晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

半村良 『講談 碑夜十郎』

2024-12-29 | 日本人作家 は

今年ももう終わりですね。今年一年に読んだ本は、なんとたったの十九冊。この投稿の分を合わせたら二十。こりゃ少ないですね。来年こそは年百冊・・・とはいいませんがせめて半分の五十冊は読みたいですね。個人的に「忙しい」「時間がない」という言い訳はしないと決めていて、ようは自己管理といいますか時間の作り方ができてないだけで、どんな金持ちも貧しい人も秀才も勉強ができない人も等しく一日二十四時間と決まってるわけですからね。

以上、自分に厳しく。

さて、半村良さん。思えば半村良さんの作品はこれまでけっこう読んできましたが、そういや「半村良といえば」のSF作品はまだ読んでません。あ、映画は観ましたけど。

江戸末期の天保年間、お絹という女が千住の近くを歩いていると、見慣れない石碑があることに気づき、近づいてみるとなんと意識のない全裸の男が横たわっています。お絹と共に旅をしていた男に背負わせて浅草にある長屋まで連れて帰ります。気がついた男は、自分の名前も生まれた国も何もわかりません。名無しの権兵衛では具合が悪かろうということでつけた名前が石碑のそばで碑、お十夜法要の夜に見つけたので夜十郎、で、碑夜十郎。

夜十郎は、記憶を取り戻そうと町中を歩き周りますが、人助けをしたりして浅草界隈では人気者になります。ちなみに、お絹は造花の内職を束ねる元締をしています。ここに、江戸城内の御数寄屋坊主という茶の接待をする役の河内山宗俊、御家人の片岡直次郎(直侍)、剣客の金子市之丞、海産物問屋の森田屋清蔵、博徒の暗闇の丑松、花魁の三千歳、が出てくる講談、歌舞伎の演目「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」がベースになって、市井の人助けにとどまらず、火付盗賊改方の長官や、はては幕閣までも相手に立ち回ります。

この夜十郎、今は天保という時代で、その後の元号もスラスラと言えたり、このあとに大飢饉が起こり、西のほうで大塩平八郎という人が反乱を起こす、などと予言したり、会話の中にこの当時では使われない単語を話したりします。

はたして夜十郎とは何者か・・・とまあ、書くまでもなく、未来からタイムスリップして来たんですね。

文中で「筆者(わたくし)は・・・」と説明をはじめたりして、これがまた面白い。登場人物の男女を添い遂げさせようとするお絹が急いでしようと「この作者は今までも散々中ぶらりんをやっているからね、今度という今度はめでたしめでたしで終わらせてやらなきゃ」という台詞のあとに「どうもお絹は筆者の悪口を言っているようだ」と書いたりしててニヤリとします。

本筋じたいは、とても痛快な時代小説。


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