弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【商標】「アマビエ」の商標登録出願

2020年07月05日 10時02分27秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
やや重たい雲が空に漂う、今朝の@湘南地方です。

さて、掲題の件。
D社さんが出願したということで界隈をにぎわせているようです。
(出願内容はこちら

多くはあまり好意的ではないコメントのようです。
たとえばこちらのブログ

[原則論として]
まあ、こういうアレルギー的な反応が出ることを織り込んででもなおプラスの意味があると考えているから出願しているんでしょうし。
他の人だって、先願主義なんだから他人に取られたくなければ自分がいち早く出願すれば良い話なので。

毎度このテの話のたびに言っているのが2点。
(1)商標は「選択物」。なので、既存の概念や言葉を出願することそれ自体は別に非難されるべきことではないです。
 自分の商品/サービスの特性を伝える、またターゲットとなる需要者層に刺さる言葉を選択することは
 むしろ普通のこと。
 ※推測ですが、「広告代理店」であるD社の出願が非難されているのは“自己の商売のため”ではなく“他人の自由を邪魔するため”と思われているからかも、と思います。
  実際「アマビエ」にまつわる出願は、コロナ禍発生以降で本件の前にも何件か存在します。
  (指定商品「菓子」「酒類」「化学品(アルコールが含まれる)」「薬剤」など。いずれも、それぞれを本業として取り扱うと思われる企業さんの出願です。)


(2)商標って「言葉狩り」の道具ではないので、仮に上記の出願が登録になったとしても、
他の人が「アマビエ」という言葉を使っちゃだめ、ということではない点はよくよく考えていただきたい。
商標権取得の効果として得られるのは、指定商品/役務についての『商標としての』独占的使用であって、それ以上ではないです。

商標としての使用とは、(やわらかく言うと)
そのマークがどこの商品であるか、ということを示すような態様で商品に貼ったり宣伝に使ったりすることを言います。
「Web向け対策啓発の広報アイコンアマビエのイラストを使うこと」や「寺社の護符に描くこと」は権利の範囲外です。

[そうは言いつつも]
…とは言ったって、まあ登録されている言葉を使うことには抵抗が出てしまうのも事実。
影響力の大きさを考えたら、適切な出願行動だったのかなぁ、とも思ってしまいます。
かつての「ギコ猫」騒動(注)を思い出してしまいます。

(注)商願2002-19166。タカラが2ch内のパブリックドメイン的キャラクターAAの名称をタカラが勝手に出願したことで“炎上”。
 炎上の3日後にタカラは出願取下するに至った。


“「みんなのもの」をひとりじめしようとするなよ”
という思い。そのあたりを軽視してしまうと事案が複雑化してしまいがち。
法律も規範。商道徳も規範。ネット時代の商道徳は、公明正大のウエイトが以前よりもぐっと高まっているように感じます。

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