般客向けのイチゴ狩りを行っている。シーズンが本格化するのは2月だが、秩父地域の観光農園で組織する「秩父観光農林業協会」によると、今年は例年にない冷え込みでイチゴの色づきが遅れているという。「今年は例年になく苦しいという農家が多い。休園している農家もあるので、イチゴ狩りに訪れる前には、必ず電話で確認をしてほしい」と同協会。
「この寒さで収穫量が激減している」と話すのは、横瀬町で約50年間イチゴを栽培してきた「みかど農園」園主の冨田征作さん(88)だ。寒気の影響が強く、例年の3分の2ほどに減っているという。
ハウスの中で栽培するイチゴだが、室内は常時8度前後に維持しなければならない。そのため、燃料となる重油も通常の3割増で発注。冨田さんは「燃料代もばかにならない」と嘆く。
例年であれば一日数百人の客が訪れる同園だが、今年は収穫量が少ないため、予約客のみの受付としている。昨シーズンは3月の東日本大震災で客足が激減。再起をかけた今年も厳冬となり、農家にとっては大打撃だ。冨田さんは「ダブルパンチ。惨憺たるありさまです」という。
別の農家は、イチゴの成熟が追いつかず、本来は書き入れ時であるはずの土日もやむを得ず休園した。「ある程度の広さの畑があれば対応できるが、小さな農園では休まざるを得ない。せっかくのイチゴ狩りシーズンなのにこの状況では、かなり経営は苦しくなる」という。
厳冬に苦しむイチゴ農家。しかし、イチゴ自体の出来は「収穫量が少ない分、1粒に甘みやうまみが凝縮する。寒さで身が引き締まって、通常の年よりもはるかにいい」(冨田さん)という。観光客がますます増える3月と4月。農家の人たちは自慢のイチゴを多くの人に食べてもらえるように、暖かな春の到来を祈っている。
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