晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『研ぎ師太吉』

2012-10-02 | 日本人作家 や
山本一力の作品を読んで知った、江戸時代の職業というのは少なくなく、
たとえば(損料屋)という、今でいえば家具レンタルで、まあひょっと
したら落語とかにも出てくるのかもしれませんね。

そして、今回読んだ中に出てくる(研ぎ師)という職業も、今では金物屋
とか包丁専門店でお願いする包丁研ぎですが、江戸時代では刀研ぎと包丁
研ぎは区分けされていたそうで、(研ぎ師)は刀剣の専門で、庶民という
よりは武家に近いですね。

主人公の太吉という研ぎ師は、刀研ぎ名人といわれた楯岡龍斉に弟子入り
して、その後、武家屋敷に奉公にあがります。太平の世の中で刀研ぎを家
に置いておく必要など特にないのですが、そこは”見栄”で、といっても
刀ではなく、家にある包丁やハサミ、草刈り鎌などを研いでいたそうです。

で、太吉は、とある武家屋敷で、実直な性格で可愛がられます。そこで
女中の香織といい仲になるのですが、じつは香織は名家のお嬢様で、研ぎ
職人と結婚させるわけにはいかないということで太吉は暇を出されます。

そして太吉は、独立して箱崎の裏店で包丁研ぎの店を構えますが、その裏店
が取り壊されることになってしまい、深川に越してくることに。

山本作品にたびたび登場する深川の料亭「江戸屋」の板前は太吉の腕を高く
買い、クチコミで評判は上がっていきます。

ある日、若い女性が太吉の店におとずれます。死んだ父の包丁を研いでほしい
というのですが、話を聞けば、料理人だった父は、殺されたというのです。

かおりは、父を殺した犯人の目星はついているといって、包丁を預けて店を
出ます。”かおり”という名前に、かつて武家屋敷の奉公時代に恋の成就と
ならなかった香織を思い出し・・・

そんな太吉はまだ独身で、食事はもっぱら外で食べるのですが、近くの「七福」
という名の一膳飯屋に、ほぼ毎日通っています。
この日の夜も七福に行くと、いつもと様子の違う太吉を、主人の娘で店の給仕を
しているおすみが心配します。

おすみと太吉はどうなるのか、という話はさておき、数日後、太吉の店にいきなり
番所から来たという4人の男がやってきて、「かおりという娘をしっているか」と
聞いてきます。
なんと、かおりが料理人の利吉という男を殺した容疑で番所に入れられているという
のです・・・

男に引っ立てられて番所に向かう太吉、そこで定町廻同心と会って話を聞きます。
捕らえているかおりという娘を犯人とは思えないという同心。

さっそく太吉は、利吉を殺した真犯人を探すことに。かつて奉公していた武家屋敷
に出向いて、ご内儀に会って、あるお願いをして、さらに、野菜売りの元締め、
”青菜の泰蔵”のもとへ。

この”青菜の泰蔵”に、例の利吉殺しの一件を話して、犯人探しの協力をしてもらう
ことに。

実直で、仕事の腕も確かで、そうやって人からの信頼を得て、太吉を知る人は、太吉の
頼みを二つ返事で引き受け、それがやがて真犯人に行き着いて・・・

「この人に嘘やお追従は通用しない」
という、現代の日本では絶滅危惧種となった職人、商人、お役人が出てきて、なんとも
気持ちよくなりますね。


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