支那(中国)における米国アヘン貿易から、当時の米国の状況に視点を移してみましょう。 米国は言うまでもなく、まだ農業国でしたが、北部を中心に工業化のためインフラ構築の動きが出てきていました。米国の工業化第一歩となる公共事業投資が増加している時期でありました。
当然、大型プロジェクトのための資金需要が発生します。そのファイナンス事業に眼をつけたのが、ロンドンに拠点を置く、金融業者ネイサン・マイヤー・ロスチャイルド&サンズ(略称NMR)です。 この銀行はロスチャイルド家を代表する大銀行で、今日でも世界中に57の事業所を持ち、大活躍しています。
ロスチャイルド財閥-8 N・M・ロスチャイルド&サンズ
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ロスチャイルド財閥-111 国際金融財閥の序列
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/af41696ec05203f68b46d63b897e9b3d
ネイサン・マイヤー・ロスチャイルドは、もともとはドイツ・フランクフルトで金融業を営んでいたロスチャイルド家の出身です。
彼は1799年に英国に渡り、北部イングランドの毛織物を扱う商社の経営を初め、」1811年に金融業にも進出しました。
この頃、ヨーロッパ大陸ではナポレオン戦争があり、英国は陸軍を大陸に派遣していました。
ネイサンは、陸軍への資金送金業務を、英国から委託されていました。 ロスチャイルド家は、大陸にも兄弟の金融ネットワークを構築していました。
1865年11月、ナポレオン最後の戦いとなるワーテルローの戦いがベルギーで起きました。 この戦いで英国軍を率いたのがウェリントン将軍でした。
彼の軍に必要な資金を送金していたのがネイサンでしたので、戦いに関しての情報は誰より早く入手できました。
英国の投資家は、この戦いがどうなるかで、英国戦時国債の価格が大きく動くことを知っていたので、ネイサンの動きに注意を払っていました。
ネイサンは誰よりも早く英国の勝利、つまりナポレオンの敗北を知ると、英国の戦時国債を売るという行動に出ました。
これは英国がの敗北を意味したと考えた投資家や金融業者も追随します。 ここでネイサンは逆に買いに転じます。
安値が付いた戦時国債を買い占めると、1817年11月には40%の利益を確保して売り抜けました。この事件が、ネイサンの会社NMRを大金融会社に成長させました。
NMRが米国の政府資金をヨーロッパで扱う指定金融機関になっています。いかにロスチャイルドの政府への食い込みが深いものであったかが分かるというものです。
同社はアメリカ市場における債権の回収、あるいは新規のインフラストラクチャー建設事業事業への融資といった業務に二人のエージェント(代理人)を採用しています。
一人は、アーロン・パーマー、もう一人が オーガスト・ベルモントという人物です。
この二人が、後に日本に開国交渉に派遣された、マシュー・ペリー提督と深い関係にあったのです。
アーロン・パーマー(1778-1862)
米国の弁護士、「1837年恐慌」と呼ばれた当時の米国金融危機では、英国の投資銀行「N・M・ロスチャイルド・アンド・サンズ」と契約し、米国の金融情報を提供。
またヨーロッパの有力な人脈を通じ、アジア各地の政治情勢、経済活動、産物、航路情報などを地政学的に細かく調査研究し、米国との貿易拡大の可能性をまとめ、日本についても、ロスチャイルド銀行やオランダ政府の協力を得て深く研究しました。
アーロン・パーマーという人物は、なかなか一言ででは言い表せない人物です。 彼は法律家でしたが、その生業は債権取り立てや公共事業の起債によるコミッション業を営なんでいました。
当時は,外国への投資は、こうした専門家が収拾した情報なくしては、成り立ちませんでした。 パーマーが正式にNMRのエージェントになったのは、1837年頃です。
実は、今日、欧米ではRep(レップ)という商社(営業)などの代理人・代理店(一匹狼)がいて、彼らを使っています。
日系企業が欧米でビジネスする場合もよく使っています。 何故なら、彼らはその道のプロで、かなり技術的にも詳しく、政治的にも強い人脈をもっているからです。
実は会社の新規事業もかれらがもってきた案件の方が大きく、1年数千億円の売り上げになるビジネスなんかは彼らを使っているケースが多くあります。
そんなパーマーは、日本という国に興味を示していました。 とりわけ日本で産出する金・銀などの貴金属や工業におけるエネルギー資源である石炭に興味を持っていました。
彼は日本の情報をオランダ出島での生活を経験したオランダ商館員の報告書から得ていました。 同時に香港やマカオから清国の情報も入手していました。
彼は早い段階から東アジアとの貿易が、米国の国益ななることに気づき、米国と日足アジア市場を結ぶ交通インフラストラクチャーの構築を構想しています。
その構想の中で、日本という国の地政学上の価値に気づいていたと思われます。ファイナンスの面ではロスチャイルドをあてにしていたと思われます。
米国は極東アジア貿易、特に清国との貿易において英国の後塵を拝していました。 最も利益が上がる阿片で貿易でもわずか8%のマーケットシェアでした。
せっかく英国の尻馬に乗って、英国と同様に清国マーケットに進出できたにも関わらず、英国の対清貿易のおこぼれに預かるしかない状態でした。
眠くなってきたので、今日はこのくらいにしておきます。
次の投稿は、「太平洋ハイウェイ構想、ゴールドラッシュとアメリカン・エクスプレス」を考えています。タイトル変えるかも知れません。
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