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ロスチャイルド財閥-358 アメリカの歴史ー16  アイルランド系移民

2024-12-23 01:04:57 | 国際政治・財閥

・ロスチャイルド財閥ー354 アメリカの歴史ー13 イギリスからの移民
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/de61f4da665308b114fbb4d7db63985d

・ロスチャイルド財閥ー355 アメリカの歴史ー14 ドイツ系移民
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/15a7f400915e2a71d0fc0c3a51d03cac

・ロスチャイルド財閥-356 ドイツ第一、二、三帝国とは
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/f308fbcee48d50583bda46a6298069dc

・ロスチャイルド財閥-357 アメリカの歴史-15 北欧系移民
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/ded59146873e462b286f88e0fb4ee82d

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アイルランドの惨状

十九世紀初頭、イングランド人地主に収奪されて、窮乏の極みにあったアイルランド人は、ジャガイモ栽培で糊口をしのいでいた。 そして結婚年齢の引き延ばしや一生を通じての独身生活の他に、国外移住が人工調節のメカニズムとなっていた。

多くのアイルランド人がイングランドに出かけ、イギリス産業革命の安価な労働力となった。彼らの悲惨極まる生活は、エンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』にも描かれている。

 

アメリカ移住は、一八四〇年代後半のジャガイモ飢饉で、怒涛のような規模になった。ジャガイモが伝染病によって壊滅状態になり、何万人もの餓死者が出ると、一八四六~五一年の間に百万人以上がアイルランドを去ったのである。

窮乏化したアイルランドからの移民はその後も継続して一八二〇年から一九○○年までの間に、なんと四百万人のアイルランド人が合衆国に移住し、アイルランドの人口は一八四一年の八百十七万人から、一八五一年の六百五十五万人へ、そして一九二六年の四百二十二万人へと減少していった。

今日のアメリカでは約四千万人がアイルランド系だから本国(人口三百四十五万人)の十倍以上のアイルランド系がいるわけである。

 

アメリカに到着した時、彼らは西部に赴いて農地を開拓するだけの資金がなく、都市に定住した。しかし彼らがアメリカで農民にならなかった理由は、貧困だけではなかった。 中西部の農業は故国の農業ととは全く違っていた。 彼らは故国の村で互いの家が見えるところに住み、頻繁に訪れ合う集村生活に慣れていた。 歩いていけるところに教会があり、多くの宗教的祭日があった。 アイルランド人移民がアメリカで都市生活を選んだのは、友人、家族、隣人に密着した生活とカトリック信仰を維持したかったからである。

 

 

産業社会の最底辺へ

興行上の熟練を欠くアイルランド系移民は、アメリカ産業社会の底辺に入り込み。建設労働者、雑役夫、不熟練工場労働者になり、アメリカのスラムの最初の住民となった。 それは後に南・東ヨーロッパ系移民が住むことになるスラムよりも酷いものであった。 家の中に水道は走っておらず、下水は裏庭の便所に溜まり、溝に流れ出た。 この不衛生な状態の中、アメリカの大都市を襲ったコレラで最大の被害を出したのもアイルランド人地区であった。

さらに彼らはカトリック教徒として、プロテスタント的アメリカ社会の敵意と差別に直面した。 『アイルランド人応募に及ばず』とはっきり述べる新聞の求人広告も多く、最も低賃金の仕事にしかアイルランド人はつけなかった。

 

子供たちは学校で虐められ、ボストンでは修道院の付属学校が焼き討ちされる事件も起こった。 アイルランド人排撃の運動は一八五〇年代に絶頂に達し、電信の発明で有名なサミュエル・モールスは『合衆国の自由に対する外国の陰謀』と題する本を出版し、神聖同盟とローマ教皇との間に、アメリカを支配しようとする陰謀があると主張した。

このような動きの中から生まれたのが、アメリカ党、通称『ノー・ナッシング党』である。 党員たちが党について聞かれると「何も知らない」(ノー・ナッシング)と答えたので、この名がついた。 この党は、カトリック系アイルランド人の排除を唱え、一時は政治的な大勢力になっていた。

 

 

アイルランド気質

しかし、アイルランド系は英語ができ、団結心も強かったので、次第に都市社会ん中で地歩を固め、熟練工を中心とする社会層へと上昇し始めた。 第二世代は事務職や専門職に就き始めた。

彼らについて注目されるのは、一八八〇年頃には、都市政治を支配するようになったことである。彼らは珪砂t具や消防などにおいて支配的となり、市kの行政と関係の深い建築業界に進出した。 カトリックの彼らは、いつも不利な立場に置かれた。 また、マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で指摘したような勤勉節約の倫理とは縁遠かった。

 

彼らは得た金を教会に投じたし、また優秀な人材は聖職者になった。 しかし、親しみ深く、機知に富み、寛大勝勇敢で、酒が好きで、喧嘩早くて、歌が上手というアイルランド人独特の気質は、アメリカの都市民衆の世界の貴重な宝となった。

彼らは政治、法律、文学、ショー・ビジネス、ジャーナリズムと言った領域で成功したのである。

 

 

 

 


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