公正取引委員会は米グーグルに初の排除措置命令を出す方針を固めた
米グーグルの検索サービスを巡り、公正取引委員会が独占禁止法違反(不公正な取引方法)を認定する方針であることが22日、分かった。
スマートフォンメーカーに自社を優遇させる契約が不当に競争を制限していると判断した。対話型AI(人工知能)を使った検索の新規参入を見据え、公正な競争環境を整備する。
公取委はグーグルに対し、違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令の処分案を既に送った。
同社への行政処分は独禁法違反を認定しない4月の「確約手続き」に続き2回目で、命令は初めてとなる。違反行為が検索サービス市場に与える影響の大きさを重く見た。
検索は同社が圧倒的なシェアを持ち、収益力の源泉となっている。
米国では独占状態の解消に向けて政府が事業分割を求め、グーグル側が20日に改善案を裁判所に提出した。欧米当局が監視や規制を強めるなか、日本の公取委としても厳格姿勢を示す。
関係者によると、問題になったのは同社が開発するスマホの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を用いる端末メーカーとの取引。
同社は端末にアプリストアを搭載する条件として自社の検索アプリを初期設定画面に配置するよう要請していたほか、他社の検索アプリの搭載を制限すれば広告収益の一部をメーカー側に分配する契約も交わしていた。
公取委はこうした違反行為によって同社が検索サービス市場から競合他社を排除していた恐れがあると判断した。
独禁法は公正な競争を阻害する恐れがある行為を「不公正な取引方法」として禁じている。違反が認定されれば、行為の取りやめや再発防止を求める排除措置命令の対象となる。
立場を利用して不当に不利益を課した行為などには当たらず、課徴金納付命令の対象にはならない。
公取委はグーグル側の意見を聴いた上で最終的な処分を決める。公取委は取引の見直しを求めるとみられ、グーグル側の対応が焦点となる。
公取委は4月、デジタル広告配信を巡ってLINEヤフーの取引を一部制限した疑いがあるとして、確約手続きに基づいてグーグルが提出した改善計画を認定した。
検索サービスについては2023年10月に審査開始を公表し、取引実態についてメーカーなどからも情報を募りながら実態解明を進めていた。
ウェブ解析の「スタットカウンター」によると、日本国内のパソコンやスマートフォンの検索エンジンでグーグルのシェアは約8割。世界シェアに広げると約9割に達する。
「1強」を変えうるAI検索
同社が「1強」状態にある検索サービスの勢力図を塗り替える可能性があるのが、生成AIの登場だ。対話をするように文章でAIに問いかける新たな検索方式は、グーグルが強みとする「キーワード型」が1990年代に登場して以来の転機となる。
検索を取り巻く環境の大きな変化を前に、グーグルがスマホで自社の検索サービスを優遇する取引はまず欧州で問題視された。
欧州連合(EU)の欧州委員会は2018年、同社がアンドロイド端末を製造するスマホメーカーに対し、自社の検索アプリをアプリストアと不当に抱き合わせたと指摘。
収益分配契約もEU競争法(独禁法)違反にあたると認定し、43億4000万ユーロ(約7000億円)の制裁金を科した。
米国では司法省が20年、同社が米アップルなどに対価を支払って検索アプリを搭載させる契約などが反トラスト法(独禁法)に違反しているとして首都ワシントンの連邦地方裁判所に提訴。
連邦地裁は24年8月の判決で、契約によってグーグルの検索サービスが独占状態になっていると認定した。
グーグルは12月20日、自社の改善案を連邦地裁に提出した。メーカーに検索アプリなどをスマホに標準搭載するといった契約を見直すと盛り込んだ。
司法省が提示したクローム事業などの分割やアップルとの契約については踏み込んでおらず、独占の是正に向けた両者の考えにはなお隔たりがある。
ひとこと解説
米司法省がグーグルに要求しているのは8点ですが、その中核は1番目のChromeブラウザの売却であり、今回、公正取引委員会が問題にしているのは3番目のデフォルト検索エンジン契約禁止に相当するものです。
ブラウザ売却の是非は米国で2年以上決着にかかると見られており、公取委はグーグルが今月連邦地裁に提出した改善案にも含まれていた上記をまずは独占禁止法違反認定した上で、上記改善案を米国に先行して日本で具体化させることにしたのではないかと考えられます。
8点の内容と意義については、筆者の最近の記事をご参照ください。
筆者は公取委独占禁止懇話会メンバーを務めていますが、上記は全て個人の意見に基づくものです。https://president.jp/articles/-/89180
(更新)
<button class="container_cvv0zb2" data-comment-reaction="true" data-comment-id="48911" data-rn-track="think-article-good-button" data-rn-track-value="{"comment_id":48911,"expert_id":"EVP01131","order":1}">
10</button>
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2024.12.22より引用