二十年以上前でしょうか、『ノルウェイの森』が爆発的に売れて、
それこそ「社会現象」(陳腐な表現であまり使いたくないですが)
になった当時、友人から借りて読もうと思ったのですが、途中で
読むのをやめてしまったのでした。
それからだいぶインターバルを置き、ようやく最後まで読むことに。
この本に関しては、プロの文芸評論家から街の文学青年少女、
はたまた読書の習慣のない、巷のブームに乗っかっただけの人まで
巻き込んでの賛否両論があり(売れた本の宿命でもありますが)、
そういった周囲の雑音を気にすることなく自分自身の感じるままに
読めた、という人が沢山いたとは思えません。
ジョン・アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」という作品
について、村上春樹氏は
「(略)複雑で明らかに優れた小説をそのようなフェイズでのみ一望
できる読者がそれほど沢山いるとは僕には思えない」
と評していて、このコメントはそっくりそのまま『ノルウェイの森』
にも当てはまるのではないでしょうか。
高校時代、仲の良かった、親友といってもよかった同級生が自殺し、
物語の主人公で語り手「僕」と、自殺した友人の幼なじみで恋人だった
直子に形容しがたい空虚感がつきまとい、そのままふたりは地方から
大学進学のため上京。
「僕」が入った大学の寮のエピソード、東京で直子と再会し、直子の心
には自殺した男の想いがくすぶり続け、「僕」には振り向いてくれない
とは分かっていても、直子に近づきます。
しばらく連絡が途絶え、直子は実家に戻ってしまい、そしてある「施設」
へと入ることに・・・
この物語をリアルに描きすぎると、あまりにグロテスクになってしまい、
ほどほどに画面をぼやけさせ、一歩間違えば展開が複雑になりすぎていた
ところを、ほどほどに情報の肉付けと削ぎ落としをしています。
「ほどほど」と「ギリギリ」の間、とでもいいましょうか、栄養過多でも
失調でもない、複雑なものをシンプルに見せる描写の技術は感じられず、
だからといって稚拙でもなく、登場人物にリアル感はないのですが、それ
でも人物設定はしっかりされています。
あくまで個人的な意見ですが、「ホテル・ニューハンプシャー」の日本的
解釈をしようとしたのでは、と感じました。
類似点(悪く言えばパクリ)を見出した、というわけではなく、高尚な「文学」
ではなく、あくまで娯楽としての「小説」を書こうとするそのアプローチが
共通点といえますかね。
これはけっこうな冒険だったと思います。しかしそれをやってのけた。
なおのこと、願わくば「ホテル~」を読む前に『ノルウェイの森』を読んで
おきたかったです。
それこそ「社会現象」(陳腐な表現であまり使いたくないですが)
になった当時、友人から借りて読もうと思ったのですが、途中で
読むのをやめてしまったのでした。
それからだいぶインターバルを置き、ようやく最後まで読むことに。
この本に関しては、プロの文芸評論家から街の文学青年少女、
はたまた読書の習慣のない、巷のブームに乗っかっただけの人まで
巻き込んでの賛否両論があり(売れた本の宿命でもありますが)、
そういった周囲の雑音を気にすることなく自分自身の感じるままに
読めた、という人が沢山いたとは思えません。
ジョン・アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」という作品
について、村上春樹氏は
「(略)複雑で明らかに優れた小説をそのようなフェイズでのみ一望
できる読者がそれほど沢山いるとは僕には思えない」
と評していて、このコメントはそっくりそのまま『ノルウェイの森』
にも当てはまるのではないでしょうか。
高校時代、仲の良かった、親友といってもよかった同級生が自殺し、
物語の主人公で語り手「僕」と、自殺した友人の幼なじみで恋人だった
直子に形容しがたい空虚感がつきまとい、そのままふたりは地方から
大学進学のため上京。
「僕」が入った大学の寮のエピソード、東京で直子と再会し、直子の心
には自殺した男の想いがくすぶり続け、「僕」には振り向いてくれない
とは分かっていても、直子に近づきます。
しばらく連絡が途絶え、直子は実家に戻ってしまい、そしてある「施設」
へと入ることに・・・
この物語をリアルに描きすぎると、あまりにグロテスクになってしまい、
ほどほどに画面をぼやけさせ、一歩間違えば展開が複雑になりすぎていた
ところを、ほどほどに情報の肉付けと削ぎ落としをしています。
「ほどほど」と「ギリギリ」の間、とでもいいましょうか、栄養過多でも
失調でもない、複雑なものをシンプルに見せる描写の技術は感じられず、
だからといって稚拙でもなく、登場人物にリアル感はないのですが、それ
でも人物設定はしっかりされています。
あくまで個人的な意見ですが、「ホテル・ニューハンプシャー」の日本的
解釈をしようとしたのでは、と感じました。
類似点(悪く言えばパクリ)を見出した、というわけではなく、高尚な「文学」
ではなく、あくまで娯楽としての「小説」を書こうとするそのアプローチが
共通点といえますかね。
これはけっこうな冒険だったと思います。しかしそれをやってのけた。
なおのこと、願わくば「ホテル~」を読む前に『ノルウェイの森』を読んで
おきたかったです。