イラン革命防衛隊は13日夜、イスラエルに向けてドローン(無人機)や弾道ミサイルを発射した。
1979年のイラン革命以降、45年にわたって敵対してきたイスラエルに対し、初の直接攻撃に踏み切った。
パレスチナ自治区ガザでの戦闘がイスラエルとイランに波及した。両国はなぜ対立してきたのか。3つのポイントでまとめた。
・イランとイスラエル、なぜ対立?
・これまでの両国の交戦は?
・イラン革命防衛隊とは?
(1)イランとイスラエル、なぜ対立?
イランとイスラエルは1950〜60年代に国交を結んでいた。当時のイランは親米の国王が治めており、米国を後ろ盾とするイスラエルと比較的近い関係にあった。
対立が決定的になったのはイラン革命だ。
1979年、同国の初代最高指導者、故ホメイニ師が親米のパーレビ王制を倒した。現在のイスラム教シーア派による宗教指導体制に移り、イランはイスラエルを「聖地エルサレムを奪った敵」とみなすようになった。
イランは現在も反イスラエルを国是に掲げている。
同国を国家として認めず、イスラエルを「シオニスト政権」などと表現している。シオニストとは19世紀に広がったイスラエルの建国運動の信奉者を意味する。
イスラエルや米国もイランを脅威とみなす。
特に懸念しているのがイランによる核開発疑惑だ。2002年にイランの反体制組織が国内で核施設を建設していることを明らかにした。
秘密裏に核開発を進めているのではという疑惑が広がった。
イランの核関連活動を制限する国際枠組み「イラン核合意」はトランプ前米政権の離脱によって機能不全に陥った。
イスラエルは核兵器が自国を攻撃するためのものだと警戒する。イラン政府は「核開発はあくまで平和利用のためだ」と主張している。
(2)これまでの両国の交戦は?
イランとイスラエルが直接戦火を交えたことは過去にはなかった。イランは中東諸国に分散する親イラン勢力を代理に使い、イスラエルを間接的に攻撃するのを常とう手段としてきた。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの親イラン武装組織フーシなどが代表的な勢力だ。イスラム組織ハマスもイランと密接な関係にある。
23年10月7日のハマスによるイスラエルの急襲により、両国の対立は鮮明となった。イスラエルはイランがハマスによる攻撃を支援したとみている。
イランのライシ大統領はイスラエルの急襲作戦直後、ハマスの最高指導者ハニヤ氏と電話協議し「(攻撃は)勇敢だ」などと称賛した。
ただイランは大規模な正面衝突を望んではいないとみられる。
同国のアブドラヒアン外相は23年10月、米CNNのインタビューに対し「戦いが拡大することを望んでいない」と語った。ハマスによる奇襲攻撃についても自国の関与を否定した。
状況を一変させたのは4月1日に起こったイスラエルによるとみられる在シリア・イラン大使館への空爆だ。
同国革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の将官ら13人が死亡した。イランは体面を保つためにも報復攻撃に出ざるを得なくなった。
米政府などによると、13日夜の攻撃ではイスラエル国内に向けて約300のドローンやミサイルが発射された。
現地ではイスラエルがイランに再報復を仕掛ける方針だと報じられている。イラン側は「イスラエルがもう一度失敗すれば、対応はかなり厳しいものとなる」とけん制する。イスラエルがどのような対応を取るかが次の焦点となる。
(3)イラン革命防衛隊とは?
報復攻撃を実施したイラン革命防衛隊は同国指導部の親衛隊の性格を持つ軍事組織だ。
イラン革命が起きた1979年に設立され、国境警備や対テロ作戦も担ってきた。1日のシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺への空爆により革命防衛隊の将官らが死亡した。
革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」はハメネイ師の指揮の下で対外工作や情報活動を取り仕切る。同部隊はイラクでの過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討でも重要な役割を担った。
米国は2019年に当時のトランプ政権が革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定した。
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日経記事2024.04.15より引用