モスクワのクレムリンで5期目就任の宣誓に臨むロシアのプーチン大統領(7日)=ロイター
ロシアのプーチン大統領は14日、閣僚候補を正式に任命し通算5期目の政府が発足した。
ウクライナ侵略が長期化し、戦時経済の強化が新体制の主要課題となる。主要な経済閣僚は留任し、安定を重視した布陣となった。プーチン氏は信頼する元警護担当者や旧友の息子など若手政治家を登用し、次世代リーダーの選抜が始まる。
ロシア上院は14日、ショイグ前国防相の後任に第1副首相だったベロウソフ氏を充て、ラブロフ外相らを再任するプーチン氏の提案に同意した。
下院もミシュスチン首相が提案した経済分野の閣僚候補全員を承認した。上下両院の承認を受け、プーチン氏が全閣僚を正式に任命した。
シルアノフ財務相、レシェトニコフ経済発展相など経済分野の主要閣僚は続投する。
プーチン氏は欧米による対ロ制裁に対抗し、戦時経済体制を切り盛りする実務家を高く評価してきた。
ベロウソフ氏の後任の第1副首相には、マントゥロフ副首相兼産業貿易相を充てた。同氏は国内産業の発展や技術開発を担う。
ウクライナ紛争の長期化を見据え、運輸・物流を担当する副首相を新設し、サベリエフ運輸相が昇任した。戦時下で重要性を増す交通インフラの整備、物流の管理などを担当する。
西部トゥーラ州の知事を務めるジューミン氏は大統領補佐官に任命された(2日、モスクワ)=ロイター
プーチン氏は14日、大統領府の高官人事にも署名した。西部トゥーラ州の知事を務めるジューミン氏を大統領補佐官に任命し、軍需産業を担当する。大統領府が発表した。
同氏は連邦警護庁の出身でプーチン氏の警護を担当し、信頼が厚い。国防次官なども歴任し、プーチン体制の基盤である治安・軍要員(シロビキ)の若手政治家として将来を嘱望されてきた。中央政界への復帰で、後継候補の一人に浮上する。
経済分野の若手有望株ではオレシキン大統領補佐官(経済担当)が大統領府副長官に昇格した。
3月の大統領選挙でプーチン氏の圧勝をお膳立てしたキリエンコ大統領府第1副長官は留任し、引き続き内政全般を取り仕切るとみられる。
プーチン氏を長く支えてきた旧友が高齢となり、側近の子息を政権中枢に起用した。
プーチン氏の最側近とされ安全保障会議書記を務めていたニコライ・パトルシェフ氏は大統領補佐官(造船担当)に退き、息子のドミトリー・パトルシェフ農相が副首相に昇格した。農業や環境分野を所轄する。
「プーチンの銀行」と言われる民間銀行「ロシア」の事実上のオーナーで、プーチン氏と緊密な実業家、ユーリー・コワルチュク氏の息子、ボリス・コワルチュク氏は、会計検査院長官に任命された。
検査院は連邦政府や地方自治体、国営企業などの予算が適切に執行されているか監視する機関で、強い権限を持つ。
経済閣僚では西部カリーニングラード州のアリハノフ知事が37歳の若さで産業貿易相に就いた。
マントゥロフ氏と連携し、民間経済と軍部門の融合を推進するとみられる。若手政治家の間で出世競争が始まる可能性がある。
- 【関連記事】ロシア、国防省の人事総局長を拘束 収賄の疑い
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。