わたしがこの世を去るとき、きっと去来する風景が、川原に咲いた一面の菜の花畑だろうと思う。
春、川を渡る橋の上の電車の窓から見えた黄色い、まばゆい景色。
とても幸福な気持ちに包まれていた。
「これから好きな人に会いに行く」
こんなにもしあわせな気持ちなのか、と思った。
初めて知った気持ち。
眩しい気持ち。
遅い桜が残る4月末、わたしは彼の住む街の近くの駅に向かっていた。
杏や林檎など、春の花が咲いていた。
電車はそのなかを進んでいった。
彼の調べてくれた時刻の電車に乗り、彼が迎えに来てくれる駅をめざす。
初めて降りた駅のロータリーに、彼は車で待っていてくれた。
紺のゴルフから降りてきて、助手席のドアを開けてくれた。
いつもと違う、ジーンズの脚が長くてカッコよかった
わたしを待っていてくれた、ということがとても嬉しかった
遅い桜を見に行った。
桜は満開の頃を少し過ぎていたけど、とても綺麗だった。
食事をして、あたりをドライブした。
一緒に美味しいシュークリームを食べ、お茶を飲んだ。
そのお店は高台にあって、とても眺めが良いところだった。
後々、東京から来た友達を案内したり、自分も軽井沢に来た時には立ち寄ったお店だ。
ちょうど夕方の陽射しが川面に映って、煌いていた。
眩しく反射して、光の帯のようだった。
とても綺麗だった。
この人と一緒に見ると、すべてが煌いて見える・・・。
そして一緒に食べるとなんでも美味しく感じる・・・。
そう思った。
帰りはわざわざ送ってくれた。
彼の家まで1時間近くかかる。
帰りは、信号が赤になると嬉しかった。
少しでも長くいられるから。
わりとよく喋ってくれた。運転しながら。
そしてわたしにこう言った。
「夏は花火を観に行こう」
わたしはとても嬉しかった
夏も、一緒にいられるんだ。
そう思った。
わりと、彼はよく先のことを言う人だった。
海にも行こう、美味しい店があるから今度行ってみよう、とか。
わたしは、それを先の約束と思った。
それはわたしを有頂天にした。
でもそうではない、ということをわたしは後に学習する。
男の人は得てしてそういうことを言う。
嘘をついているのではない。未来を夢見せて、騙そうとしているのでもない。
その時には本当にそう思って言っているのだということを。
あんなに嬉しい、幸福な気持ちのデートは、後にも先にもあれっきり。
その気持ちを知ることが出来ただけでも、人生捨てたもんじゃない。
そう思う。
その証拠に、菜の花を見るたび、わたしはとっても幸せな気持ちになれる。
ただ、あの時の人を好きだった気持ち、ただ好きだった気持ち、ただそれだけで会いたくて会いたくて、一緒にいたくて、焦れるような怖いようなその気持ち。ただまっすぐに会いに行けた、その気持ち。
そこだけを切り取って、心におとずれるあたたかなもの。
それを蘇らせることができるから。
まぶしい光。
光る川面。
黄色い菜の花。
白い紋白蝶。
わたしはきっと思い出す。
春、川を渡る橋の上の電車の窓から見えた黄色い、まばゆい景色。
とても幸福な気持ちに包まれていた。
「これから好きな人に会いに行く」
こんなにもしあわせな気持ちなのか、と思った。
初めて知った気持ち。
眩しい気持ち。
遅い桜が残る4月末、わたしは彼の住む街の近くの駅に向かっていた。
杏や林檎など、春の花が咲いていた。
電車はそのなかを進んでいった。
彼の調べてくれた時刻の電車に乗り、彼が迎えに来てくれる駅をめざす。
初めて降りた駅のロータリーに、彼は車で待っていてくれた。
紺のゴルフから降りてきて、助手席のドアを開けてくれた。
いつもと違う、ジーンズの脚が長くてカッコよかった
わたしを待っていてくれた、ということがとても嬉しかった
遅い桜を見に行った。
桜は満開の頃を少し過ぎていたけど、とても綺麗だった。
食事をして、あたりをドライブした。
一緒に美味しいシュークリームを食べ、お茶を飲んだ。
そのお店は高台にあって、とても眺めが良いところだった。
後々、東京から来た友達を案内したり、自分も軽井沢に来た時には立ち寄ったお店だ。
ちょうど夕方の陽射しが川面に映って、煌いていた。
眩しく反射して、光の帯のようだった。
とても綺麗だった。
この人と一緒に見ると、すべてが煌いて見える・・・。
そして一緒に食べるとなんでも美味しく感じる・・・。
そう思った。
帰りはわざわざ送ってくれた。
彼の家まで1時間近くかかる。
帰りは、信号が赤になると嬉しかった。
少しでも長くいられるから。
わりとよく喋ってくれた。運転しながら。
そしてわたしにこう言った。
「夏は花火を観に行こう」
わたしはとても嬉しかった
夏も、一緒にいられるんだ。
そう思った。
わりと、彼はよく先のことを言う人だった。
海にも行こう、美味しい店があるから今度行ってみよう、とか。
わたしは、それを先の約束と思った。
それはわたしを有頂天にした。
でもそうではない、ということをわたしは後に学習する。
男の人は得てしてそういうことを言う。
嘘をついているのではない。未来を夢見せて、騙そうとしているのでもない。
その時には本当にそう思って言っているのだということを。
あんなに嬉しい、幸福な気持ちのデートは、後にも先にもあれっきり。
その気持ちを知ることが出来ただけでも、人生捨てたもんじゃない。
そう思う。
その証拠に、菜の花を見るたび、わたしはとっても幸せな気持ちになれる。
ただ、あの時の人を好きだった気持ち、ただ好きだった気持ち、ただそれだけで会いたくて会いたくて、一緒にいたくて、焦れるような怖いようなその気持ち。ただまっすぐに会いに行けた、その気持ち。
そこだけを切り取って、心におとずれるあたたかなもの。
それを蘇らせることができるから。
まぶしい光。
光る川面。
黄色い菜の花。
白い紋白蝶。
わたしはきっと思い出す。
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