許されるパロディーか商標権の侵害か-。北海道土産の人気菓子「白い恋人」を製造販売する石屋製菓(札幌市)が、菓子「面白い恋人」の販売を吉本興業(大阪市)にやめさせるため札幌地裁に提訴した。笑いで済まされない争いとなり、注目されている。
「全然面白くない。努力して築いたブランドに便乗し不当に利益を得ている」。石屋製菓の島田俊平社長は、昨年11月の提訴後の記者会見で、主力商品へのただ乗りとして吉本興業を非難した。
白い恋人はチョコレートをクッキーで挟んだ菓子。1976年の発売で昨年度の売り上げは約72億円に上った。一方、面白い恋人はみたらし味のゴーフレットで、一昨年の夏に関西で発売。口コミで広まり、約1年間で約6億円を売り上げる「予想外の好評」(吉本興業)を得た。
石屋製菓側は「名称と箱の図柄が類似している。商標法と不正競争防止法に違反する」と主張。
吉本の担当者は「小さな笑いを届けたいという思いを詰めた商品。ブランドをおとしめるつもりはない」と釈明。提訴をきっかけに売り上げが伸びたという話にも「複雑な心境」と恐縮する。
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特許庁や経済産業省によると、商標法と不正競争防止法は(1)外観(2)呼称(3)イメージ(4)取引の実情-からオリジナルと混同しそうな類似商品を規制。さらに不正競争防止法には、オリジナルが著名な商品に限り、混同の恐れがなくても類似すれば違法とする規定もある。
ただ、オリジナルを模しつつも表現を変えて面白みを持たせるなどしたパロディーに関する規定はなく「類似しているかどうかを判断するだけ」(特許庁の担当者)。
今回の事例を立命館大の宮脇正晴教授(知的財産法)は「混同はしないだろうが外観と呼称は似ている。著名商品の類似品として面白い恋人が不正競争防止法に触れる可能性はある」と話す。
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一方、パロディー擁護の意見も少なくない。商標権に詳しい札幌市の平沢卓人弁護士は「ブランドを保護しすぎると、表現の自由を制約する恐れもある。パロディーを許容する社会がいいのでは」との見方を示す。
JR大阪駅で家族土産に面白い恋人を買った大津市の女性(50)も「パロディーやとすぐ分かって笑いが起きますよ」と楽しんでいる様子。
しかし“本家”は笑ってばかりはいられない。
類似品に悩まされてきたスポーツ用品販売大手のアディダスジャパン(東京)の広報担当者は「消費者が誤って購入しても品質や安全性を保証できない。ブランドイメージも下がる」と指摘。ケースに応じ、類似品業者への警告や、商標を管理する特許庁への異議申し立てで対抗している。