おはようございます!
たぶん今日あたりが梅雨入り前の最後の晴れ間なのでしょうね、な感じの湘南地方です。
さて、今日はこんな記事。
(SANKEI BIZより引用)
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「小田原かまぼこ」訴訟、知財高裁で和解
「小田原かまぼこ」の地域団体商標を保有する神奈川県小田原市の「小田原蒲鉾(かまぼこ)協同組合」が、同県南足柄市のかまぼこ製造業者「佐藤修商店」などに商標を無断で使用されたとして、業者に製品の販売差し止めなどを求めた訴訟は、知財高裁(鶴岡稔彦裁判長)で和解が成立した。和解は1日付。
組合側の代理人によると、秘密保持の条項を含んでおり、和解内容は明らかにされていない。
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(引用終わり)
このニュースについては、一審判決のニュースについてこちらで取り上げたところ。
このエントリのときにはまだ判決文が公開されていなかったので言及してなかったのですが、改めて判決を読んでみた。
原審でポイントとなると思われる点をピックアップすると以下の通り。
・…地域団体商標制度が導入された趣旨に照らせば,地域団体商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務に当該地域の名称を付した先使用者の不正競争の目的の有無を検討する前提として,当該指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務に当該地域の名称を付することのできる地域の範囲を判断する際には,先使用者の商品又は役務が,当該地域と同様の自然,歴史,文化,社会等のつながりを有しているかを考慮すべきであり,これらのつながりは必ずしも行政区分に限定されるものではないと解すべきである。
として、「小田原」の地域の範囲を検討。
・現在の小田原市の相模湾沿岸の地域は,原材料や製造地の点において蒲鉾と密接な関連を有する中核的な地域であったが,関東大震災の後に現在の小田原市の相模湾沿岸の地域以外の地域から原材料を大量に仕入れるようになって原材料の点での関連性がほとんど失われた上,さらに昭和以降は蒲鉾の製造工場を神奈川県外に移転する業者が出てきたことを契機に製造地との関連性も希薄になりつつある反面,小田原市の相模湾沿岸の地域以外のより広い地域が蒲鉾の製造地として関連性を有するに至っている。そのため,本件商標の指定商品である小田原産のかまぼこにいう「小田原」とは,小田原市の相模湾沿岸の地域のみならず,ここを中心として自然,歴史,文化,社会等のつながりを有している地域が含まれると解され,小田原市の周辺の地域も「小田原」に含まれると認められる。
としたうえで、以下の通り判断している。
・被告B商店の本店や蒲鉾を製造する工場は南足柄市内にあるところ,その所在地は小田原市と南足柄市の境界から北に約2kmの位置にあり,小田原市と地理的に極めて近接していること
・南足柄市を含む小田原市周辺の地方自治体には,「小田原」の名称を付した業者名や店舗名が複数存在していること
・被告B商店の本店及び工場の所在地である南足柄市は江戸時代に現在の小田原市を中心に小田原市周辺を支配していた小田原藩の支配領域にあったこと
➡被告B商店の本店や工場の所在地は小田原市と歴史的,文化的,社会的,経済的に密接な関係があると考えられる。
これらのことを考慮すると,被告B商店が蒲鉾を製造してきた場所は,蒲鉾とつながりを有する小田原市の周辺の地域に含まれている。
・被告B商店を設立したBは,株式会社わきや商店(原告の組合員)に勤務して蒲鉾の製法を修得し,その後も被告B商店は小田原市内の蒲鉾製造業者で勤務経験のある者を雇用
・原告の組合員である業者において蒲鉾の製造を経験した者から蒲鉾の製造方法について教わったりしたことで、本件商標の指定商品である「小田原産のかまぼこ」の製法に関する知見や技術を取得している
・被告B商店が設立された昭和40年頃から平成3年頃までの間,東海道新幹線沿線各地の名産品として,東海道新幹線の車内販売の商品として,包装に「小田原かまぼこ」や「小田原蒲鉾」と記載されていた蒲鉾を製造・提供しており,小田原市周辺で製造された蒲鉾に対し他の地域の蒲鉾商品と区別して付加価値を高めようとしてきた
➡被告B商店に他人の信用を利用して不当な利益を得ようとする不正競争の目的はないと認められる。
判決の中で人的なつながりについても言及しているあたり、結構生々しい判決だなぁ、という印象。
もともとほぼ隣町の業者さん同士だったところ、どんな経緯があって訴訟にまで至ったのか外部の人間には知る由もないですが、
もし地域団体商標登録制度が導入されたがために、というか、その制度趣旨が正しく理解されなかったがために争いが誘発されたのであればちょっと笑えない話。
今日現在で原告側HP、被告側HPともに本件訴訟の和解についてのニュースリリースは掲載されていないけど、同業者でけたぐりあうのではなく需要者の方を見て品質向上/サービス向上に注力するのが、地域ブランド向上の価値向上に必要なことじゃないかな、と思う。
その意味で、早期の和解は望ましいことかと。
たぶん今日あたりが梅雨入り前の最後の晴れ間なのでしょうね、な感じの湘南地方です。
さて、今日はこんな記事。
(SANKEI BIZより引用)
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「小田原かまぼこ」訴訟、知財高裁で和解
「小田原かまぼこ」の地域団体商標を保有する神奈川県小田原市の「小田原蒲鉾(かまぼこ)協同組合」が、同県南足柄市のかまぼこ製造業者「佐藤修商店」などに商標を無断で使用されたとして、業者に製品の販売差し止めなどを求めた訴訟は、知財高裁(鶴岡稔彦裁判長)で和解が成立した。和解は1日付。
組合側の代理人によると、秘密保持の条項を含んでおり、和解内容は明らかにされていない。
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(引用終わり)
このニュースについては、一審判決のニュースについてこちらで取り上げたところ。
このエントリのときにはまだ判決文が公開されていなかったので言及してなかったのですが、改めて判決を読んでみた。
原審でポイントとなると思われる点をピックアップすると以下の通り。
・…地域団体商標制度が導入された趣旨に照らせば,地域団体商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務に当該地域の名称を付した先使用者の不正競争の目的の有無を検討する前提として,当該指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務に当該地域の名称を付することのできる地域の範囲を判断する際には,先使用者の商品又は役務が,当該地域と同様の自然,歴史,文化,社会等のつながりを有しているかを考慮すべきであり,これらのつながりは必ずしも行政区分に限定されるものではないと解すべきである。
として、「小田原」の地域の範囲を検討。
・現在の小田原市の相模湾沿岸の地域は,原材料や製造地の点において蒲鉾と密接な関連を有する中核的な地域であったが,関東大震災の後に現在の小田原市の相模湾沿岸の地域以外の地域から原材料を大量に仕入れるようになって原材料の点での関連性がほとんど失われた上,さらに昭和以降は蒲鉾の製造工場を神奈川県外に移転する業者が出てきたことを契機に製造地との関連性も希薄になりつつある反面,小田原市の相模湾沿岸の地域以外のより広い地域が蒲鉾の製造地として関連性を有するに至っている。そのため,本件商標の指定商品である小田原産のかまぼこにいう「小田原」とは,小田原市の相模湾沿岸の地域のみならず,ここを中心として自然,歴史,文化,社会等のつながりを有している地域が含まれると解され,小田原市の周辺の地域も「小田原」に含まれると認められる。
としたうえで、以下の通り判断している。
・被告B商店の本店や蒲鉾を製造する工場は南足柄市内にあるところ,その所在地は小田原市と南足柄市の境界から北に約2kmの位置にあり,小田原市と地理的に極めて近接していること
・南足柄市を含む小田原市周辺の地方自治体には,「小田原」の名称を付した業者名や店舗名が複数存在していること
・被告B商店の本店及び工場の所在地である南足柄市は江戸時代に現在の小田原市を中心に小田原市周辺を支配していた小田原藩の支配領域にあったこと
➡被告B商店の本店や工場の所在地は小田原市と歴史的,文化的,社会的,経済的に密接な関係があると考えられる。
これらのことを考慮すると,被告B商店が蒲鉾を製造してきた場所は,蒲鉾とつながりを有する小田原市の周辺の地域に含まれている。
・被告B商店を設立したBは,株式会社わきや商店(原告の組合員)に勤務して蒲鉾の製法を修得し,その後も被告B商店は小田原市内の蒲鉾製造業者で勤務経験のある者を雇用
・原告の組合員である業者において蒲鉾の製造を経験した者から蒲鉾の製造方法について教わったりしたことで、本件商標の指定商品である「小田原産のかまぼこ」の製法に関する知見や技術を取得している
・被告B商店が設立された昭和40年頃から平成3年頃までの間,東海道新幹線沿線各地の名産品として,東海道新幹線の車内販売の商品として,包装に「小田原かまぼこ」や「小田原蒲鉾」と記載されていた蒲鉾を製造・提供しており,小田原市周辺で製造された蒲鉾に対し他の地域の蒲鉾商品と区別して付加価値を高めようとしてきた
➡被告B商店に他人の信用を利用して不当な利益を得ようとする不正競争の目的はないと認められる。
判決の中で人的なつながりについても言及しているあたり、結構生々しい判決だなぁ、という印象。
もともとほぼ隣町の業者さん同士だったところ、どんな経緯があって訴訟にまで至ったのか外部の人間には知る由もないですが、
もし地域団体商標登録制度が導入されたがために、というか、その制度趣旨が正しく理解されなかったがために争いが誘発されたのであればちょっと笑えない話。
今日現在で原告側HP、被告側HPともに本件訴訟の和解についてのニュースリリースは掲載されていないけど、同業者でけたぐりあうのではなく需要者の方を見て品質向上/サービス向上に注力するのが、地域ブランド向上の価値向上に必要なことじゃないかな、と思う。
その意味で、早期の和解は望ましいことかと。
私、まさに南足柄市民であり、この裁判は気になっていました。
判決とは直接関係ありませんが、原告の小田原蒲鉾組合のHPに「小田原蒲鉾十か条」というのがあり、その第8条にこうあります。
「小田原の蒲鉾業者としての歴史を50年以上有し、周囲からも同業者からも広く認知されている企業であること。」
つまり、小田原蒲鉾の名称は使えないにもかかわらず、小田原で蒲鉾を50年以上作り続けてようやく組合員になることができ、小田原蒲鉾の名称が使えるようになると。
これ、新規参入へのハードルがとても高い(事実上新規を排除)と思うのですが、この規定には問題は無いのでしょうか。
コメントありがとうございます。
「小田原蒲鉾十か条」拝見しました。
ご指摘の規定の位置づけが明確ではないので是否を判断し切れない面があります。
組合としての「理念」に過ぎないのか、この規定に基づいて組合員相互の事業活動を制限し得るものなのか、この記載だけではわかりませんね。
第10条で「小田原蒲鉾協同組合の組合員であること。 」とあるので、50年の歴史を有していなくても組合の構成員になることはできそうですし。
※仮に「組合員になること」も制限しているのであれば、自由加入の原則が定められているはずの設立根拠法に反した扱いをしていることになりそうです。
「組合員にはなれるけど歴史が無いから『小田原蒲鉾』を使用することができない」という扱いも、違和感があります。
確かに商標法第31条の2第1項では
「…地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員は、…『当該組合等の定めるところにより』…登録商標の使用をする権利を有する」
と定められており、構成員なら自由に使わせなければならない、という建付けではありません。ただこれは、「団体内部の規則において特定の品質等に係る基準に合致した商品」に限って使用を認めるケースを許容したものであり、「50年の歴史」というハードルが品質担保の観点から合理性を持っているとは通常考えにくく、むしろ新規参入阻止=既存組合員優遇のための規定とも取れそうです。
結論めいたことは申し上げにくいですが、確かにご指摘に妥当性はあるように思います。
なるほど、やはりそういう恐れがありますか。腑に落ちました。
(ちなみに私は組合や業者と一切の関係は無く、またそういった事業をするつもりも無いので、専門家の言質云々ということにはなりませんので、ご安心ください笑)
早速のご返答どうもありがとうございました。