今日は趣向を変えて聞いた猫話を書いてみよう。
私の父は自宅からちょっと離れた場所に
小さな家庭菜園を持っている。
そこには様々な野生動物がやって来ては
丹精込めて育てた野菜達を熟す一歩手前で
こっそり奪っていく。
その悔しさから、案山子を作ってみたり
電熱線を張りめぐらせてみたり、
簡単な罠を仕掛けてみたりしていた。
ほぼいたちごっこだった野生動物との戦いは
結構長いスパンで繰り広げられているのだが、
3度程、簡易罠にタヌキが掛かっていたことがある。
罠を掛けた本人が、タヌキの顔の可愛さに
結局山に逃がしてやっているので
あまり意味のないものでもあるのだが。
父曰く、
「あのタヌキは同じ奴だった。何度も罠に掛かるとは
ちょっとお馬鹿な奴かも知れん…」と言っていたが、
私は違うタヌキだと思っている。
ある日、父がいつもの様に軽ワゴン車から
畑仕事用の道具を出して、
車の扉を後ろも座席側も開け放したまま作業をしていると
いつから乗り込んでいたのか可愛い三毛猫が
後部座席にちゃっかり座って
父の働く背中をじっと見ていた。
いくらドアを開け放していたとしても
まさかココに乗って来るとは思わなかったので
父もビックリしたらしいのだが、
振り向いた父の顔を見て三毛猫は
「あ、間違えた!」とばかりに
きびすを返し後部座席の背もたれを飛び越え
開いていた後ろの扉からぴょんと飛び降りて
そそくさと逃げていったそうだ。
父には畑友達のNさんという人がいる。
背格好も年齢も同じ位のNさんは大変な猫好きで、
近所に住む猫が時々畑に遊びに来るという。
どうやらその三毛猫はNさんだと思い、
車の後部座席に座って父の畑仕事が終わるのを
じっと待っていたのではないだろうか。
実に可愛い、猫の「人違い」である。
振り向いた顔がNさんと違ったので、
慌てて三毛猫も逃げたのであろう。
毎日会っていれば間違えることも少ないだろうが
たまにやって来る人なので流石の猫も間違えたのだ。
後部座席にちゃっかり座って、振り向いたNさんが
喜ぶ姿を想像していたかどうかは解からないが
猫の、自己演出の上手い強かなちゃっかり者と
人違いをするうっかり者の姿が伺える話である。
昨日は?位

昨日は?位
