魔法が解けたそのあとで

結婚、出産、育児、介護、お仕事。来た球を打ち返す、毎日のつれづれをつづりました。

予感。

2009-01-18 18:30:15 | ママになれるかな編
わたしと彼は、順調にデートをしていた。

会社の帰りに一緒に夕食を食べたり、休みの日にドライブしたり。

でも、なんとなく感じていたことがあった。

「それでこのあと、どうするんだろう?」

実は、お恥ずかしい話ですが、いろいろわけあって、わたしは男性と深い仲になったことがなかったのです

この先、どうなるのかよく分からない。
手をつないで、キスして、その先は・・・未知の世界。

しかも当時、20代後半に入っていたわたし。
・・・彼に引かれるかもしれない
そうも思っていた。

だから、彼に任せようと思っていた。

一向に進展がないまま、デートは続いた。

そして感じたことがあった。
彼は人に踏み込ませない部分がある。

親切で、よく話す人だけど、何かラインを引いている。
そう感じた。
わたしはそこに入りたかった。

出来れば、わたしが会っていないときの彼を見たかった。
つぶさに、見てみたかった。
どんな家族と暮らしているのか、どんな生活をしているのか。

ご両親と、妹さんがいるのは聞いていた。
小学生の時に関西に、お父様の転勤で一時期行っていたことや、大学は東京だったこと。

しかし踏み込ませないところがあった。

それは、結婚した今だから言えるが、たしかに彼は素をまだ見せていなかった。
(今は見せ過ぎ・・・

そこに入り込むことは、出来るだろうか?
そんなことを思っていた。

そして、デートの最後にいつも思っていた。

「もしかして、これが最後って言われるかもしれない」
そういう予感がしていた。

ふたりのやりとりは、当時携帯のメールが普及していなかったので、PCのメールが多かった。
あとは携帯。携帯よりはPCメールが多かった。
当時、ポストペットを使っていて、毎回彼のメールを猫が運んできてくれたのを憶えている。

いろいろなことをあまり長くならないように文面にこめた。

その後、わたしのポストペットのソフトは壊れてしまい、彼とのメールは失われてしまった。

しかし、彼はわたしとのメールをずっと取っておいて、たまに見返していたという。
彼がわたしに一昨年連絡をくれたのも、そのメールを読み返したからだということが後日分かる。
男性はなかなか過去を忘れないものだといい、女性はきっぱり切り捨てて前に進むというが、本当なのかもしれない

そして、ある日、また食事に行った。
美味しい食事をいただいて、わたしは思った。

「なんでこの人と食べていると、わたしはこんなに美味しく感じるのだろう」

そして思った。

「もしこの人と会えなくなったら、わたしはもう美味しいと思えないかもしれない」
そう暗く思った

(結構、わたしは最悪のケースを想定して、物事のショックを和らげようとするくせがある。)

そしてぼんやり感じていたことは、彼はそんな風には思っていない、ということだった。
好かれているかどうかは、大体分かるものだ。

お会計の時、レジにいた店員さんに聞かれた。
「お客様は東京から来たんですか?」

彼とわたしは東京の人と思われたようだ。

「いえ、違います。近所です。」
と彼は言って店を出た。
そのことをよく憶えている。
その店は今はもうなくて、別な飲食店に変わっている。

そして家まで送ってもらった。
その日、両親はいなかった。
でもだからといって、どうすればいいかわたしにはわからなかった。
なにしろ、経験がなさ過ぎた。

彼も、なんとも言わなかった。

いつも信号が赤になればいいと思っていた。
送ってくれる帰り道、なるべく彼と一緒にいたくて、青信号を残念に思った。

その時の帰り道の、彼の顔を憶えている。
秀麗な、白い横顔。
その時、彼はわたしの横にいなかった。

信号は、青ばかりだった。

「ありがとうございました。」
お礼を言って車から降り、彼は帰っていった。
思えば、いつもうちまで送ってくれたし、食事もご馳走してくれた。

それから、彼とは長らく連絡がつかなくなる。

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忘れないこと。

2009-01-18 18:24:26 | ママになれるかな編
昨日は震災から14年たった日でした。
当時大学生だったわたしは、タンスの下敷きになり「死ぬかも」と思った時、揺れが止まり、助かりました。
それから毎年、なぜか地震が起こった時間に目が覚めるのです。
でも、今年は目が覚めなかった。
不思議でした。
夫にそのことを話したら
「今、幸せだからだよ」
と。
妊娠しているから、目覚めなかったのかもしれない。
ニュースはつらくて観れない。
「忘れたことはありません」
と遺族の方は言う。
あの日から一変してしまった人がたくさんいる。
近しい人を亡くしてはいないわたしは、忘れていくのかもしれない。
でもいつも「日常がまったく変わってしまう恐怖」が心の底にある。
そして、わたしは祈るしかない。


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