弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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リンクへの課税…? [EU新著作権法案]

2016年09月24日 11時28分35秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
午後からはお天気下り坂らしいですね。な湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(ニューズウィーク日本版より引用)
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EUの新著作権法がもたらす「閉じたインターネット」
2016年9月23日(金)16時00分

欧州委員会が先週14日に発表した、EU改正著作権法案が波紋を呼んでいる。2020年までの「デジタル単一市場」完成のため、様々な政策を打ち出しているEU。その中でもEU全土の著作権法の改正と調和は、もっとも重要かつセンシティブな政策のひとつだ。

現在の著作権法は、EU28加盟国がすべてバラバラにつくったもので、特にEU市民がオンライン上でコンテンツのやり取りをするときに大きな法的不確実性を生んでしまっている。これを是正するため、欧州委員会は2014年の発足から足掛け2年、EUの改正著作権法案を提案するための準備をすすめてきた。そして先週14日、ついにそのプランの全貌が明かされた。問題は、その内容だ。

もっとも物議をかもしているのは、法案に盛り込まれた「副次的著作権」の項目だ。新しいEU法案では、コンテンツ出版後20年にわたって出版社が許諾を取っていないコピーに使用料を請求することができるという、あたらしい著作権が盛り込まれている。

 ここで問題となっているのは、この著作権が「オンラインにアップされているコンテンツ」にも適用される、というところだ。たとえば、ニュースキュレーションサービスがオンラインにアップされたコンテンツにリンクを貼ることにも使用料を請求できてしまうことから、この法律は「リンク税」としてつよい非難を浴びている。

じつは2014年、同じような法律がドイツとスペインで導入されたことがあった。両国では、Googleニュースなどのニュースキュレーションサービスがニュースにリンクを貼り短い抜粋を表示することに対して、出版社側が使用料を請求できるというあたらしい著作権を導入。このとき課税義務を課されたGoogleは、ドイツとスペインでGoogleニュースをそれぞれ運営停止して対抗した。出版社はGoogleニュースからの検索流入がなくなりトラフィックが10~15%ほども激減し、この「副次的著作権」の導入を取りやめた、という経緯があった。

 おなじような法律を2007年に試みたベルギーも、2011年にこれを撤回している。ニュースキュレーションサービスがハイパーリンクによってニュースをキュレーションすることは、あたらしい読者を獲得する「市場拡大効果」があることは研究によっても明らかだ。

 過去に加盟国レベルで導入された際には明らかに「失敗」だと言われていた副次的著作権。にもかかわらず、この条項がEUレベルでの著作権法に導入されていたことに対し、Googleをはじめとするオンラインサービス企業やユーザー団体などからつよい非難が上がっている。

 このような著作権の導入の影響は甚大だ。まず、「リンクへの課税」が課されたなら、ユーザーはキュレーションサービスをつかって自由に記事を読むことやシェアすることができなくなる。また、あまり知られていない出版社やジャーナリストがキュレーションサービスに載る機会も減ってしまうことから、表現の自由やジャーナリズムの多様性も失われる。

 さらに、「使用料」を払える巨大企業だけがサービスを提供することができ、中小企業やスタートアップは市場に参入できないという構造的な格差が生まれ、イノベーションを阻害することにもつながる(実際に2014年のスペインでは、Googleニュースだけではなく国内のオンラインキュレーションサービスも運営停止に追い込まれている)。

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(引用終わり)

記事の後半には「リンク」に関する話だけではなく、動画プラットフォーム(Youtube等)の責任強化(ノーティアンドテイクダウンから一歩進んだ責任の強化)にも言及されている。

著作権保護を厚くすることは、相対的に“古典的な”大規模事業者にとって有利となるケースが多い。
また情報通信テクノロジーの進展に対して制度的な枠組みで規制を掛ける、という側面もあり、
これらはありていに言えば、事業者の「世代間闘争」の様相を呈する。

技術革新や「世代交代」が常に称賛されるべきとは言わないものの、
既存の枠組みの背景にあるのは変化するスピードを早め過ぎることによる弊害予防措置を求める“旧勢力”の思惑か?
と勘繰りたくなることもある。

保守 と 革新
秩序の維持 と 新機軸の提唱
安定性 と 利便性

どうもうまく対立軸を表現する対の言葉が見当たらないが、
変わろうとする時代に対し歯止めをかけようとする「規範」の根源が既得権益の保護でしかないのであれば
法秩序に対し失望する層が増加するだろう。
その結果は、法秩序への信頼の低下であり、社会全体の効用とモラルの低下か
(“モラル”に関しては、そもそもその物差し自体が恣意的に動かされるから更に「低下」するわけだが)。


ともあれ、
EUにおける法改正、とりわけボーダレスな分野である著作権法の改正は
(仮に実現すればだが)早晩日本にも影響を与えることになるのであろう。
そうすると、
“あの頃はタダでリンクし放題だったねー”なんて言う時代が来てしまうのだろうか…?


コメント
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