煙草屋の「三匹の侍」達の所へ、久し振りに遊びに行った。
日曜は定休日で、店のシャッターが猫の出入りの為に20cm程浮かせてある。
店の裏に回り込むと、女店主が洗濯物を干していた。私を憶えていない様子だったので、
前に猫達の写真を撮らせて貰った者ですと言うと、直ぐに思い出してくれた。
足元には、随分と大きくなった『しま次郎』が居た。
『アコ』と『太郎』は追い駆けっこに夢中だ。
お隣の屋根まで登り、とにかく派手に騒いでいる。まるでチャンバラ活劇みたいだ。
「アコがしま次郎を連れて来たやろ、今度はねぇホラ、
しま次郎がこの子を連れて来たとよ。」と、
駐車場にある車の後部座席にこっそいり座っている白猫を指差した。
「もう四匹目やろ、これで打ち止めの『とめ吉』たい。」と、明るく笑った。
『とめ吉』も雄猫、縄張り意識の強い雄猫がこれだけ次々と集まって来るこの家は
本当に居心地の良い城なのだろう。(勿論、時々喧嘩はしても、だが)
「犬は人に付き、猫は家に付く。」と言うが、
女店主の笑顔と猫達との関係を見ていると、猫は家に付くのではなく、
「猫は家と人を選んで来ている。」…と思えてならない。
古屋の裏で、洗濯物が揺れる。晴天の空に、女店主の笑顔。
男やもめに蛆が湧き、女やもめに猫が咲く。
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ベランダのモップと化した、ジュリー。
ネット越しに毛長種のはみ毛をなびかせ
差し出した指に噛み付こうとしている。
意外と元気で安心。安心。病気(肝臓病)、早く良くなるといいね。
←凶暴なモップ、ジュリーに愛を!
力強い。
コンクリートを押し上げて花を咲かせるパンジー。
華奢な印象のその花の以外な底力。
『髭男爵』に出会った理容室の前に、
ひっそり、こっそり咲いていました。
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『小鉄』が再び姿を消したのは、川沿いで再会して三日後の事だった。
納骨堂の裏を通る度、『小鉄』の名を呼んでみた。
街頭の明かりに照らされたベンチの上には、
おばあちゃんが置いていってくれた、猫用の餌が淋しそうに盛られている。
おばあちゃんも『小鉄』には会えていない様子だ。
休日の明るい内に、近所を捜索していると、
犬の散歩のおばさんに声を掛けられた。
「小鉄にそっくりなのが家の近所でウロウロしとるよ。見においで。」
教えられた場所へ急ぐと、『小鉄』がそのおばさん宅の前でうずくまっていた。
私に気付くと罰の悪い顔をして近付いて来た。一応、安心した所で、帰る事にした。
次の日、再びおばさん宅へ行ってみると、
川沿い散歩の人達の噂を聞いておばあちゃん迄、『小鉄』を探しに来ていた。
腰の曲がったおばあちゃんがここまで来るのは大変だったろう。
でも何より『小鉄』が心配だったのかもしれない。
しかしその日、おばあちゃんも私も『小鉄』には会えなかった。
昨日の様子では、この家の外飼い猫にして貰っている様だったので、
もう捜す必要は無いのかもしれない。
夜遅い帰り道、 「翌檜公園」 (川沿いの納骨堂からかなり離れた場所)に差し掛かると
「ニャ~ッ!」と声がし、何故かここに居る筈の無い『小鉄』が現れた。
可笑しくて泣けてきた。
私の膝に乗り、直ぐに満足気に丸くなる『小鉄』…。
お前は私を捜してここ迄来たのか?
猫に口が利けるのならば一度、訊ねてみたい。
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「四丁目の夕日」ではなく、
本当に、四丁目の夕日なのです。
レンタルビデオ屋の帰り道、
ふっと見上げた空の色。
すぅっと延びた飛行機雲の行方は、
…明日の空へ続いているのかもしれない。
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おばあちゃんと小鉄。
毎日、夕方になると川沿いに会いにくる。
師走の寒さに、川沿いに居られなくなったのか…、
猫も定期的に人事異動(猫場異動)があるのか。
逃亡者、小鉄。
ちゃっかり犬の散歩のおばちゃんの家に紛れ込んでいる。
そいつは、友達かい?恋人かい?
とぼけるのが上手いので話にならない。
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家路を急いでいた。
ネット接続の為、電話会社から書留郵便が送られて来る予定だったからだ。
明日には接続工事の人が来るので、今日の内にその書類が手元に無いと困る。
いつもならゆっくり猫の居る路地を散策しながら帰る所を、家まで最短距離で行ける道を選んだ。
少し小走りになっていた。
『小鉄』が居る納骨堂エリアから少しずれた川沿いを急ぐと、平屋の空き家が見える。
小さな庭とブロック塀にチェーンが架けてある。
その玄関先に猫の影が見えた。
大きい。 『影虎』だ。
久し振りの再会に嬉しくて、急いでいるのも忘れてしゃがみ込んで『影虎』を呼んだ。
「ニャ~ッ」と可愛い声で短く鳴いて、そっと近付いて来た。
やっぱり『影虎』だ。慌てて何か食べるものを探す。
「憶えていてくれたか?元気だったか?ご飯ちゃんと食べてるか?どうしてここに居る?」
口の利けない猫に、ついつい矢継ぎ早に質問攻めにしてしまのは
『影虎』は言葉を理解しているからだ。
相変わらず、「食べて良いよ」と言われないと口を付けない。
黙々とドンブリ飯をかき込む武士の姿に惚れ惚れしながら、
「拙者は道を急ぐ、又会う日迄、達者で居てくれ。」と、
頭をポンポン撫でて立ち上がった。
『影虎』を背後にしながら、急ぎ足で帰る途中
今日私が急いでここを通る事も、
何の為に急いでいるのかも、
『影虎』は全部知っていてあそこに座っていた様に思えた。
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いつも店の前の煉瓦塀の上でくつろぐミーディ。
時々、近所のスーパーの駐車場で偶然会ったりする。
一匹でここまで来たのか…?不思議な奴だ。
確かに行動半径は狭くても、
片目が不自由なのはあまり問題ではないのかもしれない。
最近、薬屋は改装して外観も内装も美しく変身しています。
それはそれで、似合ってますけど。
またたびでメロメロになったミーディは時々別人です。
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時々、近所のスーパーの駐車場で偶然会ったりする。
一匹でここまで来たのか…?不思議な奴だ。
確かに行動半径は狭くても、
片目が不自由なのはあまり問題ではないのかもしれない。
最近、薬屋は改装して外観も内装も美しく変身しています。
それはそれで、似合ってますけど。
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川沿いで『小鉄』を膝に乗せていると、携帯電話が鳴った。
電話の音が嫌いな『小鉄』は迷惑そうな顔をして膝から降り、川へと水を飲みに行った。
電話の相手は某出版社の方だった。
街に出た時偶然立ち寄った出版社で、その時は写真だけを見せたのだが、
エッセイを書いてみては?と言われ、早速5~6話を書いて送ってみた所、
担当の者が変わったという連絡の電話だった。
その時は知らなかったのだが、悪質な詐欺とネットで噂になっている出版社だった。
騙されたと言う人も、本(商品)は出来ているのだから詐欺ではない。商法なのだ。
私の出版費用は百万円と言われた。
見積書を見ても、何に幾ら使われるという詳細は無い。
百万円は高過ぎると言うと、幾らなら出せるのかと言う。
半分迄なら…と言うと、再び半分の金額の詳細の無い見積と、誤字の多い手紙を送って来た。
正直、笑ってしまった。
勿論、本にする気など猫の写真を携帯カメラで撮っている時点で既に無かった。
誰か他人の意見が聞きたかったのだ。
そもそも、私が行く所を間違えていたのか…いや、間違えてはいない。
例え、営業的意見でも「書いてみては?」と言ってくれた出版社の方にも感謝だ。
私は写真家じゃないし、物書きでもない。ネットも敬遠していた。
何か(猫)に導かれる様に書き始めたのは、昨年の夏からだった。
で、昨秋自宅PCで印刷・製本、本(ほんの数冊ではあるが…)が出来た。
年末には繋いでいないPCを繋ぎ、ブログを始めた。
猫の力は本当に、凄い。
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『小鉄』が消えた。
師走に入り、急に寒くなったので、ねぐらから出て来るのがしんどいのかと思っていたら、
おばあちゃんも会っていないと言う。
優しい奴なので、寒くなったし迷惑を掛けまいと姿を消したのか、
可愛い雌猫を見付けて旅に出たのかもしれない。
出会った時から既に成猫、拾われる可能性は少ないが
不思議と愛嬌のある猫なので家猫に転身したのかもしれない。
川沿いで犬の散歩をする人達も皆、心配してくれていた。
一週間と一日目、夜遅くなった帰り道、納骨堂の裏で『小鉄』の名を呼んだ。
何の返事も無い。諦めて歩き出す。公園に差し掛かると後ろで声がした。
「ニャ~~ッニャ~~ッ!」
振り向くと暗がりの中、丸い背中が必死で私に向かって駆けて来る。
『小鉄』だ。
久し振りの再会に嬉しくて、膝に乗せてもみくちゃに撫でていると
『小鉄』の心配をしてくれていた犬の散歩のおじさんが通りかかり、
「やっと戻って来たね、小鉄がここに居らなみんな心配するやろ~」と、
『小鉄』の頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。
おじさんは私の名前も知らない。縁もゆかりも無い。
でも、犬の名前は『ムック』…これが普通で、これが日常。
私が知らない人達迄、何故か『小鉄』の名前は知っている。
ここ(川沿い)の噂は、インターネットよりもきっと、早い。
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