晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

パトリシア・コーンウェル 『私刑』

2010-10-08 | 海外作家 カ
この作品は、バージニア州の検屍官、ケイ・スカーぺッタが
主役のシリーズ作品6作目、基本は1作でメインの事件は
解決するのですが、『私刑』は前作「死体農場」からの続編と
なっています。

残忍な犯行を繰り返す連続殺人犯ゴールトを追うも捕らえられず、
リッチモンド市警の警部ピート、FBIのウェズリー、そして
ケイの姪でコンピュータの天才、FBIのある犯罪データベース
システム開発に関わるルーシーはゴールトに振り回されます。

クリスマスイブの夜。リッチモンド市内でも特に危険な地域を
担当する保安官ブラウンは、サンタの衣装を着てパトロール。
しかし、決まっていたルートを外れ、一軒の家に入ってゆく
ブラウン、後を追っていたケイとピートの耳に突然、激しい
銃撃音が聞こえてきます。
家に入ると、黒人の男の死体。この男はドラッグをブラウンから
もらう予定が、どういうことか撃ち合いになってしまうのです。
ブラウンには、ドラッグの売人としての容疑がかかっており、
ケイは参考人として裁判所で証言する予定があったのです。

そして、ニューヨークのセントラルパーク内で、女性の死体が
発見されます。散歩道(ランブル)と呼ばれる、細い道がいり
組んだ木が茂ってる辺りで、地元の人も夜は近寄らないという
危なっかしい地帯。そこで、裸にされ、皮膚の一部が切り取られ
て、ベンチに座らされて死んでいたのです。

これこそゴールトの犯行だとピートは息巻き、ウェズリー、ケイ
とともに捜査に加わります。
目撃情報によると、この女性は男とふたり連れで地下鉄出入口
近辺で見られていて、さらに博物館内でも目撃されています。
いっしょにいた男がゴールトなのか、それならなぜこの女性は
わざわざセントラルパークのランブルまでいっしょに行き、裸
にさせられて殺されたのか。

さらに、捜査に加わっていた交通警察隊の巡査が地下鉄構内で
殺されます。そばにいた浮浪者はドラッグ中毒で、ゴールトと
思われる特徴の男が殺したと言うのです。

ルーシーが開発したFBIのシステムに、再び侵入したゴールト。
そこで、どうやら、ケイの身辺に何かを起こしてやろうとする
形跡があり、保安官のドラッグ事件もどうやらそれに関係している
らしく、厄介なことにゴールトはケイのクレジットカードを持って
いて、息子と称して買い物をしていたのです・・・

ゴールトのケイに対する目的とは。セントラルパークで殺害された
女性とゴールトとの関係とは・・・

それまで、捜査に協力的ではなかったゴールトの両親がはじめて
息子について語ります。
ゴールトには妹がいて、妹はどこか他の街で暮らしているとのこと
なのですが・・・

『私刑』の原題は「From Potter's Field」で、これは「無縁墓地」
という意味。セントラルパークで殺された女性は無縁墓地に埋葬され
るのか、それとも家族に葬ってもらえるのか。

それにしても、アメリカの犯罪小説に出てくる犯人像は、オペラ座の
怪人のごとく神出鬼没で、魔法が使えるかのように描かれるのが多い
のですが、そうなると、それを捕まえる側にも神がかり的な能力が
必要になってきます。
ところが、ケイをはじめ周囲の人物にそういった能力の持ち主は、
しいて挙げればコンピュータの天才ルーシーですが、それでも未熟さ
ゆえの失敗が多く、ともすればファンタジーとなってしまいがちな
ところを、しっかりと登場人物の人間くささ、弱さ、脆さを描いて、
天上の戦いから地上での出来事に留めています。

コメント
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