イギリスの下院は16日、2009年1月1日以降に生まれた人が生涯にわたってたばこ製品を買えなくする法案を可決した。
リシ・スーナク首相が主導した「紙たばこ・電子たばこ法案」は、383対67の賛成多数で下院を通過した。首相経験者を含む複数の与党・保守党幹部が反対票を投じた。
施行された場合、イギリスのたばこ規制法は世界で最も厳しい部類のものとなる。
この法案の内容は、ニュージーランドの同様の法律に触発されたと考えられている。同国では2022年、2009年以降に生まれた人への紙巻きたばこの販売を禁止する法案が可決されたが、政権交代で撤廃された経緯がある。
法案成立までには、上院での投票などいくつかの段階が必要だが、今年後半に開かれる見通しの総選挙前に法案が成立する可能性がある。
「依存症に自由はない」と保健相
投票では、リズ・トラス前首相を含む何人かの保守党議員が、個人の自由を制限するとして法案に反対票を投じた。
トラス氏は、この法案は人々を幼児化させる危険性があると下院で述べた。
「人が成長する過程で意思決定ができるようになるまで、彼らを保護することは非常に重要だ。しかし大人を自分自身から守るという考え方は非常に問題だと思う」
閣僚経験者のジェイク・ベリー卿は、ニコチン中毒者のことよりも、「政府が人々に何をすべきかを指示する中毒性」を懸念していると語った。
「私は、良い決断も悪い決断も自由にできる自由な社会に住みたい」
ヴィクトリア・アトキンス保健相は「依存症に自由はない」と、法案を擁護。「たばこのない世代」を作り出すと説明した。
また、「物事を禁止する」ことへの懸念は理解できるとしながらも、 「ニコチンは人々の選択の自由を奪う」ものだと指摘した。
「喫煙者の大半は若いときに喫煙を始め、その4分の3は、もし時間を戻せるなら喫煙を始めなかったと言う」
これに先立ち、英イングランド首席医務官のサー・クリス・ウィッティーは、ひとたびニコチン中毒になると「人々の選択肢は奪われる」と述べた。
「私が駆け出しの外科医だった頃、喫煙によって動脈を損傷し、足を切断しなければならなくなった人々が、病院の外でたばこを吸いながら泣いているのを見たことがある。これは中毒にとらわれてしまった悲劇だ。選択ではない」
販売店に罰金も
イギリスでは喫煙は、予防可能な死因としては最大のものとなっている。長期喫煙者の3分の2がたばこが原因で死亡し、毎年8万人が喫煙関連で死亡している。
また、イギリスではほぼ1分に1人の割合で、心臓病疾患や脳卒中、肺がんなど、喫煙に関連した病気での入院者が出ている。
今回の法案では、フレーバーやパッケージに新たな制限を設けることで、電子たばこの未成年への訴求力を抑えることも目指している。
また、子どもたちに紙たばこやを電子たばを販売した店舗に対し、その場で100ポンドの罰金を科す新たな権限を取引基準監督官に付与する。集められたお金はすべて、さらなる取り締まりに使われる。
イギリスでは18歳未満の喫煙は違法とされているが、統計では5人に1人の子どもが電子たばこを試したことがあるとの調査結果が出ている。
博士課程進学を目指す大学院生の経済的負担を和らげ、材料研究を下支えする(つくば市の物材機構)
物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)は、同機構で研究しながら博士課程進学を目指す大学院生に一時金を支給する制度を導入する。
経済的な理由で進学を断念していた学生を応援し、先端材料研究を下支えする。支度金制度の導入で、優秀な人材確保にもつなげる考えだ。
「NIMSジュニア研究員スタート支援制度」は、学位取得を目指し研究する大学院生を物材機構が任期制職員として雇用する「ジュニア研究員」に一時金30万円を支給する。
2024年度から募集を始め、25年春の入学を想定している。
学生は大学院に進学する際、入学金や授業料など様々な経済的負担を求められ、博士課程への進学を断念するケースも多いという。
入学金の概念が存在しない欧米の大学院との人材獲得競争でも不利になっている。
物材機構は既に「ジュニア研究員」に研究への貢献に対し、14日間の勤務で月額約20万円の給与を支払う制度を導入。
生活費など経済的な心配を減らし、学位取得のための研究に時間を割くことができるように配慮している。今回、一時金制度を加えることで支援を一段と手厚くする。
国内の大学における博士後期課程への進学者数は、03年以降減少傾向が続く。博士号取得者数は、日本に比べて総人口が少ないドイツや英国の博士号取得者数の半分程度と低迷しているのが現状だ。
こうした状況を打開しようと物材機構は、筑波大や北海道大、大阪大など7大学と博士後期課程の教育や研究で連携している。
金銭面での不安を解消する一時金制度導入で、国内外からの優秀な人材確保にもつながりそうだ。
17日の東京株式市場でレゾナック・ホールディングス株が一時前日比535円(15%)高の4000円まで上昇し、およそ5年ぶりの高値をつけた。
買いのきっかけは、16日の取引終了後に発表した2024年12月期の連結業績の上方修正。半導体材料などの販売好調で成長期待が高まり、投資家の買いが集まった。
終値は415円(12%)高の3880円。東証プライム市場の値上がり率ランキングで2位となった。
24年12月期の最終損益は250億円の黒字(前期は189億円の赤字)と従来予想から150億円引き上げた。
半導体・電子材料の需要増に加え、円安進行やナフサ(粗製ガソリン)の値上がりなどが採算改善を後押しする。
市場の評価は高い。みずほ証券の山田幹也シニアアナリストは「半導体後工程材料の拡大やハードディスク(HD)の需要回復などが想定以上に進捗している」と分析。
「黒鉛電極も市場環境が悪い中で健闘しているもようで、印象はポジティブ」(モルガン・スタンレーMUFG証券の渡辺亮一・株式アナリスト)との声も聞かれる。
予想PER(株価収益率)は28倍台と、三井化学(16倍台)や旭化成(19倍)など競合大手に比べて割安感は乏しい。堅調な市況を支えに稼ぐ力をどこまで高められるかが株価を左右しそうだ。
日経記事2024.04.17より引用
参院本会議で改正NTT法が可決、成立し、一礼する松本総務相(17日)
研究成果の開示義務を撤廃する改正NTT法が17日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。NTTの国際競争力を高める第一歩となる。今後はNTT法の廃止を含めて新たな規制のあり方を検討する。
これまで禁じていた外国人役員も取締役全体の3分の1未満まで認めるよう緩和する。NTT、NTT東日本、NTT西日本の社名変更も認める。
NTT法は日本電信電話公社の民営化に伴い1984年に制定された。NTT法は同社に責務としてアナログ電話の「あまねく提供」と「研究の推進及び成果の普及」を課していた。
スマートフォンが普及し、大量のデータが行き交う時代となり、法律が実態に合わなくなっている。NTT法に類する法規制は米欧の主要国では既に廃止されている。NTTは法律の廃止を求めていた。
改正法の成立を受け、NTTは「パートナーと連携しながら、引き続き研究開発に取り組む」とコメントを出した。
外国人役員の登用に関する規制緩和については、他の通信3社を念頭に「外資規制と同様、経済安全保障の観点から主要通信事業者全体を対象に議論が必要」と主張した。
KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルも連名のコメントを出した。
ユニバーサルサービスのあり方など国民生活への影響は大きいとし「NTT法の廃止には反対するとともに、より慎重な政策議論が行われることを強く要望する」と訴えた。
競合事業者は日本電信電話公社時代に築いた資産の多くを引き継いでいる点などを挙げ、NTTに対する規制の必要性を強調する。
今後の焦点はNTT法の廃止を含めた規制のあり方だ。改正法では付則に「廃止を含めて検討」と盛り込んだ。
さらに「25年の通常国会をめどに、NTTへの規制の見直しを含む電気通信事業法の改正など必要な法案を提出する」と明記した。
当初、総務省が示した付則は「2025年の通常国会をめどに、電気通信事業法の改正、NTT法の改正または廃止に必要な法案を提出する」だったが、自民党が修正を求めた。
自民党の中でもNTT法の廃止に慎重な意見は多い。
中身については、外資規制、公正な競争環境、通信のユニバーサルサービスの確保といった3つが大きなテーマになる。
NTT法を巡っては、通信のユニバーサルサービスや外資規制についても総務省が有識者でつくる審議会で議論を進めている。総務省は今夏にも答申を出す方針だ。
通信行政の最大の役割は独占や寡占に歯止めをかけることだ。そのうえで、事業者間の活発な競争を実現するためのルールづくりが重要になる。
日経記事024.04.17より引用
技術開発ではNTTなどの巨大キャリアが主導する時代は終わり、今回の改正法で一つのメドがついた。日本の通信会社が米アップルなど世界のテック企業と伍していくには技術革新を後押しする制度改革が重要になる。