路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

道 程

2015-07-07 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』






彼の旅は、実家の近所のお宅の勝手口の以前から

既に始まっていたのだ。




次に出くわしたのは遥か遠いお宅の玄関先。

長老ならではの知恵と天性の愛嬌で

数々の場を切り抜けてきたのだろう。

最初に出会った時からすれば

みるみる痩せて、毛の艶も減り

背中の骨が触ると解るほどになった。

受け口だった下の牙も抜けてしまったが

結構高い塀の上に居たりする。




しかし、『灰縞さん』の凄い所はそれだけではない。




いつも出会う場所は違えど、

必ず猫を飼っているお宅の近所に

新居(居場所)を構えていることだ。

猫を飼っている(=猫好き)人がいるという事は

必ずご飯のおこぼれにありつけるという事を知っているのだ。

恐らく人間の私よりも正確な猫の住所録を

既に頭の中に持っているのかもしれない。




猫は歳をとると人の言葉を理解し

猫又になるという伝説があるが、

「元気だった?久しぶり!」という

私の言葉をちゃんと理解しているようだ。

律儀にも挨拶をする為に高い塀から降りて来る。

そして、私の周りを感謝の儀式の様にグルグル回り

再会を喜ぶ旧友のように挨拶してくれるのは

やはり人の言葉を理解しているからとも思える。




そんな彼が快挙を成し遂げた。終の棲家を手に入れたのだ。

猫を飼っているあるお宅の玄関先にいたのを発見した時の事、

いつもの様に塀の上から律儀に降りて来る姿が見える。

頭を撫でると、彼の首には可愛い赤色の首輪が付いていた。




私は彼の様に、例え長い道程になろうとも

確固たる自分の居場所を作る事が出来るのだろうか。















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猫の怪談

2013-05-15 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』



猫の怪談といえば、猫又という怪談話をご存知の方も多いと思う。


「山に猫又という化物が出没するという噂を聞いた僧侶が
 夜遅く迄続いた連歌を終えた帰り道で一人、何かに襲われた。
 これが噂に聞く猫又かと肝を潰して小川に逃げ込み悲鳴を上げた。
 その声を聞いた近隣の住民が松明を持ち現れると、
 そこにはびしょ濡れの僧侶が怯えていた。

 しかし、実は僧侶の飼い犬が
 暗いけれど飼い主とわかって飛びついただけだった…おしまい」


「化け猫」は良く懐いた飼い犬だったという、

フタを明ければなんとも落語のような滑稽なお話。

しかし、僧侶に噂を流した者が夜道を一人で帰る僧侶の後をつけ、

その先回りをして凶暴な犬を放ったのだとしたら、どうだろう。




お話の内容があっという間に、悪意とバイオレンスを孕んでくる。

その流言や噂が真実ならばまだしも、

世間話の多くは「でっち上げ」だったりして始末が悪い。

「伝言ゲーム」がいい例で、誰もが正確に伝えたつもりでも

情報は歪んで伝わるもの、そう自覚して噂話を聞く方がいい。

人の会話というのはそもそも万事に近い程、

「人の噂」と「人の批評」と「お節介な忠告」というデータもある。

建設的な方向へ向かない話は所詮、ムダ話なのかも知れない。

もしその中に「悪意」のある嘘が混じっていたら…

僧侶は小川でびしょ濡れになるだけでは済まない。




事態をややこしくする為に、もう一人登場人物を増やすとしよう。

僧侶に嘘の噂を伝えて狂犬を放った人物の行動の一部始終を

僧侶本人に伝えに来た第三者がいたとすればどうだろう。

何だか、物語がチープなミステリー小説みたいになってきたが

倫理の熟さない世の中や物語の中には、この手の人物が普通に存在する。

味方に思えた第三者が実は主犯で、猫又の噂と狂犬のくだりを仕込んだのは

その第三者だった…となると、な~んて無粋な話だろう。

もうここまで発展させると、僧侶の職業意識の低さや

そこまで嫌われる僧侶の人格や行動にも

焦点を当ててみたくもなるが、話がブレまくって収集がつかない。




話を猫に戻すが、出会ってから結構な時間を経ているにも関わらず

生粋の野良猫『白石さん』は一向に懐いてくれない。

きっと子猫の頃から「人間には気を付けろ」と

しっかりと母猫に教え込まれたからだろう。

我々人間は、嘘を見破れない夜道で冷静な判断力を要求される。

忍び寄る悪意の「猫又」と、自身の心に住まう「猫又」の

両者の正体をしっかりと見極めず、

この世の中を歩くのは実は怪談よりも怖い事かも知れない。












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白猫の色

2012-07-26 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




一口に白猫と言っても、猫も十猫十色。

色んな猫がいる。

私が出会う路地猫の中でも

人と同じく、様々だ。




猫にだって固体差があるし、

あくまでも、その人の個人的見解というか

少数派の統計だとは思うが、

複数色の混じった柄の猫は気性が荒く

単色の猫は比較的穏やかな性格で優しいと言う話を

聞いた事がある。

私の知る中でそれに該当するのは『米』ぐらいで、

同じ白猫でも毛長種はかなり気が荒い気がする。

『白豆』はビビりだったし、

付き合いは長くとも絶対に人に懐こうとしない

『白石さん』はとっても凶暴。

それに比べて、煙草屋の末っ子の『ナナ』ちゃんは

ビックリする位、人の言葉を理解するとっても賢い看板猫だ。




話は猫から大分外れるが

私は「何色が好き?」と言う質問には答えられない事が多い。

色と言うのは、大抵組み合わせで好き嫌いが決まるのだ。

色は一つ一つ、全て美しい。

これは、人にも言える気がする。

個人(単色)では良い人であっても、

企業や集団(組み合わせ)に寄っては良くも悪くもなる。

要は、組み合わせが大切なのだ。





作られたイメージで

好きな色を作らないし、嫌いな色を作らない。

それは先入観で

嫌いな人を作らないし、好きな人を作らない事と

同じかも知れない。

心の狭い自分にはなかなか出来る事ではないが、

ニュートラルなスタンスで人(色)に出会った方が

新しい発見があったり、

何より、自分が楽になれる気がする。





人より猫贔屓だからという訳でもないが、

人は混ぜれば混ぜる程黒くなる

「色の三原色」で成り立っていて、

猫は混ぜる程に白くなる

「光の三原色」で成り立っている気がしてならない。












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謎解きは猫まんまの後で

2011-11-20 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




夜になると、必ず寄る場所がある。




以前は『栗坊』と『白子』が、

最近では『灰縞さん』と『白石さん』が

良く出没するスポットだ。




お天気の具合にも左右されるし、面白いくらいに規則的でもなく

晴れていたって気まぐれに(猫なので)来ないこともあるのだが

気になって必ず通るようにしている。




その時々の猫なりのブームで

出没ポイントが50m規模でずれるのが特徴なのだ。

その日は、小さな休憩ベンチのある公園に居た。

何処に居ても、暗がりで私を見付けると、

必ず『灰縞さん』が坂田利夫ばりの「お迎え走り」で

トテトテとやって来る。

私に辿り着いたら、早速先導役をしながら

『白石さん』の待つベンチ下のポジションへ誘導されるのだが、

今日は『灰縞さん』がお迎えに来ない。




「どうしたのかな?」と一人歩いて近付くと

2匹で仲良くお皿(プラスチックのお菓子のトレイに)を並べて

(真ん中にはプリンの空きカップにお水を並々と入れてあった)

それはそれは、素敵なディナーの真っ最中だったのだ。

ウケ口で歯並びの悪い『灰縞さん』を気遣ってか、

柔らかなウェットタイプとカリカリタイプを

混ぜた高級な猫まんま。

食べやすくて美味しいご飯を前に、

私の事など振り返る気持ちにはなれなかったのだろう。





「誰かの差し入れかな?良かったね。」

頭を撫でると『灰縞さん』は私に頭を押されたのを良いことに

『白石さん』のお皿に顔をつっこんでワシワシ食べては

彼女のご飯の邪魔をするのだ。

可笑しくも、微笑ましいディナーを見ながら

「しかし、一体誰がこんなご馳走を用意してくれたんだろう?」

と、不思議に思った。

以前、この近くで「猫の人」に会ったが

複数の人が猫に会いに来ると言っていたので

その内の一人なのだろう。





「おばさんの目は節穴でございますかにゃ?」





このディナーの準備をしたのは一体誰だったのか

真相は謎のまま

猫達のディナーは、私の足元でミシミシと進んでいた。








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雲の糸

2011-06-15 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』






沖縄は梅雨明けしたというのに、

九州北部は連日の長雨で

少々うんざりしていた。



長雨にストレスを感じるのは

何も人ばかりではない様で、

極度に濡れるのを嫌う猫たちにとっては

食糧調達が出来ない日が続く、

ある意味、死活問題でもある。

そんな梅雨の中日には、

腹を空かせた猫たちが、少ない陽を浴びる為に

濡れた地面を厭わずに、外を歩いていたりする。



そう言う私も、まとめ買いをするべく

買い物に出ていた。

昨夜の明け方からの土砂降りで、

漸くあがった雨は路面にいくつも水溜りを作っていた。



それを避けながらの不自然な蛇行を繰り返す帰宅途中、

『灰縞さん』に出会った。

彼は私に会えたのを喜んでいたのか、

雨が降った事(私が降らせた訳ではないが)を怒っているのか、

「ニャーォ」と「シャーッ」を交互に繰り返し

愚痴とも不満ともとれる鳴き声をあげながら

私の周りをグルグル歩き回った。

何を訴えているのかは解からないが、

「うん、うん。そうだね、雨は嫌だよね。」と、

声を掛けながら撫でていると

「シャーッ」の声が減っていった。




翌日、梅雨の中日はかろうじて一日続いた。

昨日と同じ場所で今度は『白石さん』に出会った。




すると、不思議な事に『白石さん』は

真っ直ぐに私の足元に擦り寄って来て

「ニャー」と小さく鳴いた。

気位の高い彼女はいつも私が手を出しただけでも激怒するのに、

余程この長雨が辛かったのだろう。

「なりふり構わず」な姿が、少し切なかった。



思わぬ窮地や、過度なストレスは

穏やかな人を怒りっぽくし、気位の高い人を弱らせる。

人と猫で決定的に違うのは、「自ら命を絶つ事」と

無意味に「互いを殺し合う事」かも知れない。




空から落ちた幾千、幾万の雲の糸は決して天に続く道ではないが

我々の命を繋ぐ「恵み」でもある。









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ココでないドコカ

2010-12-01 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




『栗坊』が姿を消したのは、つい最近の事だ。




いつもの場所に遊びに行っても

とっつきにくい『きつね』が車の下から顔を出すくらいで、

たまに『白石さん』にも出会う。

薄暗い時間帯だと、

白猫だと解かるが顔がはっきり見えないと

見分けが付かなかったりする。




あの白猫希望の女性との会話を聞いていたのか

家猫になるにはここにいても不利だと悟ったのかも知れない。

そうじゃないにしても、

『栗坊』はこの場所を去った様だ。

体は小さいけれど、雄猫なので

いつかは遠くに去っていくと思っていたが、

こんなに早くに居なくなるとは。





いつも屋根の上で仲良く眠る姿が、

寂しそうな『きつね』の姿だけになり、

その内、急に冬型の寒気が押し寄せて

屋根の上では日差しのある日中でも寒い様子で

その白い背中も見えなくなった。




思えば最近、『きつね』に夜道で出会わない事に気が付いた。

彼女は雌猫だし、そう縄張りも広くはない筈なのに。




一度、誰かの温もりを知ってしまうと、

この冬の寒さと寂しさはとてつもなく、辛い。

『きつね』も、『栗坊』を追って

ココでないドコカへ

旅立ったのかも知れない。








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近くて遠い家

2010-11-12 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




夜の帰り道、薄暗い駐車場の街灯の下に

可愛い子猫のシルエットが浮かんでいた。

『白石さん』の息子の『栗坊』だ。



思わず立ち止まって遊んで帰るのが

ちょっとした日課になっていた。

その日もちょっと立ち寄るつもりでいると

駐車場の奥のマンションから女の人が駆け寄って来た。

話してみると、以前「猫の住所録」に登場した女性だった。

どうやら、かなり近所にお住まいだったらしく

毎日私が通るのを知っていて声を掛けて来たのだ。





「猫に用事のある人」に声を掛けては会話を楽しんでいる様子で

私の他にも数人、ココの猫達に会いに来る人が居るらしい。





『栗坊』には兄妹猫の『白子』が居たのだが、

不幸にもこの近所で交通事故で亡くなったと、その女性から聞いた。

道理で、いつもの屋根の上のメンバーが随分と寂しくなっていた訳だ。

白い猫が大好きなその女性は、

『白子』を家族にと思っていたらしいが

残念な事になってしまった。

そもそも、あの『白石さん』の性格を受け継いだ『白子』は

とても警戒心の強い猫で、人間が近付くのすら

一苦労だったので、捕まえる事はまず無理だったとは思う。

どちらかと言えば、この『栗坊』の方が

好奇心が強い分、ある程度時間を掛ければ可能な気がする。




どうしても「白猫」「子猫」にこだわるその女性は

私の母に近い年齢、「子猫」を飼うよりも成猫の方が

向いている気もするのだが。

どっちにしても、私の知っている白猫達はもう成猫だし

希望に見合う猫の住所を教える事は叶わなかった。




白くはないけど、とても可愛い顔をしているのに

『栗坊』の家路は、とても近くて遠いままのようだ。







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他人の二人

2010-10-27 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』






自宅から見下ろせる、とあるお宅の屋根に

いつも猫たちがたむろする屋根がある。



まるでローテーションでも組まれているかのように

日に寄って違う猫がいたり、連チャンで同じ猫が

ゴロゴロと寝ていたりする。

ある程度の距離(パーソナルスペース)を保って

ポツン、ポツンという具合に。

勿論、極端に熱い日、寒い日や雨の日は別だが。





『白石さん』の子供の『白子』を見掛けないなと思っていたある日、

屋根の上で白い猫と『栗坊』が寄り添って眠っていた。

『白子』かと思っていたが少しサイズが大きい。



良く見ると、『きつね』だった。



『きつね』はちょっと可愛そうな奴で、

たまたまなのか、運が悪いのか、いつも貧乏くじを引く

人に危害を加えられやすい猫で

体のあちこちに不信な傷が沢山ある。

得に顔、猫の可愛いふぐふぐ(髭のふくらみ)が

右側だけ無い。

どんな風に傷付いたのかは解からないが

人間を異常に嫌う癖は、その辺りに原因があるのだろう。

夜に自転車でご飯を持って来てくれる女性がいて

以前、その人には結構懐いてはいたが、

不運が高じて、またバカな誰かに悪戯されたらしく

その女性も再び警戒されているみたいだ。




いつも独りで、群れるタイプの猫ではなさそうだったが

親離れしたばかりの寂しん坊の『栗坊』とは何故か波長が合うらしく

全くの他人(他猫)なのに互いを舐め合い、

落ちる寸前の西日を全身に受けながら

やがて来る夜の冷たい風に備えるように

互いに温め合って眠っていた。




こういう光景を見ると、何だか解からないけど

やりきれなくて悔しくて、バカみたいに泣きたくなる。

弱い者は弱い者同士、それでも、寄り添って力強く生きている。







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姥捨て山

2010-08-06 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




『白石さん』親子の居た屋根の上に、

時々現れる茶虎の雄猫がいる。

始めは、近付く事は許しても撫でさせる事は許さない

白石さん』タイプかと思っていたが、

気を抜いた隙にヒラリと撫でると、ビビリながらも逃げない。

「ニャー」と言えば、「ニャー」と返事をする等…

こいつは何処かで飼われていたんだろうな…と、

何となくそう思った。

 



歳を取ったら山に捨てる「姥捨て山」みたいな飼い主がいる。

猫の性格上、家出がもとで帰り道が解からなくなった子もいるかも知れないが

飼われていた形跡を感じる猫に出会うと不憫に思ってしまう。

昔話の「姥捨て山」では、

息子が老母を捨てきれずに自宅の地下に穴を掘って匿うのだが

孝行息子の行いと老人ならではの知恵で山に捨てられずにすむというものだ。




昔話はその昔、夕餉の後に囲炉裏の前でその家の長老の語りを

家族で楽しむエンターテインメントだった。

ちょっと前に流行った「本当は怖いグリム童話」とか

昔話の残酷さだけを際立たせて、

教育上よろしくないだとか言うトンチンカンな親御さんの意見で

随分と焦点のぼやけたお話に作り変えられたものを聞かされた世代は、

幼稚園のお遊戯会で魔女が居なくて白雪姫が何人も居るという

ちょっと変わったお芝居をやっているらしい。




現代のエンターテインメント、テレビのニュースでは

自宅にミイラ化した老人を匿い

高額な老齢年金を家族が受け取っていたという話や、

育児を放棄した母親が二人の子供を餓死させて

ワンルームの部屋で一部ミイラ化していたとか

残酷な昔話よりも残虐な現実が

夕飯時のリビングルームで当たり前の様に流れていたりする。

何が教育上よろしくて、何が教育上よろしくないんだか

もう、解からなくなっているのかも知れない。




だから私は、

隙を見てヒラリと撫でては、ビクッと怯える猫の背中に

昔話の中に確かに存在する「生きる知恵」をふと、思い出すのだ。









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白猫の子育て

2010-07-12 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




俗に、「白猫は悪い母親」と言う説がある。



これは、

一見、子猫の鳴き声を聞かず

子猫の危険に気付いてやれない怠惰で不注意な母に見えなくも無いが

実は白猫で碧眼の組み合わせを持つ白猫は耳が先天的に悪いという

独特の遺伝子を持っているからという説の事だ。




そう言えば、路地で出会う猫の中には

白猫の碧眼という組み合わせを、余り見ない気がする。

外で生きる路地猫達の中には、哀しい事に

不遇の身は自然と淘汰されてしまうからかも知れない。




我が家のマンションの外装工事の為の足場が最近漸く撤去された。

北の窓から見える、とあるお宅の屋根上の猫の溜り場に

小さな影が動いた。

白地に茶色の焼き後が付いた栗饅頭の様な小さな子猫だった。

辺りの音に警戒しながらするすると屋根と屋根の隙間に

入り込んで行く姿が可愛らしい。

ふと気が付くと、栗饅頭だけではなかった。

ちんまりとした白い饅頭が、

今栗饅頭が入った隙間からスルリと出て来た。




子猫が2匹いるな。

あそこに居るって事は、『白石さん』の子だろうか。

ちまちました姿を見て思わずニタニタ笑ってしまった。




その日の夕方、

いつもの帰り道を通っていると物陰に『白石さん』の気配が…

ちょっと挨拶をしようと覗き込んだら彼女の後ろに

ちんまり可愛い子猫の瞳が4つ見えた。

「お!」

と、心は高鳴ったが澄ました顔の『白石さん』の態度は

相変わらずだった。




その後、『白石さん』と子猫達は屋根の上から消えた。





懐かない『白石さん』が見せてくれた

子猫達の路上デビューだと思っていたのだが、

あれは、単なる「引越しの途中」だったのかも知れない。

子育ての為により安全な場所へ、

賢い母さん猫の『白石さん』は、薄いグリーンの瞳をしていた。








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ワクワクの気配

2010-04-04 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




その日、買い物に出た私は何かの視線を感じて

顔を上げた。



案の定、塀の上に見慣れない茶トラの可愛い雄猫が居た。

その塀は背の低い私が背伸びをしてやっと

掌が塀の上に届く程度の高さにある。

目が合った私に警戒しているのか

自分が逃げる距離を計りながらきびすを返した。

(勿論、私が必死で追っても追えない位置にあるのだが)



その塀の上は良く『白石さん』が常駐している事もあり、

猫の通り道になっている様子だ。

時間もあったし、少しでも仲良くなりたい私は

常備している撮影料を先払いで塀の上に献上してみた。



が、茶トラくんは気難しく、良い匂いのする撮影料には

目もくれず、今来た塀の上をきびすを返して行ってしまった。



翌日、日も暮れかかった夕方

その道を通ると塀の上に猫の光る目とシルエットが見えた。

又、あの茶トラくんかもしくは『白石さん』かな?と思って

近付くと『灰縞さん』だった。



彼は、前日に茶トラが忘れて行った撮影料をちゃっかり平らげ

ついでにココで待っていれば私に会えると思ったのか

ワクワクしながら待ち伏せていた様だ。



不思議なもので、私は人に脅かされる時に

脅かそうとしている人がワクワクして隠れている気配に

直ぐに気付いてしまう事がある。

所謂、「勘」って奴かも知れないが

女の勘よりも、野生の勘に近いものだ。

脅かそうとしている人からは

ちっとも面白くもない奴だが、猫の気配を探す時には

意外と役に立っている。



人も猫も同じなのだ。

「ワクワクの気配」って奴は。

雄の方が気持ちの波動が大きいから直ぐに解かるみたいだ。




だからかも知れないが、

白い刺客、『白石さん』(雌)にいつも闇討ちに遭っている。








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刺客

2010-02-19 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』




それは、昼間。ブラっと散歩に出た時の事。

クリーニング屋さんの裏で

ばったり『白石さん』に会った。

フェンス越しの彼女は警戒しながらも

結構近くまで来てくれた。

挨拶代わりに、写真を2~3枚撮らせて貰った。




その日の夜、いつもの裏道を通って家に帰る途中

何匹かの猫と遭遇したが『白石さん』には会わなかった。

マンションの裏手の入口に差し掛かった時

白い影が動いて、私の前に躍り出た。




『白石さん』だ。




何処からつけて来ていたのか解からないが、

まるで白い刺客のように

危機迫る様子で

私を呼び止めようとしているようだった。





「ここは松の廊下か?私は吉良か?」

と、文句も言いたくもなるが、

夜道に足止めをくらうのは

かなりの確立で

この白い刺客(『白石さん』の事)が多い。

ここでも言うが、

『白石さん』は私に懐いてはいない。

決して触れさせる事を許さない高貴なお方だ。




でも、淡いエメラルド・グリーンの綺麗な瞳が

ブラックホールの宇宙で一杯になった彼女の瞳に抗える程、

私は強くはないのだ。




今宵も少しの間、

猫との付き合いを大切にしたいと願う限りである。








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 お早めにご連絡下さいますようお願い致します。

 のんち。さん、ご連絡ありがとうございます。
 早速送らせて頂きました。




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猫の住所録

2010-01-14 | 『灰縞さん・白石さん・栗坊・きつね』


買い物の帰り道、久々の昼間に

『灰縞さん』と『白石さん』にばったり出会った。

私は嬉しくなって、

荷物を置き去りにしたまま遊んでいると

後ろから声を掛けてくる女性がいる。





「うわ~、猫ちゃんがいるの?」

嬉しそうにその女性は声を掛けて来た。

猫の知り合いでもなさそうだ。




フレンドリーな『灰縞さん』は私の傍から離れないが

警戒心がいっぱいの『白石さん』は塀に隠れて見ている。

が、女性の興味は『白石さん』の様子で

どうしても仲良くなりた気な雰囲気だ。

以前飼っていた猫が白猫だったから、らしい。




好みのタイプというか…そんなモノがあるとすればだけれど

人と同じで、特に嫌な思い出でもない限り

同じ様な人(柄)を好きになるものかも知れない。

まぁ、飼い猫に良い思い出こそあっても

嫌な思い出なんて、そうそうある訳もないが。



私の母に近い年齢であろうその女性は

子供の様に目を輝かせて猫を覗き込んでは、

「私ねぇ、仲良くなりたくてニャ~って言って近付くんやけど、

 いつも逃げられるんよねぇ」

と、残念そうに言った。




多分、動きと姿勢と目線の高さだろう。

意外と自分の家猫としか接していない人は

案外勘違いをしている人が多い。

種族が違うのだからやはり、外猫のルールに従うべきだろう。




「二匹とも綺麗な猫ね、やっぱり子猫のうちは可愛いもんね」

この白猫が子猫だったら、

家に連れて帰りたそうなニュアンスでそう言った。




急用を思い出した私は

立ち上がり、挨拶をして彼女と猫達と別れ、

足早に帰る道すがら

白い子猫の分布図を思い描いた。




いつか再びあの女性に出会えたら、教えてあげよう

…猫の住所録。

路地の白猫が、幸せな家猫になれる事を願って。









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