その日、私は急いでいた。
『直人』と『チビ』に挨拶もそこそこに
公園を足早に通り抜けた。
日も暮れかかる時間帯、
後ろから視線を感じながら早足で歩いていた。
しまったな~。何処までもついてくる。
振り向くとまん丸な『逃亡者』の目がこっちを見ている。
立ち止まると後ろも止まる。まるで影みたいだ。
追い返そうと追い掛けてみても、気が付いたら
『小鉄』が以前いた納骨堂の前までついて来た。
もう辺りは暗く街灯が灯り始めていて、
煙草を吸いにベンチに来ていたおばあちゃんも
もう店じまいとばかりに団地の中へ帰ろうとしていた。
慌てて私は声を掛けたが、耳が遠いおばあちゃんは
なかなか止まってはくれない。
「おばあちゃん、こ・ん・ば・ん・わ!」
漸く止まってくれたので、
私の「追跡者」である『逃亡者』を紹介する事にした。
『小鉄』と会えなくなっていつも淋しそうだったおばあちゃんは
暗がりに隠れた猫を見て満面の笑みで応えた。
煙草をしまってある小さなバックから煮干を取り出し
子供の様な笑顔で「食べるかな?」と私に尋ねた。
それは多分、『小鉄』の為に持っていた煮干。
ずっとバックにしまって置いたのであろう、ボロボロの煮干を見て
私は何だか胸が熱くなった。
今日は何位?
←おばあちゃんの煮干に、クリック一つ。
村では何位?
←村にも煮干はあるかな?