晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『深川駕籠』

2011-12-12 | 日本人作家 や
もともと、好んで歴史小説を読んでるわけでもないのですが、
傾向としては、教科書に出てくるような有名人(主に武士)よ
りは、市井の人々が主人公の作品が好きだったりします。

そんな中、山本一力の作品は、まさに江戸の下町に暮らす
庶民を描き、今までに読んだものでは「あかね空」は上方
から江戸にやって来た豆腐屋、「損料屋喜八郎始末控え」
では、家具や調理器具といった生活用品のレンタルを舞台に、
いや喜八郎は実際には、奉行所の依頼で隠密調査をする人
なのですが。

『深川駕籠』では、タイトルの通り、駕籠屋さん、今でいう
ところのタクシー運転手ですか。
この深川に住む新太郎と尚平という名前の男ふたり、新太郎
は元は「臥煙(がえん)」という職業、火消しの先陣部隊で、
命知らずとして知られ、町では臥煙と知るや、ヤクザも道を
譲るという、荒っぽい仕事から、なぜか今は駕籠担ぎを。
その相肩(文中では「相方」ではなく、駕籠担ぎから「相肩」
という字を用いてます)の尚平は、房州勝浦の元漁師で、地元
の網元の息子を相撲で怪我させてしまい、江戸の相撲部屋で
力士となるも、いろいろあって今は駕籠担ぎ。

こんなふたりを引き取ったのが、深川に住む木兵衛の持つ長屋。
この木兵衛という老人は、何かと顔が利き、ふたりの身元引受人
になりますが、どうにも「食えないジジイ」のよう。

千住の虎という駕籠担ぎで、のちにライバルになる男や、今戸の
与三郎というヤクザ、飯屋のおゆきなど、脇役の面々が素晴らしく、
彼らのスピンオフ作品も作ってほしいほど。

そして、先述した「損料屋」の喜八郎もちょこっとだけゲスト出演
しているところもまたニクい。

物語は短編形式で、新太郎と尚平がトラブルに巻き込まれたり、
奇妙な「お使い」に筑波山まで行かされたり、鳶や飛脚といった
「足自慢」の人たちとレースをしたり、どれも町の様子や人々の
息吹までもが感じられるような緻密な描写。

で、その鳶や飛脚たちとのレースで、小役人が出張ってきて邪魔
をしてきたり・・・この続編も出てるようなので、楽しみ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 野沢尚 『深紅』 | トップ | 杉本苑子 『冥府回廊』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本人作家 や」カテゴリの最新記事