晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

大崎善生 『アジアンタムブルー』

2011-10-18 | 日本人作家 あ
ついこの前、大崎善生のデビュー作で吉川英治文学新人賞受賞作
「パイロットフィッシュ」を読んだばかりで、その続編的な作品。

ハードカバーの単行本で買ったのですが、まず装丁が美しいですね。
トレーシングペーパーみたいな半透明カバーに表題と作者名が書い
てあって、そのカバーの下に透けて見える植物の写真。
この植物が「アジアンタムブルー」という観葉植物の一種。
あ、このブログのテンプレートの右上にある植物がアジアンタムブルー
ですかね。

なぜ装丁なんかに言及したのかといいますと、デビュー作もそう
だったんですが、文体というか、雰囲気が装丁のような“半透明”
という印象なのです。
別に、内容がボヤけてるとか、そういう否定的なことではなくて、
よくドラマや映画の演出で、特に回想シーンなんかで、フィルター
がかかってるような焦点をボカしていたり、手ブレだったりの映像が
ありますけど、そんな感じ。

この回想と、物語上での現在が、折り重なるように構成されていて、
フィクションなんだけどもフィクションの中にある現実と虚構の間
を見ているような、食感の違う、例えばスポンジとパイを層にした
ケーキのような。分かりにくいですか。

エロ雑誌の編集をしている山崎は、デパートの屋上でひとりボーっと
しているのが日課。そこに女性が声をかけてきます。
これは物語の核ではないのですが、この見知らぬ女性との会話から
山崎の中学時代から高校生のあいだにあった、彼のその後の人生観
というか、人格形成に大きく影響を及ぼした出来事が描かれ、やがて
葉子という女性と出会うのですが、この女性が病気で・・・

あれ、「世界の何とかで何とかを叫ぶ」っぽくないか?と思いました。
特に山崎が退院なんてできないような状態の葉子を連れ出すところなど。

ただ「世界の何とか~」とは違うのが、個性的なサブキャラ。SM嬢の
ユーカ、エロ雑誌の人たち、病院の先生、高校時代の美術部の先輩、外国
のタクシー運転手、などなど。

ちょっと作者が方向性を変えて、たまにギャグに走ったり、泣かせに
走ったりもできたのでしょうが、そこは淡々と描いているなあ、と。

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