前記事の続き
時刻は15:10
空港ターミナルを出てタクシーに飛び乗り運転手に「離島ターミナルまで。15:30に間に合いますか?」
運転手さん「あぁギリギリですけど、たぶん大丈夫でしょう」と車を港に向けて走らせます。
移動中、安栄観光に電話を入れます。
(私)「えーっと波照間5便、今日は出ますよね?予約してるんですけど乗れますか」
(安)「ええ乗れますよ」の答えに、
(私)「必ず乗りますから、今、タクシーですから」としつこく念を押しておく。
当初、順調ならば途中でサンエーかマックスバリュに寄って買出しをしていこうと思っていたのですが、港へ直行でも際どい時間になってしまいました。
そもそも、今日のこの5便は100日以上前にネットから予約してあった便なんです。その時から3ヶ月を経て、まさかこの便が欠航が続いた後の再開便になるなんて想像もしませんでした。
運転手さんの約束どおり15:25離島ターミナルへ到着。「お釣りはいらへんから(料金910円)」と千円札を渡し、荷物を引っ張り安栄の窓口へと急ぎます。すでにカウンター前にはもう客は居ません。予約を告げ乗船券を手に入れたのが出航時間の3分前でした。
※予約は15分前までに窓口に並ばないと自動キャンセルになります。今回は予約の5%引きが適用されていたのでキャンセルはされていなかったようです。
乗り場は6番、埠頭に出てみれば「あんえい88号」への乗船が既に始まっていました。
あぁなんとか出航に間に合いました。
石垣島と波照間島を結ぶ航路は1日5便(夏季)。かつては波照間海運も同路線を運航していたが現在は運休(事実上の倒産)しており、安栄観光が唯一の移動手段になっています。
一部、フェリー「ぱいかじ」やチャーター船も出ているが一般客はこの一日5便を利用するしかありません。
航路は、石西礁湖を抜けたあとの後半、船は外海を走る為、風や波にめっぽう弱くこの2週間で見ても70便のうちわずか7便しか出ていません。運航率10%の定期航路ってありえない(笑)
かつては波高4mを越えても出航していたのですが、近年ケガ人が出てからは安全運航を指導され波高3m超だと欠航する率が高くなるそうです。
観測がてら条件付で出た1便が島の直前で引き返したり、激しい揺れの為、座席から宙に浮き着地の衝撃で骨盤骨折したとか、また最大傾斜度は転覆寸前の45度なんて逸話がいくつもあります。
ようやく私たちが乗った最終便は石垣港を出て海面をすべるように走り出しました。
通常この5便は波照間直行なんですが、今日は西表島の大原港経由になっています。(通常は2便が大原港経由)
二週間も欠航が続いていた為、船は満員。更にもう1隻追加して最終便は2隻運航で出発しました。
西表島まで約30分、大きな揺れもなく順調な航海です。大原港で中高校生数人を積んで更に波照間を目指します。
私は静かな大原港を眺めながら「なんや大したこと無いやん、ほんまは割り合わへんから船出さんかったんとちゃうか」などと考えていました。
(どうやら波は大したことは無さそうですね。本当は経済効率が悪いから出航しなかったのではないですか?)
しかし、海面が黒々とその深さを表現することろまで来ると、船が突然大きく揺れ出したのです。
船は波と直角に舵を取り、大きなうねりが来るとその頂でエンジン停止、すとんと落ちながら加速を開始しストップ&ゴーを繰り返して進みます。
前後のシーソー揺れに左右の震えを加え、エンジンはゴォーという音とドッドッドッというアイドリング音を繰り返しながら奮闘します。
私たちは乗り物酔いに強いのですが、回りではちらほらビニール袋が登場。中でも近くに居た小学生は、これまでの人生でもう最大の辛苦を味わっているんだろうなぁと、容易に想像できます。
出航してから1時間余り、大きく揺れ出してからも既に30分を越えました。が、島影はまだ見えません。というか船は本当に前へ進んでいるんでしょうか?ただその場で波に耐えているだけのように感じました。
出航から1時間30分を越えました。そのうち1時間は大きな揺れとの戦いです。もしかして石垣島に引き返すのか?船室の中もざわざわしてきました。
しかし私は「いや、絶対に引き返したりしない。船はこのまま波照間を目指すはずだ」と確信していました。
なぜならば、この船には「ピカリャー」が乗っているからです。
実は、波照間島ではこの日、波照間楽宴祭というお祭りが開かれる予定になっていました。
そしてその祭りには竹富町の「ゆるきゃら」である「ピカリャー」が仕事で渡る事になっていて、この船には「ピカリャー」と思しき大きな包みが積まれているのを私は確認していたのです。
更に、出航前には船員が「大原で子供を乗せます」という業務連絡を聞いていました。島の子供らしい数人は恐らく1週間近く西表島に滞在していたはずです。
もちろん長らく欠航が続いていた事もありますが、この船には満員の乗客と島の子供たち、お祭りイベントのキャラ、そして食材もたくさん積まれていることでしょう。
だから多少のことなら強引にでも船は突き進むはずだと信じていました。
やがて船は難所を越えたようです。だんだんと穏やかな海面へと進みようやく島が見えてきました。
通常なら西表島経由で70分の航路が、都合120分をかけようやくと波照間港へ到着したわけす。
やっと着いたよ波照間島。
自宅を出てから7時間、ここ波照間島へ到着することが出来ました。
※島の人の話によると、投票用紙の輸送とか島外授業の児童が帰ってくるとか、祭りなんかのときは、「船はでるさー」ということです。
(旅行日:2012年8月11日)