店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

家はあるが家なき子に・・・

2018-11-14 08:28:16 | 熊本地震
 家に帰ってきたのは、午後になってからだ。
 昨日は真っ暗で何も見えず、あたりの様子がわからなかったけれど、やはり家屋へのダメージはひどくて、一部の家屋が倒れかかっている。
 家も、倒れてはいなかったが土台から20cmぐらいズレて傾きかかっている。
 これでは、もう住めないだろう。
 そしてネコたちは、一体どうなっているのか?

 しばらく家の前にいたら、隣の家のご主人がやってきた。
 昨日駐車場に逃げた人たちのほとんどがもう、体育館の避難所にいるので、そこへ行ったほうがいいという話になった。
 それなら、避難所に行こうということになり、夫に荷物を取ってきてもらった。
 といっても、まだ余震もひどく、ときどきグラグラとかなり強い揺れの余震が何度も起こっているので、そんなにあれこれ持ち出せるはずもなく、私のスマホと仕事のバッグ、それとわずかな身の回り品だけである。
 よく、「なんてせ持ち出せなかったの」「もったいない」などと、現実をわかってないこと言う輩がいるが、傾いた家の中にいること自体が危険だし、こんなときはモノを動かしただけで、新たな倒壊を生んでしまうこともある。
 欲をかいたらいけないのだ。
 ネコたちは、とりあえず無事にいるようだ。
 いち早く危険を察知したらしく、メスの二匹はもう家から脱出したらしい。
 当日二階の夫の部屋にいた、ズコとバビも無事だった。
 このあとは、どうするか・・・。
 エサをやりに来ながら、助けるしかないだろう。
 

 

歩いても歩いても

2018-11-14 07:59:29 | 熊本地震
 治療が終わって不愉快なまま、またバスを待った。
 やっとバスが来たかと思ったら、今度は乗ったバスがいきなり、町へ入る手前で、
「ここから先へは行けませんので、ここで降りてください」
 と停車した。
 もちろん、乗っているときはなんの説明もなかった。
 町は唯一の交通機関のバス会社から見放されてしまったのだ。
 一体道路は、町はどうなっているんだろう?
バスも通れないほどに、ひどいことになっているのか?

 しかたなく、ズキズキ痛む足を引きずってバス通りを歩いた。
 他の車両はどんどん町に向かって走り、渋滞になるほどの車の多さである。
 バス停にして10個ぐらいの距離をひたすらに歩く。
 幸い、隣を夫が歩いてくれているから、話しながら歩くと少し気が紛れた。
 町の中に入っても、車の多さは変わらない。
 いつもよりお客を載せたタクシーが多いのは、すでにマスコミの取材がはじまっているからなのか・・・。
 この時点ではまだ、車道も歩道も通れたし、ガレキなどの障害物もあまりなかった。
 ところどころ倒壊した家があり、石なども落ちているが、なんとか歩いていけた。
 しかし・・・家は遠い。

 なんで車の量が多いのか?
こんなに混雑するのは、町の花火大会のときぐらいだ。
 しかも、町から外へ出る流れだけでなく、町へとやってくる車両がものすごい。
 びっしり並んだ車の中には、もちろんタクシーの空車なんていないから、またひたすらに歩いた。
こんなひどい目にあわせて・・・今に見てろよ
 そう思いながら。


病院から出てみた

2018-11-14 07:39:39 | 熊本地震
 翌朝、病院から出てみると、すっきりした晴れの天気だった。
「皮膚科の専門医で診察を受けてください」とのことなので、ひとまず皮膚科の医者を探したが、近場の医者は避難しているのか不在だった。
 そうこうするうちにお腹がすいてくる。
 病院近くのコンビニが営業していたので、そこでお弁当を買い、あたりを散策した。
 病院の近辺は、あまり地震の被害がないようで、静かなものである。
 でも公園やベンチがないから、ウロウロとあたりを探していると・・・。
 バス停近くのお弁当屋さんが、窓から顔を出して
「ここ、使っていいですよ」
 と、自分のお店の前にある椅子を提供してくれた。
 私たちが持ってるお弁当は、他の店のものなのに・・・。
 ずっと痛い足を引きずって歩いたあとで、この親切がありがたくて、涙が出そうになった。

 家には、バスを乗り継がなくては帰れない。
 とりあえず、水前寺方面まで出て、そこからまた益城方面行きのバスに乗らなくてはいけないのだ。
 バスのダイヤも乱れているのか、バスはなかなか来なかった。
 窓の外の景色を見ていると、水前寺方面は倒れているいる家もなく、道路もいつもどうり混雑とているが、救急車などの音も聞こえてこなかった。
 昨日の夜の大混乱を思い出すと、別世界の別の町のようである。
 ウチの町だけが・・・なんであんなことに・・・。(このときはまだ他の市町村の被害がよくわかっていなかったので、特にそう思ってしまったのである)
ウチの町に何が起こっているのだ。

 水前寺方面に着くと、そこでやっと開いている病院を見つけて治療してもらった。
・・・それはいいが、突然のことだったので保険証も家に置いたままなので困った。
しかもその病院の受付の若い女がものすごいバカで、状況を説明しても、パニックになっているのか「保険証がない場合は全額負担です」をくりかえすだけだった。ちゃんと後での対処のしかたがあるはずなのに(怒)

ちょっとホッとしたこと

2018-10-29 10:28:46 | 熊本地震
 先日、建設中の家を見に町へ帰ったら、とある近所の方が無時住宅を再建されてました。
 ここの家には何匹かネコがいて、避難の時捕まえられなかったので家の方はずっと、エサをやりに通われていたそうです。
 無時ネコちゃんたちも家に入って、幸せそうです。
 奥様と話をしていたとき、その中の一匹が出てきてくれました。
 残念なことに、通勤の途中や散歩のとき、何度かこのネコちゃんとは会っているのですが、警戒されているのか、なかなか近くに寄ってきてくれません。             

病院周囲

2018-10-27 08:09:26 | 熊本地震
 病院の周囲はいつもなら車が混雑し、歩道も通院や付近での買い物に行く人で結構にぎやかな街のはずであった。
 しかし今日は、人がほとんど街を歩いていない。
 昨日の地震の余震はまだ続いているので、皆息をひそめているのか。
 このあたりは病院があるのでバスも多いはずなのだが、ほとんどバスも走っていない。
 あわただしく通勤、通学の人々もいない。
 一見静かで穏やかな朝だけれど、なにかが違う。

 ひとまず医者を探そうとネットで近くの医者を調べてみた。
 幸い病院の近くに開業医があったけれど、休診らしい。
 それでは、ひとまず家にバスで戻れるところで病院を探すため、水前寺方面移動しようということになった。
 歩いているとお腹がすいてくる。
 そういえば、私も主人も昨日の夜のあの騒ぎで、何も食べてない。
 今更ながら、カツ丼食べたかったな・・・などと思ってしまう。
 開業医近くのコンビニが空いていたので、そこで弁当と飲み物を購入し、私たちは歩き出した。

 ひとまず弁当を食べるために、公園を探してみた。 
 病院周囲は、あまり土地カンのある場所ではないので、どこに公園があるのかよくわからなくて、町をうろついてみた。
 作業着の男と、長袖シャツに半ズボン、しかもスリッパ履きの女。
 怪しさ、うさんくささ全開である。
 こんなヤツが近くをウロウロしていたら、私だったら絶対に避けて通るよ。


最初の避難②こんなときに

2018-10-22 20:48:40 | 熊本地震
 避難所のまわりにいた見舞客の車両が邪魔で、緊急車両がなかなか奥に入れなかった。
 空気が読めない・・・というか、余震の中車を走らせて見舞いに来る根性は見事だと思うが、(←これは褒め言葉ではない)見舞いは災害が落ち着いてからという常識もなくなるほど、取り乱しているのか。
 周りの人も、救助をハラハラしながら見守っていた。

 火事が消えてしばらくすると、やっと救急車がきた。
 来たのはいいけれど、やはり車両が入れないので、表のバス通りまできてくださいという。
 足は痛い、でも・・・歩かなくては。
 バス通りまでの数メートルがやけに長く感じる。
 夫に付き添われて、やっと救急車に乗ることができた。

 救急車で運ばれたのは、日本赤十字の病院だった。
 ストレッチャーの上からあたりをうかがうと、次から次へと救急車が到着し、病院関係者があわただしく走り回り、まるで映画の中の戦場のようだった。
 ガラガラというストレッチャーの音と、人々の話し声と、車の音がいくつも重なりあうなかか、診察室に入った。
 やはり火傷だ。油の火傷なのであった。
 診察が終わると、もう病室も満員ということで、別棟の待合室に移動させられた。
 火傷はしているがまあなんとか歩けるし、今夜だけこの別棟に宿泊してあとは明日、帰宅するようにとのことだった。

 この場所も満員で、ソファーの上で横になる。
 少しは寝ないといけないが、浅い眠りしか来ない。
 なんでこんなことになるのか・・・。
 まだ、堂々めぐりのようにそう思っていた。

その日⑤外には出たけれど

2018-10-22 08:01:05 | 熊本地震
 駐車場には、町内会り同じ班の方の他にもいろんな方が逃げてきていた。
 屋根がなく土がむきだしのかなり広い駐車場なので、車でここに来ている人も見うけられた。
 とはいっても、四月のまだ気温の低い夜である。
 ほとんどの人が座るところもなく立っているのだが、ご高齢の方も多く、立ちっぱなしというのはかなりキツイだろう。
 たっている間にも、余震がばんばんやってくる。
 周りにはほとんど障害物はないが、電柱がいくつかあるので電柱の近くを避けて、家族ごとに固まっていても、かなり大きな揺れがくるのでそのたびに悲鳴があがったりする。

 足が、ヒリヒリと痛む。
 火傷の箇所を確認しようにも、痛みで足を触りたくもなくなった。

 猫は・・・どうしているか。
 家にいる6匹の猫たちは、無事に逃げたのだろうか?
 数十分おきに起こる地震と、足の痛みのせいで、家に戻ることもできない。
 戻っても、ゲージがどこにあるのかもわからない状態なので、連れ出すこともできなかった。
 猫は危険を察知すると、逃げ足は速いというが・・・。

 着のみ着のままスリッパ履き、持ってるものはタオル一本なので、携帯電話もなく、家族に連絡を取ることもできない。

なんたる不覚だ。不覚だらけじゃん!

 そんなことを考えているうちに、空き地の向こうから火の手があがった。
 火事だ!

最初の避難①

2018-10-21 19:55:14 | 熊本地震
 みんなが集合している避難所の隣の地域で、火災が起きた。
 幸い、何軒か先の場所なので、すぐこちらに火がやってくることはないようだ。
 しかし、火の勢いが強い。
 高く、もうもうと煙があがり、火の粉が舞い上がる。

 どうやら電線か何かのトラブルで空き家からの出火らしく、ケガ人等は出なかったが、火事現場の道路は通行止めになった。
 その近くに、町内の集会所があるのだが。

 一時は、集会所で夜を明かそうという話も、これで中止になった。

 消防団の方々は火事の前後もずっと駆け回り、避難してくる人を誘導したり、町内の人たちの安否を確認したりと、忙しくしている。
 親切な人が携帯を貸してくれたので、夫に連絡もついた。
 だが・・・なかなか夫はこの場には現れなかった。
 いつもなら30分で会社から戻れるところを、どの道も避難民でごったがえし、2時間近くかかってしまったようだ。
 (夫の会社もこのときはまだ、被害が少なかった。)
 とにかく医者に、ということで夫に救急車を呼んでもらった。

 だが、どこも怪我人や病人でいっぱいなのか、なかなか救急車は来ない。
 寒気がひどくなり、震えている私に、近所の人が毛布を貸してくれた。
 毛布にくるまってだいぶ楽になったが、痛みと、続く余震と・・・。
 そしてこの世の終わりかと思うような、赤い火と・・・。
 なんでこんなことなったのか?
 皆呆然として、立ちすくむしかないのだった。

消防車に続いて、機動隊の車両も来た。
 火事現場の近くの家が倒壊し、中に人がとじこめられているという。
 事故現場は車一台がやっと通る道で、大型車両がダイレクトに侵入できないということで、とりあえずこの駐車場から、救助活動を行うらしい。
 避難していた人たちは、ひとまず空き地の隅に移動した。
 早く、救出されて欲しい。
 だが・・・。

 

その日④家から脱出する

2018-10-20 08:17:58 | 熊本地震
 玄関のそばの窓に近寄ると、人の声がした。
 若い男性が何か叫んでいる。

 地元の消防団の人たちだった。
 各家を回って無事かどうかを確認し、避難誘導しているらしい。
 もう、ここまできては避難をしなくてはいけないレベルのことが起こったのだ。
 
 では、とにかく家から出ようにも・・・
 玄関は、作り付けだったでかい下駄箱が倒れて、いた。
 ドアは半分しか開かない。
「●●(おいらの苗字)です!家から出られません!助けてください」

 ここは田舎の町だけれど畑の中に家があるというより、住宅地の中に畑が点在するような場所なので、町内の同じ班には10軒以上の家があり、道路を挟んで別の班がいくつかある。
 消防団の方々がそこを順番に回って、中の人を救助しているようだ。
 救助には高齢者も多いから、時間がかかるし大変なのだろう。
 しばらくして、二人の男性が玄関先までやってきた。
「火傷をしています。なんとか外に出してください」
 いちおうそう現状を報告すると、外から男性が手をさしのべてくれた。

 下駄箱の隙間からやっと、外に出ることができた。
 歩いて数十メートル先にある、葬儀屋さんの駐車場に誘導された。
(このときはまだ、道路の被害があまりなく、道路を歩いて避難できた)
 四月の夜は寒いのに、長袖シャツに半ズボン、そして足元はスリッパのままだ。
 防災用品?
そんなのどこ行ったかわからない。
 きっと吹き飛んでるだろう。靴さえないし、玄関先に置いてあった蝋燭、ランタン、懐中電灯もない。
 持ち出そうにも、探しているうちに(地震のちきに油を使っていたから)出火したら・・・。

その日③で、どうするよ?

2018-10-20 07:44:17 | 熊本地震
起き上がって家の中を確認しようにも、お尻が痛くてなかなか起き上がれない。
 火は?ネコは?
今家は、どうなってんのか?

手探りで周囲を確認すると、体は、ちょうど家具のすきまにすっぽり入っているらしい。
 足の上にモノが落ちてきたり、頭の上が何かで覆われているわけではなさそうだ。
 (リビングは、食器棚2台とキャビネット、テレビ台、ダイニングテーブルセットがあった)
 目の前になんの家具が倒れているのかわからないけれど、どかせようと思ってもかなり重く、ビクともしなかった。
 このままではまずいので、立ち上がらなくては。
 そうだっ!!!

 こんちくしょー!!!

めいっぱい腹に力を入れ、大きな声でそう叫びながら、私は立ち上がった。
 腹に力を入れたせいか、スッと立ち上がることができた。
 でも、あたりは真っ暗で何も見えない。

 左足が熱い。
 太ももの部分とおなかの一部が、焼けるように痛い。
 そういえば、揺れたときに鍋が飛んできて、全部ではないけれど、バシャッと油がかかったような気がする。
 カツを揚げていたときの煮立った鍋の油だ。
 火傷をしているらしいけれど、それをどうにかすることはできなかった。
 とりあえず手探りでガスの栓を閉め、水で冷やすために風呂場に行こうとしたが、風呂の入り口の戸は、少ししか開かない。
 どうやら脱衣場にあるタオルストッカーが倒れて、戸を塞いでいるらしい。
 しかたないので、なんとかタオル一本だけ持ち出して、外の様子をうかがった。