Renaissancejapan

哲学と宗教、財閥、国際政治、金融、科学技術、心霊現象など幅広いジャンルについて投稿しています

ロスチャイルド財閥ー206 日本開国とロスチャイルド、そして二人のエージェント

2023-05-21 23:37:04 | 国際政治・財閥

支那(中国)における米国アヘン貿易から、当時の米国の状況に視点を移してみましょう。 米国は言うまでもなく、まだ農業国でしたが、北部を中心に工業化のためインフラ構築の動きが出てきていました。米国の工業化第一歩となる公共事業投資が増加している時期でありました。

当然、大型プロジェクトのための資金需要が発生します。そのファイナンス事業に眼をつけたのが、ロンドンに拠点を置く、金融業者ネイサン・マイヤー・ロスチャイルド&サンズ(略称NMR)です。 この銀行はロスチャイルド家を代表する大銀行で、今日でも世界中に57の事業所を持ち、大活躍しています。

ロスチャイルド財閥-8 N・M・ロスチャイルド&サンズ 
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/251288d5f7831aabc04a9f9e8dc1fdd8
ロスチャイルド財閥-111 国際金融財閥の序列
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/af41696ec05203f68b46d63b897e9b3d


ネイサン・マイヤー・ロスチャイルドは、もともとはドイツ・フランクフルトで金融業を営んでいたロスチャイルド家の出身です。 彼は1799年に英国に渡り、北部イングランドの毛織物を扱う商社の経営を初め、」1811年に金融業にも進出しました。

この頃、ヨーロッパ大陸ではナポレオン戦争があり、英国は陸軍を大陸に派遣していました。 ネイサンは、陸軍への資金送金業務を、英国から委託されていました。 ロスチャイルド家は、大陸にも兄弟の金融ネットワークを構築していました。

1865年11月、ナポレオン最後の戦いとなるワーテルローの戦いがベルギーで起きました。 この戦いで英国軍を率いたのがウェリントン将軍でした。 彼の軍に必要な資金を送金していたのがネイサンでしたので、戦いに関しての情報は誰より早く入手できました。 

英国の投資家は、この戦いがどうなるかで、英国戦時国債の価格が大きく動くことを知っていたので、ネイサンの動きに注意を払っていました。ネイサンは誰よりも早く英国の勝利、つまりナポレオンの敗北を知ると、英国の戦時国債を売るという行動に出ました。

これは英国がの敗北を意味したと考えた投資家や金融業者も追随します。 ここでネイサンは逆に買いに転じます。安値が付いた戦時国債を買い占めると、1817年11月には40%の利益を確保して売り抜けました。この事件が、ネイサンの会社NMRを大金融会社に成長させました。

NMRが米国の政府資金をヨーロッパで扱う指定金融機関になっています。いかにロスチャイルドの政府への食い込みが深いものであったかが分かるというものです。

同社はアメリカ市場における債権の回収、あるいは新規のインフラストラクチャー建設事業事業への融資といった業務に二人のエージェント(代理人)を採用しています。 一人は、アーロン・パーマー、もう一人が オーガスト・ベルモントという人物です。

この二人が、後に日本に開国交渉に派遣された、マシュー・ペリー提督と深い関係にあったのです。

アーロン・パーマー(1778-1862)
米国の弁護士、「1837年恐慌」と呼ばれた当時の米国金融危機では、英国の投資銀行「N・M・ロスチャイルド・アンド・サンズ」と契約し、米国の金融情報を提供。 またヨーロッパの有力な人脈を通じ、アジア各地の政治情勢、経済活動、産物、航路情報などを地政学的に細かく調査研究し、米国との貿易拡大の可能性をまとめ、日本についても、ロスチャイルド銀行やオランダ政府の協力を得て深く研究しました。

 

アーロン・パーマーという人物は、なかなか一言ででは言い表せない人物です。 彼は法律家でしたが、その生業は債権取り立てや公共事業の起債によるコミッション業ウィとなんでいました。 当時は,外国への投資は、こうした専門家が収拾した情報なくしては、成り立ちませんでした。 パーマーが正式にNMRのエージェントになったのは、1837年頃です。

実は、今日、欧米ではRep(レップ)という商社(営業)などの代理人・代理店(一匹狼)がいて、彼らを使っています。 日系企業が欧米でビジネスする場合もよく使っています。 何故なら、彼らはその道のプロで、かなり技術的にも詳しく、政治的にも強い人脈をもっているからです。 実は会社の新規事業もかれらがもってきた案件の方が大きく、1年数千億円の売り上げになるビジネスなんかは彼らを使っているケースが多くあります。

そんなパーマーは、日本という国に興味を示していました。 とりわけ日本で産出する金・銀などの貴金属や工業におけるエネルギー資源である石炭に興味を持っていました。 

 

彼は日本の情報をオランダ出島での生活を経験したオランダ商館員の報告書から得ていました。 同時に香港やマカオから清国の情報も入手していました。 彼は早い段階から東アジアとの貿易が、米国の国益ななることに気づき、米国と日足アジア市場を結ぶ交通インフラストラクチャーの構築を構想しています。 

その構想の中で、日本という国の地政学上の価値に気づいていたと思われます。ファイナンスの面ではロスチャイルドをあてにしていたと思われます。

米国は極東アジア貿易、特に清国との貿易において英国の後塵を拝していました。 最も利益が上がる阿片で貿易でもわずか8%のマーケットシェアでした。せっかく英国の尻馬に乗って、英国と同様に清国マーケットに進出できたにも関わらず、英国の対清貿易のおこぼれに預かるしかない状態でした。

眠くなってきたので、今日はこのくらいにしておきます。 
次の投稿は、「太平洋ハイウェイ構想、ゴールドラッシュとアメリカン・エクスプレス」を考えています。タイトル帰るかも知れません。

 

 

 

(関連情報)

ロスチャイルド財閥-200 ペリー来航の本当の目的 シリーズスタート
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7d7ad0c4ec5e1a437582b224363b5409
ロスチャイルド財閥-201 ワシントン焼き討ち事件
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/b5395b181e96c8d8a5dcbfe4ca44e908
ロスチャイルド財閥ー202 英産業革命と清(中国)新市場開拓
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/766b8ee9f020520ee5e7d37f94347673
ロスチャイルド財閥ー203 阿片戦争前夜のナポレオン戦争と英米戦争、そして清市場開拓https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/c0979f6e43f5ca25777680b5c878866c
ロスチャイルド財閥-204 ペリー来航の真実 英米・阿片商社と阿片戦争https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7b5f5c3ac2623db3abe3397b7a7a5694
ロスチャイルド財閥ー205 ペリー来航の真実 米国阿片貿易と清開国
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/903a24d046d7e62ad68a968c58e225a0

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
哲学・宗教・思想 ここまでの投稿記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7da98797504886d8b9eaa2e5936655e6
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (1/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1f87a836a42cfdcf5bc18c8a5e212fe5
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (2/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/40a30f12de3651f13810a90405370238
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (3/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/47e334f8ba710639aefdcc8d7824f9fa

ロスチャイルド財閥-163  ロスチャイルド財閥について今まで投稿してきた記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/fedeabe97fbe342e880f7195d00dabec
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
世界の財閥 ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/14d30c37bfae00d834c78d49da070029
日本の財閥 ここまでの投稿記事リスト 
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/6958fc72746302160416dd6dad039f68
ゴールドマン・サックス ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/0b4c5b8ba383a38e0af1df7b1a477ea3
Black Rock ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/93ef8de49c1ff9039ce7446f1f3fb0e8
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


G7広島サミット閉幕 米欧とアジアを結ぶ日本の重責

2023-05-21 21:44:52 | 国際政治・財閥


G7と招待国にウクライナのゼレンスキー大統領を交えたセッション(21日、広島市)

閉幕した主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)はリアルのすごみを世界にみせつけた。

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアから侵略され、核兵器の脅威に最もさらされる当事者である。その戦時下の指導者、ゼレンスキー氏が被爆地、広島に降り立った。

G7と新興・途上国である「グローバルサウス」のインドやブラジルの首脳がゼレンスキー氏と一堂に会し、個別でも会談した。世界を動かす政治家が広島に勢ぞろいしたことそのものが外交の力である。

米英仏の核保有国を含むG7首脳らがそろって原爆被害の実相を伝える広島の平和記念資料館を訪れた。首脳らは政治家である前に一人の人間として原爆の惨禍に何を感じたのだろうか。

被爆の衝撃の共有は平和を前提とする国際秩序の維持に生かさなければならない。

ロシアのプーチン大統領は禁断の兵器である核の使用について折に触れて言及する。戦後77年以上続く核不使用の時間が自動更新される時代は終わった。

プーチン氏の侵略に屈して国際秩序が変わる前例をつくることは第2、第3の侵略を招きかねない。東アジアも例外ではない。プーチン氏を支える中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾の武力統一を否定していないからだ。

専制主義国家、中ロの抑止が国際秩序を保つことにつながる。G7が中ロと最前線で対峙するのは当然だが、G7で固まっていれば、目的が成就されるわけではない。

世界の国内総生産(GDP)でG7が占める割合は4割に減少した。40年あまり前から比べると20ポイントほど低下した。40年前は数%程度だった中国は2割に迫る。

国際秩序を守るには外交、軍事、経済の各分野でG7が中ロを圧倒しなければならない。そのカギを握るのがグローバルサウスとの協力になる。

広島サミットにはインドなどG7以外の8カ国も招待した。グローバルサウスは一枚岩ではない。民主主義を前面に出さずに「法の支配」で協調を申し合わせたのは緩やかな連帯をつくる知恵といえる。

グローバルサウスとの連携は持続性が課題になる。エネルギーや食料問題といった実利でひき付けなければ、中ロになびくリスクは消えない。旧宗主国への複雑な感情が交じるグローバルサウスには米欧との抜きがたい距離もある。

その距離を縮めるのはアジアで唯一のG7メンバーである日本の役割だ。成長拠点であるアジアは外交、軍事、経済の要衝に位置づけられる。

ロシアのウクライナ侵略によってリセットされた世界で米欧とアジアを結ぶ日本の重みはいままで以上に増す。広島サミットをその起点にしなければならない。

 

日経記事 2023.05.21より引用

 

 


睡眠の悩み、原始動物にヒント? クモも夢見る可能性

2023-05-21 11:26:38 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業

興味深い情報があったので紹介します。

なぜ眠るのか、なぜ夢をみるのか――。この根本的な謎を解こうと様々な動物の睡眠を比較する研究が進む。人では睡眠は記憶など脳の働きと関わり、不足すれば体や心に不調をきたす。トカゲや軟体動物などを探る中で、眠りの「進化」が原始的な動物から始まったことがみえてきた。

クモも夢を見るのかもしれない――。ドイツのコンスタンツ大学は2022年、節足動物のハエトリグモにも「レム(REM)睡眠」のような状態があるという研究を発表した。REMは「急速眼球運動」の英語の頭文字から名付けられた。人の睡眠では目をキョロキョロと素早く動かすためだ。奇妙なストーリーの鮮明な夢、いわゆる「夢らしい」夢を見るのはレム睡眠の間だ。

ハエトリグモが糸でぶら下がって脚を縮めて寝る間、ピクピクと脚が動く状態が周期的に現れる。このとき、目の網膜も急速に動いていることを発見した。クモには哺乳類のような眼球はないが、網膜を動かして見る方向を変える。つまり、クモにも急速眼球運動を伴う睡眠があるわけだ。

70年前、人でレム睡眠が発見された。それまで、眠っている間は脳の活動が下がると考えられていたが、活動が活発な睡眠もあることが分かった。睡眠研究の大発見だった。かつてレム睡眠は動物の中でも哺乳類と鳥類だけにあり、それぞれ独自に進化したという説が有力だった。ところが近年、定説を覆す研究が出てきた。

16年には独マックスプランク脳科学研究所がフトアゴヒゲトカゲの脳波や眼球運動を調べ、爬虫(はちゅう)類にもレム睡眠とノンレム睡眠があることを発見した。同研究所に留学していた北海道大学の乘本裕明准教授は「レム睡眠は爬虫類と鳥類、哺乳類が進化で分かれる約3億2千万年以上前に存在していた可能性が高い」と指摘する。


レム睡眠と夢にはどのような関係があるのか。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の千歳雄大研究員とマッシモ・スカンジアーニ教授は、22年に米科学誌サイエンスに出した論文で「レム睡眠の目の動きはランダムではない」と報告した。急速眼球運動は夢の内容と連動しているという。

脳には頭が特定の方向を向いたときに活動するコンパスのような神経細胞がある。マウスでこの神経細胞の働きや目の動きなどとの関係を調べた。頭が動いていないレム睡眠でもこの神経細胞の活動と目の動きは連動しており、仮想的な頭の向き、つまり夢の中の頭の向きが推定できたという。マウスは夢の内容を話せないが、脳や目のデータから夢の一部を再現できるかもしれない。

レム睡眠といっても、人とマウスでは似て非なる可能性はある。ただ2種類の睡眠を使い分ける動物は多い。魚や軟体動物であるタコとイカでも、レム睡眠とノンレム睡眠のような2つの状態があるという研究報告もある。「レム睡眠の進化の歴史は睡眠そのものと同じくらい古いのかもしれない」(千歳研究員)

そもそも動物は進化の中でいつから眠るようになったのか。睡眠を制御しているのは脳だ。脳の進化とともに眠るようになったように想像しそうだが、そうとも言い切れないようだ。九州大学の伊藤太一准教授らは脳を持たないクラゲやイソギンチャクの仲間のヒドラにも睡眠とみなせる状態があることを発見した。

この体長1センチメートルほどの動物の行動を詳しく観察すると、20分以上静止している時、光などの刺激に対する反応が鈍くなっていた。夜にこの状態を邪魔すると翌朝の静止状態が増えた。睡眠不足のようになったわけだ。こうした特徴から睡眠とみなせるとしている。

哺乳類の体内で働く睡眠に関わる物質は、ヒドラでは睡眠を促す物もあれば逆に阻害する物もあった。睡眠のメカニズムには動物によって相違点があるようだ。伊藤准教授は「様々な生物の睡眠の共通原理を調べることで睡眠の本質を見抜きたい」と意気込む。

哺乳類から遠い動物の研究は一見遠回りに見える。だが進化の観点から比較する研究は生物学の伝統的な王道でもあり、謎の解明を目指す研究者の夢への近道だ。

(越川智瑛)

■人の睡眠
ノンレム睡眠が約75%、レム睡眠が約25%を占める。眠るとまずノンレム睡眠に入り、その後にレム睡眠となり交互に繰り返す。周期は約90分だが、個人差や変動も大きい。
ノンレム睡眠を深い眠り、レム睡眠を浅い眠りというのは誤解に近い。起きている状態の覚醒とはそれぞれ脳や全身の状態が全く異なる。ノンレム睡眠では脳の活動が低下し、逆にレム睡眠では活発に働く。ノンレムでも単純なイメージの夢をみている。かつてレム睡眠は記憶の整理に関わると考えられていたが、最近はノンレム睡眠の役割の方が大きいといわれている。

 

日経記事 2023.05.20より引用

 


木原官房長官に聞く「岸田流外交」協調と核軍縮、サミットで発信 

2023-05-21 06:53:17 | 日本政治・外交

主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が5月19~21日に広島で開催される。G7首脳らが一堂に会し、ロシアによるウクライナ侵略や覇権主義的な動きを強める中国への対応、核軍縮・不拡散、経済安全保障の強化策、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との連帯などを話し合う。議長国を務める日本はどのような成果を目指しているのか。今後岸田文雄政権はどんな政策課題に注力しようとしているのか。岸田首相の側近で知られる木原誠二・内閣官房副長官に聞いた。

ニュースを見る限り、大体わかりますが、身近な木原官房長官がどうみているのか知りたいので、せっかく日経ビジネスがインタビューの特集を組んでくれているので、見ることにしましょう。 ニュースだけではわからないことがあるかも知れません。

ネットでは、安倍信者たちから岸田は親中だからアメリカ大統領は会ってくれない。 岸田は経済音痴でアメリカを敵に回すので、岸田ショックで日本経済崩壊というのが前評判でしたが、現実は全くの真逆でした。日系企業は空前の好決算で、日経平均も3万円台を突破しました。


木原誠二[きはらせいじ]

1970年東京生まれ。93年東京大学法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。2005年衆院選東京20区で初当選し、現在5期目。外務副大臣、自民党政務調査会副会長兼事務局長などを歴任した。岸田派会長である岸田首相の側近として知られ、21年10月の岸田政権発足とともに内閣官房副長官に就いた。(写真:的野弘路、以下同)

 

ー広島での主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が目前に迫ってきました。各閣僚会合も踏まえ、議長国としてどのような成果を目指していますか。

木原誠二・官房副長官(以下、木原氏):今回の広島サミットでは、ロシアによるウクライナ侵略や中国への対応、核軍縮・不拡散、経済安全保障の強化、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との連帯などが主な議題となります。

 その上で、個人的に期待する成果をキーワードで示すと、以下の4つになると思っています。

 1つ目は平和です。ロシアによるウクライナ侵略が継続し、国際社会も分断が進む中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するとのG7の強い意志をメッセージとして世界に示すことです。

 2つ目は協調です。世界の分断が進む中、食料安全保障やエネルギーを含む世界経済や、サプライチェーン(供給網)の再構築、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題へのG7としての対応を主導し、さらにこうした様々な課題に関してG7とグローバルサウスと呼ばれる南半球を中心とする新興・途上国との連携を強化して、世界の一体感を増していくことです。

 3つ目はアジアですね。今回のサミットは7年ぶりにアジアで開催されるわけですが、この5月のサミットを皮切りに9月にはインドで20カ国・地域(G20)首脳会議が予定され、12月には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議も開催されます。こうした一連の機会のスタートが広島ですから、アジア・インド太平洋地域の存在感や重要性をアピールし、G7などの関心を一段と引き寄せたいと思います。

 そして4つ目として挙げるのが広島です。被爆地である広島の地から核軍縮・不拡散、「核兵器のない世界」の実現に向けた強いメッセージを出すことです。

ーその中で岸田首相の特に思い入れが強いテーマはどれでしょう。

木原氏:あくまで私の解釈ですが、広島で開かれるG7ですから、核軍縮・核不拡散ではないでしょうか。首相は広島選出の国会議員として「核兵器のない世界」をライフワークに掲げてきました。ウクライナ侵略を継続するロシアが核兵器を使用するかもしれないと威嚇し、北朝鮮も核開発を進める中、広島から核軍縮・不拡散に向けた強いメッセージを発したいという首相の強い思いを感じます。

 もう1つ挙げるとすれば、協調でしょう。首相はグローバルサウスと呼ばれる国々との関係強化を非常に重視しています。先般のアフリカ4カ国訪問時の記者会見では「各国からもらった声を届け、グローバルサウスへの関与の強化を具体的に示す」と意気込みを語っていました。

ーサミット開催を前に首相は首脳外交に注力してきました。首相は4年8カ月間外相を務め、外交が得意分野と知られています。会談に同席する機会も多い立場から、岸田流の外交術、交渉術の特徴をどう見ていますか。

木原氏:大きな特徴の1つは、事前に完璧に準備していくことです。出張前の首相を交えた事前勉強会では、「こういう話題のときはどう言うべきか」「どこまで最初に突っ込むべきか」などについて、かなり綿密に想定して準備します。私の場合はかなりいい加減なんですが…(苦笑)。

 それから、首相は国益の観点から日本として話すべき内容については全部発言するのが常です。向かい合う相手の国の首脳が飽きていようが、「そろそろ食事の時間なのでもうこの辺で」との雰囲気が漂っていようが、「ここまでは言うんだ」と決めたらそこまで確実に話します。相手が嫌がるようなことであっても、さらりと言及します。メディアも注目するような要点について、首相が確実に発言・発信することは、外交記録にも残りますし、メディアにもきちんと説明できます。外交にとってとても重要なことなのです。

 また、相手の発言に対する反応も臨機応変で、外交交渉はやはり得意でらっしゃると感じます。首脳会談に同席していて、相手から振られた話に冗談で返すような場面も結構あり、やり取りはお上手ですよ。ケミストリーが合わなそうな首脳はいそうにないですね。首相の「聞く力」が生きているのではないでしょうか。


内政・外交で主に3つの成果

ー21年10月の岸田政権発足から1年7カ月が経過しました。内政・外交で強調したい実績を挙げてください。

木原氏:まずは新型コロナウイルス対応でしょう。政権発足時にすぐに直面したのがコロナ対応でした。国民の皆さんの間で様々な評価はあるとは思いますが、緊急事態宣言を出すことなく、水際対策など必要な措置は強化と緩和を柔軟に行い、社会的機能をあまり止めずに感染収束へと向かうことができました。5月8日からは新型コロナの(感染症法上の分類の)5類移行も実現しました。「コロナ前」の日常の生活にほぼ戻ることができたのは大きな成果と言えます。

 2つ目は、「新しい資本主義」の推進です。「政府は何もしていない」との意見もあるかと思いますが、連合の5月10日時点の集計によると、今春の賃上げ率は平均で3.67%となり、30年ぶりの高水準です。半導体の受託生産で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)の熊本県進出や国内企業8社からの出資を受けて設立したラピダスの北海道千歳市での工場建設、さらにはホンダとGSユアサによる蓄電池に係る設備投資をはじめ、企業の国内設備投資計画も高い伸びとなっています。政府として支援策を用意して環境整備を進めてきており、経済の雰囲気が変わってきたのは間違いありません。

 3つ目は、首相の得意な外交・安全保障分野でしょう。首相は安倍晋三政権では外相として、限定的な集団的自衛権の行使を一部容認した平和安全法制の制定に携わりました。昨年末には国家安全保障戦略など新たな安保関連3文書を決定し、防衛費の抜本的強化にも道筋をつけました。外交・安保上極めて重要なこの2つの政策課題に関与し、仕上げることができたのは大きな成果だと思います。

 

ー日韓関係は対立要因だった輸出管理問題が解決し、シャトル外交が12年ぶりに再開しました。首相と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は5月7日の会談で「関係改善が軌道に乗った」との認識で一致しています。どう評価していますか。

木原氏:率直に言って、東アジアで重要な役割を担う隣国同士の日韓がギクシャクした関係にあるのは良いことではありません。お互いのトップが行き来できるようになったのは非常に大きな意義がありますね。2つ目は安保上のメリットです。北朝鮮で核開発が進み、弾道ミサイルの発射が相次ぐ中、日韓、米韓、そして日米韓が有機的につながり、安保協力を進めるには日韓の関係改善が不可欠でした。

 3つ目として挙げられるのは、東アジアを見たときに、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有している代表的存在が日韓です。この2つの国が関係改善を進めることは、アジアの平和と安定にも好影響を及ぼすはずです。

 

ー首相は98年の日韓共同宣言など歴代内閣の歴史認識を引き継ぐとした上で、旧朝鮮半島出身労働者問題に関しては「心が痛む問題だ」と発言しました。首相の真意をどう見ていますか。

木原氏:日韓共同宣言を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるという政府の立場は今後も揺るがない。この点について、首相は3月の日韓首脳会談に続き、先般の会談でもはっきり述べました。

 その上で、「心が痛む思いだ」と首相が語った。これは、3月の会談で、尹大統領が国内から批判を招く可能性がある中でこの問題の解決策を示され、日本との未来志向の協力関係を進めることが国民の利益になるはずだという尹大統領の姿勢に対する首相個人としての思いを吐露されたということなのでしょう。

 実はこの首相の発言については、私を含めて事前に知らされていませんでしたし、韓国側とも調整していませんでした。会談で総理が発言をされた際、先方からは感謝されていたと思います。首相の個人的な思いではありますが、思いのこもった言葉でしたので。一つ言えることは、両首脳の信頼感を基礎に、両国間の関係改善や残る課題の解決に向け、できることはなるべくたくさん進めておくのが重要です。


賃上げや人への投資の呼び水に

ー日本経済の立て直しや外交展開など様々な政策課題がある中、今後政権としてどんなテーマに注力していく考えでしょうか。

木原氏:1つは先も触れました新しい資本主義の推進ですね。足元の賃上げ率がかなり高い水準となる中、構造的な賃上げの実現や人への投資を後押しするために新しい資本主義実現会議を中心に議論を進めています。労働市場の「三位一体」改革として(1)リスキリング(学び直し)による能力向上支援(2)職務内容や必要なスキルを明確にする「ジョブ型」の導入(3)成長分野への労働移動の円滑化などの具体策を、今次、「三位一体労働市場改革の指針」としてお示ししました。

 リスキリングについては、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、スタートアップなど成長分野に関するスキルを重点的に支援するとともに、企業経由が中心となっている在職者向け支援を個人への直接支援中心に見直します。また、人材の獲得競争が激化する中、従来の年功型賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型職務給への移行は企業の成長のためにも急務です。こうした取り組みを進めることで、諸外国との同一職種での賃金格差を埋めるとともに、人材の流動化も後押ししようという壮大な計画で、大きな挑戦となります。

当面は国が呼び水となってリスキリングなどを支援しますが、企業が賃上げや人への投資にもっと注力していただくことが重要です。社員にきちんと投資する企業に人は残り、外からも人材が集まるはずです。多様な人材、意欲ある個人がその能力を最大限生かして働くことが企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げにつながる。そんな好循環をぜひとも実現させていきたいと思っています。


官民連携での投資促進も重要です。半導体、蓄電池、再生可能エネルギー分野などの国内投資が加速しており、さらに環境整備を進めていきます。おかげさまで、この通常国会でGX推進法が成立しました。今後10年間で20兆円規模となる新しい国債「GX経済移行債」が発行できるようになり、民間資金と合わせて150兆円超の脱炭素投資を進める予定です。GX移行債で調達する資金でどんな分野に資金支援していくのか、詳細を詰めていきます。

 2つ目は少子化対策です。岸田首相は「2030年になると日本の若者の数は急減する。それまでの期間が勝負で、やれることは全部やる」という趣旨の発言を繰り返しています。政府は3月にまとめた少子化対策のたたき台を基に、「こども未来戦略会議」で対策の内容や予算、財源の検討を進めています。6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の策定までに、具体策や子ども・子育て予算の財源の大枠を示すべく議論を加速していきます。

 もう1つは外交ですね。先に述べたように、G7サミットを皮切りに、年末までアジアにおいて重要な首脳会議が続きます。まさに、今年はアジアの年です。その中で、例えば、日本政府はアジアの国々との広域的な連携によってアジア各国のエネルギー転換を促す「アジア・ゼロエミッション共同体」構想を打ち出しています。エネルギーの安定供給と脱炭素、成長の3つを同時に進めることを念頭に、再エネ・省エネの推進に加え、水素やアンモニアを活用し、既存の火力発電所も使いながら温暖化ガスの排出を減らす方策などに取り組んでいきます。欧米とは異なるアジア地域ならではの段階的な脱炭素移行を日本主導で構築していきたいと考えています。

 新しい資本主義、少子化対策、外交。この3つが肝になるでしょう。

 

生成AI、ルールづくりで主導権


ー少子化対策の財源として医療や年金などの社会保険料の活用案が浮かんでいます。

木原氏:今、まさに政府内、与党内で議論を進めているところであり、現時点で確たることを申し上げる段階にはありません。ただ、一つ言えるのは、歳出改革を徹底することです。22年度の年金、医療、介護など社会保障費給付額(予算ベース)は約130兆円と巨額です。昨年末に決めた防衛費強化のための財源については、歳出改革や税外収入の確保などを徹底した上で、税制措置をお願いすることになっていますが、その際の歳出改革は社会保障以外の分野が対象でした。少子化対策の財源を巡っても、全世代型の社会保障を構築していくという観点から歳出改革を進めていくことが、一丁目一番地となります。30年までの今後6、7年がラストチャンスという中で、国民の皆さんからの理解と支援を得られるよう努力していきます。

ー「Chat(チャット)GPT」を含め文章などを自動的に作り出す生成AI(人工知能)への対応が国内外で大きな課題となっています。利活用や規制に関する今後の日本政府の方針についてはいかがでしょう。

木原氏:岸田首相の言葉を借りれば、AIは経済社会を前向きに変えるポテンシャルとリスクがあり、両者に適切に対応していくことがまさに重要となります。政府は有識者らと検討する「AI戦略会議」を立ち上げ、5月11日に初会合を開きました。生成AIは海外勢が先行しています。日本版の開発を促進しつつ個人情報への配慮など利用に関するルールを議論し、6月にも中間とりまとめを公表する予定です。

 4月末のG7デジタル・技術相会合では、生成AIの機会とリスクについて議論を行い、G7における議論を行うための場を早急に設けることに合意したところです。日本にとってよいチャンスだと思います。G7サミット議長国として生成AIについて責任ある形での活用可能性の議論をリードし、今後のルールづくりで主導権を握りたいと思います。


ーそばで見ていて、岸田首相の特徴は何でしょうか。最近は「聞く力」より「決断力」をアピールする場面が多いように見えます。

木原氏:確かに、原子力発電の推進や少子化対策など待ったなしの問題、逃げられない課題は自分が決断するといった状況になっていますね。先延ばしできない問題について四の五の言わずにやっていこうというご決意だと思います。ただ、聞く力が落ちてきたということではないと思います。引き続き、じっくり様々な声や意見に耳を傾ける基本姿勢は変わっておらず、その上で、一つ一つの課題に結論を出し、国民の皆さんに示していく。そうしたことの積み重ねが一定程度国民の皆さんに評価され、それが内閣支持率の上昇として現れてきているのだと思います。

 

政治の道開いたサッチャー氏の言葉

ー4月の衆参5つの補欠選挙で自民党候補が4勝したことで、首相がサミット後など早期の衆院解散・総選挙に打って出るとの臆測が広がっています。

木原氏:衆院解散は首相の専権事項であり、私がコメントする立場にはありません。ただ首相は、つい最近も「重要な政策課題が山積していて、まずは課題を一つ一つやっていく。解散については、今は考えていない」と話しています。まさに今は課題を処理していく局面ではないかと思います。仕事をしっかりやろうという意欲が強いと思いますね。


ー経済界、労働界、学識者らからなる「令和臨調」の趣旨に賛同する超党派の国会議員組織が発足しました。財政や社会保障、統治機構改革などで合意形成を目指すことになりますが、ご自身も中心メンバーの1人として参加されていますね。

木原氏:与野党は普段、お互いが批判し合う関係にあります。ただ、財政や社会保障、国会改革など対立ばかりしていては進まないテーマや、積み残してきた課題を前に動かしていくために与野党の国会議員が胸襟を開いて議論する場をつくるというのは貴重な機会になると思います。

 また、今回参加する与野党議員は30~40代など若い世代が多いのが1つの特徴です。こうした世代の議員が次の世代のためにどのような議論をしていくのかもポイントになると思います。そして、令和臨調は経済界、労働界、学識者など幅広い民間の方々が参加する組織なので、政治と民間の連携が図れる場になると期待しています。

ーご自身は世襲議員ではありません。政界入りした経緯と実現していきたい政策テーマを教えてください。

木原氏:大蔵省(現財務省)時代に、英国大蔵省に出向しました。その際、サッチャー元首相と何度か食事を共にする機会があり、「国を動かし、社会を変えるのは政治家だ」との彼女の言葉が胸に響き、政治の道を志すようになりました。とはいえ、政治家一家ではありませんし、地盤もありません。そんな中、小泉純一郎元首相による05年の「郵政解散」という好機が訪れたので、挑戦して今に至っています。

 政治家としてやりたいテーマはありきたりですが、経済と外交です。まず、経済ですが、日本が世界に対して誇りを持ち続け、世界から尊敬され続けるために肝となるのはやはり経済です。もう一度、真の意味で経済大国といわれるような国を目指したいと思っています。

 経済力を強化していくためのカギとなり、まだ十分に政策が行き届いていないと感じている一つが国内金融の底上げです。足元で約2000兆円の個人金融資産があり、企業もおよそ300兆円の現預金を抱えています。昨年、政府として少額投資非課税制度(NISA)の抜本的な拡充を決めましたが、英国の制度(ISA)を参考に、個人的に20年もの間、温めてきた構想でした。今後は資産運用の強化も進めていきたいと思います。

 先日の諮問会議で、首相は資産運用立国の実現に向け金融庁に指示しました。欧米と比較して日本の運用会社は独立性が高くなく、また中長期の資産形成のための金融商品の提供が不十分であるなど課題が多いと感じています。「貯蓄から投資」を促すためにも、運用会社の改善は必要です。

 ライフワークとしているもう1つは外交です。価値観を一方的に押し付けがちな欧米とは異なり、相手国の歴史や文化、価値観を尊重し、多様性を重んじる、相互理解と相互信頼をベースにした柔軟な外交を展開していきたいですね。そのような外交展開は強い経済というベースがあって初めて可能となります。何とか経済を立て直していきたいと思います。

日経ビジネス記事 2023.05.18より引用

 

 

(参考情報)

 

「1兆円クラブ」最多157社 時価総額増
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/292fc8fa26d30069a1e93646c488736e

日経平均一時3万円台 1年8ケ月ぶり 海外勢が押し上げ
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/3c3c0963ca856e88efac5cf4738b22a2

売上高9兆円の“絶対王者イオン” 国内で独り勝ちできた3つの理由https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/ca24fe0ba9c08b0f91642355aa8234da

トヨタ営業益10%増の3兆円、日本企業初24年3月期
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/088f7809a082fb4be82a096894709293

三井物産、純利益1兆円超 資源高、円安で初の大台
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/cef5cdffac289794b8fee26e18aeec4c

五大商社の利益は過去最高水準
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/51767937ba462fa9948069d2ab340000




ロスチャイルド財閥ー205 ぺリー来航の真実 米国阿片貿易と清開国

2023-05-21 01:42:51 | 国際政治・財閥

阿片戦争に勝利した英国は南京条約を結ぶことに成功し、初期の目的つまり新たな海港都市の獲得、そうした港への外交官赴任の権利などを獲得しました。 米国阿片商人たちは、それを傍観する程やわな人たちでありません。 ワシントン政府を動かして、南京条約とと同じ条件の条約を米国とも結ばせようと試みました。

当時のワシントン政権は、米国阿片商社の要求にこたえます。 ジョン・タイラー大統領も、ダニエル・ウェブスター国務長官も宿敵・英国に支那市場を好き勝手にさせたくはありませんでした。 米国政府は、連邦下院議員であったケイレブ・クッシングを交渉役に任命し、清国との交渉に派遣しました。

パーキンス商会が、トルコ産阿片を独占し、霊丁島の沖に船を浮かべ、それを倉庫として利用した阿片密売拠点を造ったことを、前回の投稿でお話ししました。 このリンチンシステムといわれる密売スキームを作り上げた人物は、パーキンス商会を立ち上げた、トーマス・パーキンスの甥、ジョン・パーキンス・クッシングの父親です。

つまり、米国政府は阿片密売商人と深い関係にある政治家に、清国との開国交渉を任せたのです。

 

米国阿片貿易によって清国へ流入した阿片の量は、1830年から31年、1万9000チェスト=約40トン(1チェスト=60kg)です。これは常習者がおよそ100万人ほどいたことを意味します。 常習の年間使用量はおよそ1.3kgです。 このうち、、米国商社が持ち込んだトルコ阿片は1500チェスト(およそ90トン)ですから、全体量の8%にあたります。 

これだけでも、現在の価値に換算すると280億ドル、日本円にして4兆円に近い巨額な密売額です。 この数字だけでも、いかに清国との阿片取引にうまみがあったことがよく分かります。 現在でもそうですが、支那市場つまり中国市場には当時から商売上のうまみがありました。

クッシングが清国訪問した表向きの理由は、健康の優れない道皇帝のご機嫌伺いでした。タイラー大統領もウェブスター国務長官も、清国には友好的に、そして礼をもって接するよう指示していました。 彼らは、米国は英国とは違う紳士の国であるというイメージを清国にもってもらもらいたいと考えていました。

そうすれば、英国より有利に、さらに阿片取引は拡大出来ます。一方の清国は、米国は英国よりも劣った蛮族の国と考えていたので、(実際、当時はその通り)、クッシングの北京入りを拒否しました。 皇帝との謁見を夢見ていた彼の願いはかないませんでした。

クッシングは,本国に宛てて地震が受けた屈辱の対応を書き綴っています。彼は次第に、英国が取った軍事行動が正しかったのではないかと思うようになります。 1844年6月21日、クッシングは清国に派遣されていた米軍船セントルイス号の海兵に護衛されながらマカオ郊外で清国との交渉に臨みます。

軍事的な威嚇の中で、クッシングは英国が勝ちとった南京条約とほぼ同内容の特権を規定する望厦(ぼうか)条約の締結に成功します。1844年7月3日のことでした。

英国の条約と違うのは、領土的要求がなかったことと、阿片密売で米国商人が起訴された場合につてのみ、清国の法律によって裁かれることを療養しているところです。


望厦(ぼうか)条約とは
1844年7月、中国、マカオ近くの望廈村で、清(しん)国とアメリカの間に結ばれた最初の条約。不平等条約で、アメリカはこれにより、イギリスが南京(ナンキン)条約とその追加・補足条約で獲得した権利、つまり五港開港、領事裁判権、関税協定権、開港場における土地租借権と家屋・教会の建設権などをほとんどすべて獲得した。


そのほか、これには南京条約にはなかった、12年後に通商および航海に関してわずかな改正を行うための協議に関する規定が含まれていた。南京条約以後、期待したような貿易拡大を実現できなかったイギリスは、最恵国待遇条項によって獲得したこの条項を活用して、より有利な規定を実現するため、清朝に圧力を加えた。 出所 日本大百科全書


ここで注意したいのは、先ほど説明したように、「英国よりも紳士的な国である」というイメージづくりが、米国の対清国外交の根底にあるという事です。 「英国は怖い国、米国は後進国に理解を示す優しい国」このイメージを、この時代から日本を含むアジアの国々に植え付けようとしました。 もちろん、対英戦略の一環です。

米国は、英国が巨額な戦費を使って勝ち取った南京条約と、その後に付け加えられた、虎門寨追加条約(こもんさいついかじょうやく)とほぼ同じ条件を、軍事行動なしに、望厦(ぼうか)条約で獲得しました。

 

虎門寨追加条約(こもんさいついかじょうやく)とは
 虎門寨(こもんさい。塞ではなく寨なので注意)は広州の近くの地名。アヘン戦争の結果、1843年締結された南京条約の追加条約として、虎門寨で締結されたので虎門寨追加条約という。略称で虎門条約ということもある。この条約で清はイギリスに片務的な最恵国待遇を認めた。他に開港上における土地租借の規定が含まれる不平等条約であった。この外国による土地租借が後に「租界」と言われるようになる。 出所 世界史の窓

 

ここまでが、日本開国プロジェクトを米国が目論んでいた頃の、清における米国の行ったことです。 英国に関しては、江戸末期の世界情勢は大英帝国vsロシア帝国でした。 ロシアはクリミア半島に侵攻し、英仏・トルコに退けられ、シベリア鉄道を使って東に移動し、東アジアを侵略しようとし、満州・朝鮮半島にまで迫ります。 

一方の大英帝国は阿片戦争で清から奪えるものはすべて略奪した後、次は日本を狙います。 子の大英帝国とロシア帝国がぶつかったのが、ここ日本です。

それで尊王攘夷で敵対していた筈のアホの長州を金と女で手名付け、日本国内に内乱を起こし、徳川を倒します。 この時の武器はアメリカ南北戦争の終了で在庫となった武器は上海に流れ、阿片商社のジャーディン。マセソン商会が、社員であったグラバーを通じて維新軍に流し徳川を倒しました。 グラバーは上海支店から長崎支店に転勤、その後独立して長崎にグラバー商会を立ち上げ、武器・戦艦などを維新軍とビジネス。 

それらの武器は、ロスチャイルド系の英国籍のアームストロング社、ヴィッカース社です。 当時、大英帝国を金で実質のっとり、陰で動かしていたのは、世界最強のユダヤ系のロスチャイルド財閥です。

狡猾な大英帝国は、手名付けた長州率いる明治政府・日本を、大英帝国の代理人として、ロシア帝国と戦わせようと画策します。これが明治維新と日露戦争です。

 

貧乏国日本は、クーン・ローブ商会のユダヤ人・シフ(ロスチャイルド家と同じくフランクフルトのゲットー出身の親戚)とロスチャイルド・ロンドン家とパリ家から巨額の借金。 クーンローブ商会は、米国ロックフェラーのアドバイザーや資金提供を行い。ロックフェラー財閥を育てた世界的大銀行です。

 

そして戦った(戦わされた)日本は、日露戦争で9万人の死者を出しました。 もちろん、大英帝国は一人の死傷者もいません。 残ったのは、巨額の借金と大使利子の支払い。 これらの謝金を完済できたのが、なんdとbubbleで沸く、1980年代の後半のことでした。 見事に大英帝国とロスチャイルドのマネーゲームに利用されたのです。

清国を阿片で食い物にした大英帝国。そしておまけのように清でアヘン貿易を始めた米国。 米国のターゲットは日本に開国させることです。 もちろん、巨大な清との貿易するための、食料、水、石炭の補給拠点としての日本。 そして清ほどは大きくないですが、アジアでは先進国の日本との貿易。 さらに日本を拠点にしてのアジア市場への進出です。


続く

 

 

 

(関連情報)

ロスチャイルド財閥-200 ペリー来航の本当の目的 シリーズスタート
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7d7ad0c4ec5e1a437582b224363b5409
ロスチャイルド財閥-201 ワシントン焼き討ち事件
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/b5395b181e96c8d8a5dcbfe4ca44e908
ロスチャイルド財閥ー202 英産業革命と清(中国)新市場開拓
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/766b8ee9f020520ee5e7d37f94347673
ロスチャイルド財閥ー203 阿片戦争前夜のナポレオン戦争と英米戦争、そして清市場開拓https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/c0979f6e43f5ca25777680b5c878866c
ロスチャイルド財閥-204 ペリー来航の真実 英米・阿片商社と阿片戦争https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7b5f5c3ac2623db3abe3397b7a7a5694

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
哲学・宗教・思想 ここまでの投稿記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7da98797504886d8b9eaa2e5936655e6
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (1/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1f87a836a42cfdcf5bc18c8a5e212fe5
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (2/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/40a30f12de3651f13810a90405370238
ロスチャイルド財閥 今まで投稿してきた記事リスト (3/3)
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/47e334f8ba710639aefdcc8d7824f9fa

ロスチャイルド財閥-163  ロスチャイルド財閥について今まで投稿してきた記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/fedeabe97fbe342e880f7195d00dabec
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
世界の財閥 ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/14d30c37bfae00d834c78d49da070029
日本の財閥 ここまでの投稿記事リスト 
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/6958fc72746302160416dd6dad039f68
ゴールドマン・サックス ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/0b4c5b8ba383a38e0af1df7b1a477ea3
Black Rock ここまでの投稿記事リスト
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/93ef8de49c1ff9039ce7446f1f3fb0e8
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー