ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社、バークシャー・ハザウェイは4日、米ネブラスカ州オマハで年次株主総会を開いた。
日経電子版「NIKKEI LIVE」は5日、オンラインイベント「バフェットウオッチャー」を配信。
総会を取材した伴百江・米州総局記者と、昨春にバフェット氏をインタビューした藤田和明編集委員が総会の発言を読み解いた。要旨をまとめた。
伴 今年の総会には世界各国から4万人の株主が集まった。副会長のチャーリー・マンガー氏が昨年亡くなって初めての総会で、バフェット氏が何を語るか注目されていた。
藤田 総会の注目ニュースやバフェット氏の発言をまとめた。一番のニュースは米アップル株の売却だ。
伴 2024年1〜3月期にバークシャーがアップル株を13%程度売却したことが分かった。
アップルは23年末時点でバークシャー保有株の半分を占めていた。3月末の保有額は1354億ドル(約20兆7000億円)と昨年末から22%減った。
この間にアップル株は10%程度下落したため13%程度売却した計算になる。1〜3月期にバークシャーは株式を172億ドル売り越しており、その中心がアップル株だった。
藤田 なぜ売却したのか。
伴 総会では新しい大統領になることなどで、売却益にかかる税率が上昇する可能性があると語っていた。
市場では23年10〜12月期に上昇したアップル株の利益確定が目的とみられている。ただ、バフェット氏はアップルのブランド力を評価しており、株主への手紙でも「宝」と表現した。どんどん売却するわけではないだろう。
藤田 売却銘柄では中国の電気自動車(EV)メーカーの比亜迪(BYD)も話題だ。
伴 金融危機のあった08年に初めて投資し注目された。その後、何度か一部売却が明らかになっている。
アップル同様、長期保有銘柄と言っているので、再投資もあるのではないか。ただ、総会では中国株への一段の投資について問われたが、中国株には全く興味がないという姿勢を示していた。
投資の主流は米国株で、それ以外では日本株を除きほとんど考えられないという雰囲気だった。依然として日本株投資に前向きと分かった。
商社株買い増し
藤田 商社株の保有を引き上げている。
最初に商社5社の保有が明らかになったのは20年8月で発行済み株式数の約5%だった。22年11月に6%台、23年6月に8%台、今年2月の株主の手紙で9%まで高めたと言っている。
9.9%までは買い増す余地がある。
商社の評価では長期目的で、バークシャーと似ているとの発言が注目できる。バークシャーは投資会社と事業会社の2つの顔を持つ。エネルギーや鉄道などの事業を手掛け、商社と重なる。
伴 バークシャーが円建て社債の発行を準備していると伝わった。商社株の買い増しを続ける方針の表れか。
藤田 社債の発行と(株式の)保有開示のタイミングはほぼ一致している。
円で資金調達し投資するスタンスが見て取れる。5大商社株の保有比率を9%から9.9%まで上げる余地があるなら、4000億円ぐらいの資金が要る計算になる。
8回目となる今回の調達額は2600億円。商社株の買い増しに使われると考えるのは自然だ。
伴 ヘッジファンドのエリオット・マネジメントが住友商事(8053)株を数百億円規模で取得したことが4月末ごろ明らかになったアクティビスト(物言う株主)による投資をバフェット氏はどう見ているのか。
藤田 エリオットの投資額は1%にも満たない。思惑の域は出ないものの、株主還元が注目されるタイミングだ。
住友商は決算発表で総還元性向を40%にし、(原則、減配しない)累進配当を導入した。伊藤忠商事(8001)も配当の下限を示している。
バフェット氏の投資が商社の経営姿勢にも影響していると言える。ただ、バークシャー全体で見ると米国株が多く、日本の商社は分散投資の一環だ。本当に有望な新規の投資先を探しあぐねているように見える。
伴 バークシャーの手元資金は一貫して増加し、3月末時点で過去最高の1889億ドルに達した。米マクドナルドやウォルト・ディズニーの時価総額に相当する。
財務省証券の利回りが5.4%という状況では、株式投資には振り向けられないといった発言もあった。
手元資金は6月末までに2000億ドルに達するとの見通しも示した。資金をいつどこに振り向けるかが市場の最大の関心事だ。
藤田 バークシャー自身の株価はどうか。
伴 バークシャー株とS&P500種株価指数(配当込み)の騰落率を見ると、創業初期はS&P500を上回っていたが、近年の上昇率は相場並みになっている。
それだけ投資で大きな収益をあげる機会が減ったのだろう。ただ、過去59年間を見るとバークシャー株は4万倍(S&P500は300倍)と大きなリターンを確保した。
藤田 バフェット氏と64年間、バークシャーを率いたマンガー氏が99歳で亡くなった。
伴 総会ではいつもバフェット氏の隣にマンガー氏が座っていた。バフェット氏は今回の総会でも自分のコメントの後に「そうだよね、チャーリー」などとつい話しかける場面があった。
後継の時期を示唆
藤田 バフェット氏も93歳になり後継問題は気がかりだ。
伴 「アベル氏がいつごろ最高経営責任者(CEO)を引き継ぐのかめどを教えてください」という株主からの質問に対して、バフェット氏は「どこかの会社に入って4年雇用契約するのだったら長すぎる」と回答した。
4年先ではなく2年後や3年後かもしれないと暗に伝える表現だった。
藤田 どんな権限を持つことになるのか。
伴 アベル氏は保険以外の鉄道やエネルギーの事業のトップを務めている。
「バフェット氏が担っていたような投資先の選別も引き継ぐのか」という株主の質問には「事業ができるCEOは株式の投資選別の力もある」とした。バフェット氏が退いた後はアベル氏が投資先選別もやると言っていた。
藤田 最後にバフェット氏は来年の株主総会にも来ると宣言したのか。
伴 そうだ。皆、拍手喝采で「バフェット氏に来年もぜひ会長として、CEOとして来てほしい」という熱気を感じた。
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[日経ヴェリタス2024年5月26日号]
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日経記事2024.05.26より引用