晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

葉室麟 『蜩ノ記』

2015-08-22 | 日本人作家 は
直木賞を受賞して映画化されて、などといういわゆる有名な作品はだいぶ時間をおいてから読むことにしていましたが、今回はやや早めに読むことに。

豊後、羽根藩の壇野庄三郎は、山の中の向山村へと歩いています。
そもそも、藩の武士がこんな村に向かっているのにはある訳が・・・

ある日のこと、ほんの些細なことがきっかけで庄三郎と友人、
水上信吾と喧嘩をはじめて、庄三郎は居合で友人の足を斬って
しまいます。
この沙汰の処分は、足が不自由になった信吾は武士を辞めて
江戸へ出て学問の道に進むことに。
庄三郎は、切腹を免れるかわりに、向山村に行くことに。

向山村には、戸田秋谷という羽根藩の元郡奉行、江戸屋敷の
中老格用人が、ある事件があって幽閉されているのですが、
七年前、江戸屋敷で側室と不義密通し、小姓を斬ったという
のです。

本来であれば家禄没収で切腹でしたが、当時の藩主のはからい
で、家譜の編纂をするように、ただし十年後に切腹をすると
命じられたのです。

その件が七年前ということは切腹は三年後。

そこで庄三郎に、秋谷の監視と、七年前の事件をどのように
家譜に残すのかを調べてこいということになったのです。

やっとのことで庄三郎は戸田秋谷が住む家に着きました。
そこでは、秋谷の妻、織江と、娘の薫、息子の郁太郎と
暮らしています。

家譜とは別に秋谷は「蜩の記」という日記をつけているのですが、
そこには天気や読んだ資料などが書かれているだけで、七年前の
側室との密通、小姓を斬った事件のことは書かれていません。

さて、庄三郎は戸田秋谷の家に住んで表向きは家譜の手伝い、
実際は秋谷の見張りとしての暮らしがはじまります。

ここで、秋谷の清廉な人柄にふれて、庄三郎はこの人があんな
事件を起こすはずがないと思いはじめます。
しかし、この村にある寺の住職は「秋谷が側室と一夜を過ごして
小姓を斬ったのは事実で切腹しなければならない」と言うのです。

かつて秋谷が郡奉行だったとき、向山村は領地で、農民は武士を
忌み嫌っていたのですが、秋谷は別で、今も彼を慕っています。
農民たちのことを親身に考える姿勢にやがて庄三郎も感化されていき
ます。

しかし、藩から来た人が村内で殺されるという事件が起こり・・・

七年前の事件の真相は何なのか。当時の正室の秘密とは・・・?

いやあ、久しぶりに心の底から「面白かったー」と思える作品でした。




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