おはようございます!
曇りがちだった早朝から一転、今は青空が広がっている湘南地方です。
さて、今日はこんなニュースから。
(
毎日新聞より引用)
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高知・須崎市 しんじょう君の商標出願、民間に先越された
「ゆるキャラグランプリ2016」で頂点に立った高知県須崎市のご当地キャラクター「しんじょう君」を含む商品の商標登録を、民間業者が出願していたことが分かった。結果的に認められなかったが、今後「しんじょう君」が登録されれば、現在無料で認めているキャラクター使用が制限されるリスクがあり、市は商標登録を緊急に出願した。無名時代には費用対効果を考慮し登録に慎重だったが、人気が出て方針転換した。
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(引用終わり)
須崎市のHPが
こちら。
「しんじょう君」がページ内のあちこちに用いられている他、求人情報の名前が「かわうそ」だったり、
全面的にかわうそを押し出している。
キャラの専用ページも作られている(>
コチラ)。
商品化は無償だが申請が必要、という点は「くまもん」方式。
…結構丁寧に作っている(=予算もかけている)印象のページ。
なのに、、、“費用対効果を考慮し登録に慎重だった”って。。。
インテリアにはお金かけるけど戸締りはしないおうちみたい。
知財の価値を実現するのは、必ずしも直接的なロイヤリティや自己実施による利益率/売上向上だけではない。
とりわけプロモーションに絡んでいる場合、「費用」と「効果」とは紐づけして認識できないことの方が多い。
もちろん、やたらめったら出願しても仕方ないが、事業を思い通りに動かすために参入障壁を作ったり、
直接収益に繋がらなくとも他者をコントロールできる立ち位置に立つことで全体としての投資効果を上げることができる。
…って話で今日は終わりにしようと思ったのだけど、記事を読み進めたり側面情報入手しているうちに
色々出てきた。収まりつかないのでちょっとだけ毒吐きます。
記事から読み取れる市のスタンスとして疑問に感じる点(勝手に取り上げといてすみません)。
「市は、申請してきた県内外の約100社に無料で使用を許諾している。」
「うち1業者が今年1月、同業者による類似品防止のためとして、しんじょう君を含む菓子名の登録を出願した。」
➡いや、ライセンス契約の中で“本件標章を含む商標について出願をしない”旨の条項がなかったのかしらん??
あったら業者が債務不履行だし、なかったのなら業者は何ら悪くない。
「須崎市の場合、迅速に手続きを進めるため特許事務所に依頼し、念を入れておもちゃや飲料など複数の商品分類で出願したため、費用は約140万円かかる見込みという。」
➡…何区分出してるのかしら?10月に出願したのにJPlatPatでヒットしないけど。。。
と思って、もしやと思って出願人名で検索してみたら、出願しているのはこちらでした。
…ちょっと意味が分からない。事案に対する処方箋になってない。
ま、経緯は当事者しか判らないので是否をここで言うのは適切ではないだろうけど、、、
これが登録になったとしても、他人が「しんじょう君」を出願した場合の障壁にもならないし、
他人が「しんじょう君」という語を使用することに対して差止等を行うこともできない。
更には、商標はキャラクターそのものを保護するのではなく識別標識を保護するもの。
禁止権が類似範囲まで及ぶといったって、同じモチーフ=類似 との判断にはならない。
そりゃ“取らないよりはマシ”だけど、取るならオフィシャルサイトにある顔部分のみのアイコンじゃないの!?
これで12区分も出している。意味不明。費用対効果という観点からは、いよいよ意味不明。
重要度高い区分でキャラ名と顔アイコンの2件出す方が保護範囲としては妥当なんじゃないか?
「市によると、海外の展覧会などにも登場しているしんじょう君は、米国のテレビ番組などで許可無く放送された例もあるが、海外での手続きには手が回りそうにないという」
➡仮に海外で商標登録をしたとしても、テレビ番組での放送を差止めることはできない。
そもそもグッズを海外展開するとかいった事情がなければ、海外出願の必然性は今のところないと思う。
そして、記事にもいくつか言いたいことが(引用しておいてすみません)。
「結果的に認められなかったが」
➡記事全体から、商願2016-11560「しんじょう君ミレーサンド」のことを言っていると思われるが、同出願は現在も特許庁係属中(以下いずれもJPlatPat情報)。
拒絶理由通知書が発せられているのは確かだが、JPlatPat上で確認できる限りは結論は出ていない
(通常の応答期間内に応答した記録もないので放置している可能性もあるが)。
しかも、拒絶の理由は「しんじょう君」ではなく「ミレーサンド」の方にあると思われる。
「ミレーサンド」は、高知県内の別人が登録をしている(登録第5765296号)。
「しんじょう君」の10号or15号or7号もあるかもしれないが、11号(先行登録との類似)は「ミレーサンド」が引用と考えられる。
市が業者と交渉等して対応をやめさせたのならこれで終了している、といっても良いが、誤解を生む表現。或いは記者自身が誤解をしている。
包袋とって確認しているならしっかり裏付け取材しているといえるけど。
「一つの商品分類だけなら経費も印紙代の10万円程度で済むこともあり」
➡印紙代だけなら12,000円+28,200円= 約4万円。代理人に依頼すると、ちゃんとケアする代理人なら10万円で済む方がまれだと思う。
「済むこと『も』あり」なので虚偽ではないけど、弁理士会の報酬に関するアンケートとか確認取ってるんだろうか。
なんというか、せっかくコンテンツが評価されているのに、知財的には色々残念な例。
関係者の方に対する悪意はないです、念のため。ただ、残念。