森口多里さんの「町の民俗」 はしがき に
これは郷土に対する私の愛情と「家」に対する
私の郷愁とを随筆の形式で表白した」ものだ、と。
大正初期から昭和の十八年までに伝承者の一人として
書かれた回顧談である。
「東北地方の生活を調査したものの文章は大抵農家の
陰惨な方面を物々しく伝えている。
そうするのが社会問題研究者の義務であるやうな書振りである。
私はそんなのに反感をもっているので、ここでは「家」の
生活の豊かさを回顧する楽しみを汲むことに傾いた。」・・・
「祖国愛の基礎は郷土愛に在りなどといふ大きなことを
云ふつもりはないが、在京者は郷里といふものを単に調法な
兵站基地のやうに考へ、郷里の定住者はまた偶々の帰郷者を
訳もなく物資鬼集者と見做すようでは、情無い話である。」
戦争真っ只中の昭和十九年に書かれた文章で
水沢の人脈を此処に見た感じである。
水沢は後藤壽庵や高野長英等の人物を輩出したところだ。