路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

思いやりの隙間

2009-05-04 | 『太郎・アコ・しま次郎』
トゲトゲした気持ちでいる時、

不意に誰かの優しさを貰ったり

微笑ましい光景を目の当たりにすると

人は少しだけ優しい気持ちになれる。





煙草屋の前を通るといつも

シャッターが少しだけ開けてある。

ほんの15センチ程の隙間だ。

女主人は独り暮らしだし、

古い家屋には適度に隙間は多いもの。

猫の入る隙間ならばそれなりにありそうだし

物騒な世の中なので戸締りは

しっかりとして置くべきだとは思うのだが、

猫の出入りの為にだろう。






以前なら全く気にはならなかったのだが

猫達を撮影する為に路地を歩く様になって気付いた

少しだけ開いているその隙間が、

私はとても好きだったりする。




気付かなければ出会う事のない風景が

確かにそこに存在すると言う事を

私に教えてくれた「入口」だからかも知れない。





路地を歩くと

そんな「思いやりの隙間」を

時々見付けては

ひとり、にやけてしまう自分がいる。





今日も誰かが猫の為に、

優しく「帰っておいで」と

言ってるみたいに隙間を開けている。

そんな路地には

猫達が丸い背中や尻尾の先に

幸せを付けて帰って来てくれる…




そんな気がして、見ているだけで

幸せな気持ちになれるのだ。












昨日は51位
 ←貴方の思いやりの隙間に、クリック一つ。
昨日は19位
にほんブログ村 写真ブログ フォトエッセイへ ←村にも、そんな隙間があるかもです。




























コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三匹の侍

2007-12-30 | 『太郎・アコ・しま次郎』

煙草屋のシャッターの隙間から、黒い影が動いた。

黒猫のタンゴの様に赤いリボンならぬ赤い首輪をしている。

これはチャンス!とばかりに近付いた。

黒いのの後ろから、少し小振りなキジトラが付いてくる。

ラッキーだと思ったのもつかの間、店の裏庭へと逃げ込んでフェンス越しにこっちを伺っている。

カメラを向けると、窓が開いた。

家の女主人が出てきた。

愛猫を撮影しているのが判ると猫達をフェンスの中から裏の公園の方へ誘導してくれた。



黒いのが『アコ』、向かいのマンションの子供達に時々パンを貰っていたらしいが、

冬に寒くなって自販機の裏で暖まっていたのを彼女に保護された。人馴れしているので

おとなしく背中を撫でさせてはくれるが、子猫の時の栄養事情が悪く一時は病気で大変だったそうだ。

キジトラは『しま次郎』、これまた冬の日に自販機の裏で暖を取っていたのを

『アコ』が連れて来たそうだ。自分と素性の似た奴をほっては置けなかったといった所か…。


雄猫というのは、人間と同様に父猫に限らず師と決めた雄猫に付いて猫生を学ぶらしい。

どうやらキジトラの師は黒いのみたいだ。


ふと、後ろで可愛い声がした。

茶トラの大きな雄猫が姿を表した。三匹目だ。

「あれが一番の古株『太郎』…新入りが気に入らんのか、あんまり家に居着かん。性格は良いのに、ヤキモチかねぇ…」

三匹とも、飼い猫なのに今まで出会ったどの野良猫よりも警戒心が強く寄っては来ない。

女主人と話す私を囲う様に遠巻きに見ている…まるで用心棒。



女主人は三匹の侍を従えた姫君に見えた。

荒野(野良)の三匹が辿り着いた先は、煙草屋の城だったのかもしれない。



 ←煙草屋の城で、学校帰りのアイスを食べたい人はポチっとお願いします。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする