晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『あやめ横丁の人々』

2018-03-30 | 日本人作家 あ
この前読んだ宇江佐真理さんの「深尾くれない」という
作品がありまして、今までは下町人情的な時代小説が多
かったのですが、これは実在の剣客の小説でして、内容
もホッコリ系というよりは、ハードでヘビーな印象。
で、この『あやめ横丁の人々』も、タイトルだけで想像
すると下町人情のホッコリ系かと思いきや「深尾くれな
い」寄りでした。

調べてみますとこの2作品は出版元は違いますが発売
されたのが同じ2003年。
ほぼ同時期に執筆されてたんでしょうかね。

大身旗本の三男、紀藤慎之介は、祝言の日にお嫁さんに
想いを交わした男がいることを知り、あろうことか式の
最中にその男がお嫁さんを奪いに来ますが、慎之介は男
を斬り、後日お嫁さんは自害。
お嫁さんの実家は逆恨みして慎之介を殺そうと刺客を送
りこみます。そこで紀藤家では慎之介を匿うことに。

そこは「あやめ横丁」という、屋敷の塀と堀に囲まれて
出入口は木戸口の一か所のみという、潜伏にはまあまあ
の場所。そこに住む権蔵という岡っ引きの家に厄介にな
ることに。権蔵は女房のおたつ、娘の伊呂波(いろは)
の3人暮らし。ところがこの伊呂波、いきなり「布団
ぐらい手前ェで畳め」「ここに住むからにはコイツは
武士でもなんでもない、慎公だ」と口が悪いったらあ
りゃしません。

とりあえず横丁の内にいれば安全だということで風呂屋
に行ったり髪結い床に行ったりしますが、みんな揃って
不愛想。権蔵は慎之介が人を殺して匿われてるのを固く
秘密にしているはずですが、それどころか、乾物屋も、
米屋も質屋もみんな不愛想。挙句、少年に「手前ェ、
誰を殺したんだ?」といきなり訊かれて驚きます。

少年は太吉というのですが、伊呂波に話を聞くと、父親
は家の金を持って消え、母親は酒浸り。姉は岡場所に売
られ、兄がしじみ売りで稼いでいますがその金は母親の
酒代に消え、ある日、兄が太吉のために持ち帰ってきた
おにぎりを母親が奪い取って食べたことに我慢の限界に
なって兄は母を殺してしまい・・・

ところが、あやめ横丁の他の住人の話を聞けば、誰もが
何やら「いわくつき」だったのです。
慎之介は横丁でいつまでもボーっとしてるわけにもいか
ないので、太吉や他の子どもたちに字を教えます。

子どもたちも慎之介の塾に通うようになり、横丁の人た
ちとも世間話をするくらいに打ち解けてきますが、ある
日、刀を持った浪人が「紀藤慎之介はどこだ!」と横丁
にいきなり飛び込んできて・・・

慎之介は無事に家に戻ることができるのか。それよりも、
この「あやめ横丁」とはいったい何なのか。そして権蔵
の女房と娘はなぜこの横丁に来ることになったのか・・・

「幸せってなんだろう」と、ときたま考えることがあり
ます。どなたか忘れましたが、自分自身を含めて、自分
の親類縁者に殺人の被害者あるいは加害者がいないとい
うのがひょっとして幸せと言えるんじゃないか、と話し
てて、ニュースや新聞を見ればほぼ毎日殺人事件があり、
自分もいつ報道(される)側になるのか、絶対に無いと
は言い切れないので、なるほどなあと。
コメント
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