弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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五輪絡みの知的財産(その2_アンブッシュ・マーケティング)

2016年08月12日 07時49分14秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
もうお盆休みに入られている方も多いのかな?
…ええうちはカレンダーどおりです。
てか昨日も昼間の数時間を除けば普通にお仕事でした。

昼間は、下のムスメを連れて卓球しにいってました。
前々からちょこちょことやっているのだけれど、
昨日は成長、というか進化を感じられた。
ラリーが10回以上続くようになったり、
時折急角度な鋭い打球がきたり。

リターンのコースにあわせて先回って動けるようになると、
一気に上手くなるのだなぁ、と実感。


さてさて、前回の続き。
「アンブッシュ・マーケティング」のおはなし。

大会組織委員会がリリースしている「大会ブランド保護基準」(ココから見れる)によれば、
アンブッシュ・マーケティング とは
「故意か否かをとわず、団体や個人が、権利者であるIOC等の許諾なしにオリンピック・パラリンピックに関する
 知的財産を使用したり、オリンピック・パラリンピックのイメージを流用すること」
とある。

大会の運営経費の大部分がスポンサー企業に依存している以上、
その構図を脅かすような便乗商法は排除しなければ大会そのものが成立しない、というわけだ。

法的に保護されるべきもの=商標登録がなされている、あるいは不正競争防止法上規定されている(17条ほか)ものについては、
そもそも侵害に該当するならば便乗の意図いかんにかかわらず規制の対象となる。
しかし、「アンブッシュ・マーケティングとして問題となる例」に挙げられているものの中には、
「オリンピックを想起させる用語の使用」の例として「2020/GAMES」の文字を付したマグカップの例や
「2020へカウントダウン」という語の例など、現状の法規範に照らしてNGとするのはムリがあるものもちりばめられている。

要は“どさくさまぎれ”の印象をぬぐえないのだ。

実際のところ、何がアウトで何がセーフなのかの線引きは容易ではない。
主体によっても違うだろう。
正規のスポンサー企業のライバル企業が、あたかも協賛しているかのような紛らわしい表記を採用することは、
確かに道義に反する面も生じることもあるだろう。
一方で、田舎の商店街のアパレルショップが「2020円セール」をやっても、
それが“排除されるべき便乗商法”とは言えないだろう。

2年前の「パテント」誌で、「スポーツイベントの商標保護」という記事が掲載されている
ここで上記タイトルで検索すると読むことができる)。
これによれば、現在開催中のリオデジャネイロオリンピックも含め、過去の大きなスポーツイベントにおいては
時限立法としていわゆる「アンブッシュ規制法」が制定され、既存の知財法の枠組みを超えた保護を行っている。

法定されることで一般には予見可能性が生まれるから、何がアウトで何がセーフかの見極めがしやすくなる。
というより、こうした特例法がない中、既存の規範に照らして違法性が無い行為までを捉えて
「知的財産の侵害」と声高に叫ぶ行為は、かえって「知的財産の重要性」を毀損しかねないので、
業界の住人としては迷惑に感じてしまう。

更に言えば、公衆の面前で大々的に行っているイベントなのに、
そのイベントにかこつけた商売を行うこと自体を悪徳視すること自体に違和感をありありと感じる。
上記「パテント」誌内でも、「直ちにアンブッシュ=社会的な悪という単純な構図が成立するわけではない」
と述べている。

現在のところ、2020年に向けてそうした特例法の制定の動きがある、との情報には触れていない。
適切な秩序維持のためにも、もし「ブランド保護基準」記載のような保護が必要と考えられるならば、
立法府におけるオープンな議論を経て、形となった上で主張すべきではなかろうか?









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