先日、久々にバスに乗った時の事。
はじめての路線だったため緊張気味で入り口近くの席に座っていた。
バスの運転手さんのアナウンスに寄ると、このバスは15分程遅れているらしい。
次のバス停でバスが止まった。
乗車口のドアが開いた途端、バス停に立っていたおばあさんがおもむろに、
否、唐突に手に持っていた傘を乗車口に投げ入れた。
ガタン、ドタン。
勢いよく傘が転がり、乗客全員が固唾をのんだ。
その次に、おばあさんは持っていたコロコロ付きの座れるバッグを
乗車口の一段目にドカッと置いたと思ったら、今度は手を伸ばし
前かがみになって両手を乗車口の一段目にのせながら動ない足を
無理やり引きずりながら四つん這いになって登り始めた。
その時、はじめてこのおばあさんが足が悪く段差を上る為に
先ず、傘を投げた事が理解出来た。
私が慌てて手伝おうと腰を浮かせた所で
斜め後ろにいた若いスーツ姿のお嬢さんが素早く立ち上がり、
おばあさんの傘とコロコロ付きのバッグを持ち上げ、席に移動しながら
「手伝います」と小さな声で話し掛けていた。
おばあさんは大きな声で「傘は?」と聞きながら椅子に座った。
脚の悪い人にとってはバスに乗り込むにもこんなに苦労するのだなと改めて考えた。
バスの乗車口には構造上、手すりがないし段差が大きい。
扉に捕まろうにも折り畳まれているのでかえって危険だし
最近はフラットステップのバスもあるが、数が圧倒的に少ないのが現状だ。
タクシーを頻繁に足として使える程余裕もない、そんな老人は足が悪かろうが
這ってでもバスに乗らなければやっていけない。
恐らく、このおばあさんは独り暮らしで、誰にも頼らず生活しているのかも知れない。
独りだと尚更、誰かに助けを求める前に自分で出来る方法を考える。
なりふり構わず、窮屈でも生きて行くのが自然な姿なのかも知れない。
でも、困っている人を自然に助けてあげられる人がそこいらにいる。
色んな意味で、人を頼る事の大切さも感じた出来事だった。
このおばあさんの「先ず傘を投げる」行為が誤解を生む事もある。
おばあさんが席に付いて、乗客全員がホッとした所でバスが動き出した。
次の駅に差し掛かろうとしている時に、
私の前の席の女性が抱いていた赤ん坊が、微かに泣いた。
本当に微かな声で。
運転手さん「あのぅ…、どなたかペットを乗せておられませんか?」
母親 「いいえ、赤ちゃんです」
運転手さん「あぁ!スイマセン。本当にスイマセン。鳴き声が聞こえたと思って…」
母親 「あはは、大丈夫ですよ」
必死に謝る運転手さんに、乗客全員が笑った。
世の中ギスギスしてる事も多いけれど
何となく、世の中捨てたものでもないのかもと思えたバスでの出来事だった。
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