弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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“著作権法の壁”

2013年01月25日 08時57分21秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
中山信弘東大名誉教授のパテント記事
「著作権法の憂鬱」を読んだ。
主に直近の改正と「フェアユース」に関して取り上げられていた。

以下雑感。


1.2007年に発刊された同教授の「著作権法」では「フェアユース」導入には
慎重な姿勢であったが、今回の寄稿では積極的な立ち位置に変化している。

しかし同時に、24年改正の“名ばかりフェアユース”について、
(立場上相当遠慮して書いていることが見て取れるが)
その成立過程も合わせ大いなる疑問を呈している。
時代の進展が急スピードであることもさることながら、
今回の『拙速な』法改正に対して危機感を感じているように受け止められた。

小職のような知財業歴たかだか10年そこそこの人間から見ても
今回の改正(というか、世の中の実際と法規範とのあまりにも大きなギャップ)には
強い違和感を感じているのだから、
この道の大家である同教授の目からは
“見ちゃおれん”“だまっちゃおれん”というのが実感なのだろう、と感じた。



2.また、同記事では以下のように述べ、グローバルな競争の観点から
情報産業において既に大きく立ち遅れている我が国の現状を指摘し、
いたずらに成文化してしまった法規制が更なる足枷になることを
危惧している。

「日本の発展の牽引車であった電気産業は、テレビやパソコンのような
 物つくりでは低迷し、情報産業に脱皮しようと思えば、そこに著作権法の
 壁が立ちはだかっている、という事態は避けなければならない。
 著作権制度がなぜ存在するのか、その正当化根拠はどこにあるのか、
 という点に思いをいたす必要があろう。」

そして、
「お上が決めた安全な道だけを歩むのではなく、自らがリスクをとって
 行動をするという様式に変わっていかざるをえない。フェアユースは
 そのような社会の変化のひとつに過ぎないと思う。」
と述べている。

フェアユース規定の導入には自己統治(ルールの内部化)が求められる、
という穏当な趣旨ともとれる。

が、むしろ記事全体からは、
“こんな法改正に従っていたら我が国産業は取り返しのつかない後れを取ってしまう。
 お上の言った通りにしていても報われる保証などない今の世の中だから
 法的リスクも含めたリスクをバンバン取って、
 正しいと信じる道を突き進め。
 正しいかどうかを、他人に決めさせるな!”
というかなり過激なエールにも読める。

正直、このお立場の人がこのようなことを書かなければならないこと自体が
結構異常な状態だと思う。
少なくとも著作権法の分野において、立法府は必ずしも有効に機能していない。
TPP参加への議論が開始したとして、まともに対応できるんだろうか??


とまあ、色々考えさせられる刺激的な投稿でした。
 
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