店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

バカの国・百田尚樹

2020-05-22 20:11:14 | 小説・読んだ本
 いつだったか、誰かが「性バカ説」というのを提唱したことがあった。
 人間は「性善説」「性悪説」というように善悪でとらえるものでなく、最初からバカなのだと。
 おいらも、この考えに同意しているんだけど・・・まぁ、百田先生がお怒りになり、ため息をつくのも無理ない。
 百田先生は、しごくまっとうな良識あるお人なのである。だからバカが蔓延るのが許せないのだろう。
 この本は、最新版「バカカタログ」である。
 今更バカについてどうこう言ってもはじまらないのかもしれないけれど、最新バカを反面教師にしてください。若い人も年輪を重ねた方も。
 バカをげらげら笑っていられるうちは、あなたの心にも「余裕」があります。
 そして、この「余裕」がなくなってしまうと、人はバカに走ります。
 「コロナで世界の人が困っている、こんなご時世に心の余裕なんて・・・」
 そんなセコい発想をしてはいけません。
 ウソでも、見栄でもいいから、バカを非難ではなく、笑いましょう。
 それが余裕ですよ。
 
 

秋の夜長に読むのは

2018-11-20 19:45:16 | 小説・読んだ本
 いちおう毎年、秋になると長めの小説に取り組んでます。
 「三国志」「史記」などにはじまり、よく読んだのは「平家物語」など歴史ものかな?
 でも、「歴女」とかいうヘンなカテゴリーには入りたくないので、世界文学とか、誰かの全集とか、とにかく長い物を読んでました。
 で、今年はいろいろ家のこともあるので、あんまり真剣な読書テーマを考えなくて、「スマホ落とした・・・」の2作を読みました。
 悲劇ととる喜劇ととるかは読む人しだいだけど。
 なかなか「イヤミス」感も強いので、ぬるい「ハッピーエンド」が好きな人にはオススメしません。  

ヤリ●ンと呼ばれても

2018-10-28 17:58:57 | 小説・読んだ本
 今回は桐野夏生の「抱く女」である。
 さまよえる主人公のフラフラっぷりが見事な「青春小説」なのである。
 桐野氏といえば、「グロテスク」の、これでもかというほどのドロドロと、そのドロドロにグイグイ引きよせられていく作風に比べると、この作品はドロドロが薄い。
 薄くて品のいい桐野作品なんて、ドロドロイヤミス中毒(それはそれで怖い物みたさで楽しいけどさぁ)の人にはもの足りないかもしれないけれど、おいら的にはOKだ。
 一部ではスマートでオシャレなファッションが発生しながらも、まだ泥くさくて上昇志向でギラギラの町の中を、フラフラ漂っている主人公。
 この主人公は、自己主張がヘタだし、何をやっていいのかよくわからない。
 しかしその不器用さこそが、青春時代なんだろうな。
 一見、都会の中で楽しくやっているように見えても。

 おいらには、この主人公の「町っ子」の生き様がわかるような気がする。
 地方出身者に比べ、子供のときから便利でオシャレで楽しいものに囲まれているけれど、それをがっしりと掴み、成功に向かっていくことに「迷い」というか、「ためらい」がどうしても、ある場面で(それがここ一番の大舞台であっても)ひょっこりと顔を出してしまう。
 それが、本の中にくりかえし出てくる違和感の正体なのかもしれない。
 (これを町っ子のひ弱さととるか、根性のなさと取るかは他人の勝手だけどね。)
 若いうちから、その迷いやためらいにウソをついて、何になるのだ。
 この小説は青春小説というより、放浪小説(そんなジャンル分け、おいらが自分勝手にしているワケだが、このジャンルに分けられるもの、けっこうありそうだ)かもしれない。
 若い、とは納得がいくまで、いや納得がいかなくても様々な世界を放浪するもの・・・。
 見つからない何かを見つけに行くこと。
 いつかそれに疲れても・・・でも、若いということは疲れないから、とりあえず次いってみよう、になるのだ。
 たとえ主人公のように傷ついて、ヤリ●ンと陰口を叩かれても。

 若いうちなら、年とってからそれをやると「バカ」の烙印を押されるようなこともあとで笑って語れる。そして傷ついた傷も。
 (若くなくなってもバカなことしたり、ヘンにこじらせて傷を引きずっていると、他の桐野作品に出てくる痛さ全開な人みたくなってしまうのだ。)


夜廻り猫

2018-09-01 18:43:04 | 小説・読んだ本
 ちょうど地震のあと、みなし仮設に入った頃に一巻を買いました。
 別に「自分はがんばってる」とか言うつもりはありませんが、エールを送られたような気がしました。
 で、続けて読んでみると、個性的なネコたちの面白いこと・・・「平蔵&重郎&ニイ」というレギュラー猫だけでなく、いろんな人、いろんな猫が出てきて面白いです。
 ♪きら~くい~ん がんばれ~たぶち♪にも笑い、ほどよく脱力して、不幸自慢展覧会にならないようにがんばる人にエールをくれている気がしました。
 もし、ここに来てくれている方で、読んだことのある方がいたら、どんなキャラがお気に入りなんでしょうか?もし良ければ、↓のコメント欄にご記入ください。

おいらは、宙さん、わがままモネ、カラーとメロディ姉妹、ラミーですかね。
 人間だとケチャップライスが作れるようになった子、面白いメニューを提供してくれる宙さんとこの先生・・・登場人物も楽しいです。

ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ

2018-07-26 16:23:12 | 小説・読んだ本
 地震で千冊以上の本がパーになって、今少しずつ「買いなおし」をしているところです。
 その中でまず、ほしいと思ったのはこの作品。
 荒巻義雄先生がまだ、「紺碧の艦隊」とかの架空戦記を書く前の作品です。
 パラレルワールドの中で、カジノギャンブルというドロドロの世界と、美しい恋、過去の物語が絡み合って、荒々しくも繊細な小説世界を作っています。
 原型の小説を初めて読んだときから大好きになって、今でも、
「これ宝塚で作品化してくんないかな、バウホールでもいいけど」
 そんなふうに思い続けています。
 
 もちろん、この作品の拡大版ともいうべき「白き日旅立てば不死」も買ってしまいました。
 古本、しかも文庫なのに二冊とも原価より高かったけど、好きな本が手元に戻ってきてくれてうれしいです。
 おかえり・・・私のところへ。
 また、楽しい夢を見せてね。 

もう4月

2012-04-02 11:29:59 | 小説・読んだ本
 もう4月ですな。
 こちらでは、桜が満開であります。

 最近話題の「進撃の巨人」をコミックスでまとめて読みました。
 現実の世界の閉塞感をじくじく煮詰めていくと、この巨人のいる世界の閉塞感になっていくような・・・。
 乾いたカンジの絵柄なのでモノクロだとわかりづらいけれど、けっこうホラー並みにグロい話だし、戦争に負け続けている国の話みたいで、暗いけれどなんかこの巨人のいる世界に「引きずりこまれ感」はスゴイです。
 やっぱり、青少年は大志を抱いて革命してくれなきゃ。
 今は「不完全な自分」でもいいから・・・。
 青少年が「草食な羊さん」じゃダメなんだよ。

 今週は、鹿児島のA-Zに行ってきました。
 3号線ぞいの桜はもう満開で、白い菜の花のような花があちこちに咲いている。
 ひたすらのどかな春ですね。
 A-Zは、鹿児島にしかない巨大ディスカウントスーパーです。
 売り物は「お客様のリクエストのあった商品は、必ず仕入れる」
 ラーメンだと徳島ラーメン、なつかしの中華三昧・・・普通は高級店にしかない「モナン」のシロップまであるし、ゆっくり見ていると時間のたつのを忘れそうだ。
 で、帰り道にあの、消えたはずの「コロちゃんコロッケ」の店が八代にあるのを発見してさっそく立ち寄った。
 親会社の倒産以来、店舗は一斉にサッと消えたはずだけど、一部の人たちがもとの仕入先から独自に仕入れて店をやっているとのこと。
 この店もコロッケだけでなく、一緒にからあげをやりはじめたら人気店になったようだ。
 出てきた試食の塩からあげは、冷めているけれどサクサクでおいしかった。
 しかもどの商品も低価格なので、一人で来て一人分だけ買うのも買いやすいし。
 もうあの味は食べられないとあきらめていただけに、なんか今日は(馬券は全部負けたのに)得したような気分だった。
 

荷宮和子さんの本

2011-02-28 10:43:19 | 小説・読んだ本
「声に出して読めないネット掲示板」(中公新書ラクレ)
「若者たちはなぜ怒らなくなったのか」(同上)
「バリバリのハト派」(晶文社)

 荷宮さんは、おいらと同世代の人間である。
 肩書きは「女子供文化評論家」。
 他にも著書は宝塚関係、ファッション関係といろいろあるけれど、今回はとりあえずおいらが最近読んだこの3冊の感想である。

 我々の世代は、とにかく人数の多い団塊・団塊ジュニアに挟まれた少数派「くびれの世代」なのだと荷宮さんは訴える。
 「私たちは少数派だから」、とため息つきつつも、荷宮さんは主張する。
だから、あんた方、おかしいんだよ、それはちょっと違うんだよ、どんどんイヤな方向にイッちゃってるんだよ~

 こんな「くびれの叫び」は人ごみに流されて聞こえなくなってしまうのか。
 あるいはネットの中で「論破」とかいうばかくさい勝ち負けの中で埋もれてしまうのか。
 うう・・・少数派はツラい。
 でも荷宮さんはくじけないだろう、たぶん。
 
 右傾化、殺伐としたネット世界、フェミニズム(これは別の本が出てる)、団塊ジュニアの若者・・・おいらが「違和感」を覚えながら、それがなんかモヤモヤっとした言葉に表せないでいたものを、荷宮さんがキッチリ言葉にしてくれたような気がする。
 でもこの本は「攻撃本」ではない。
 恐ろしい方向へとつき進んでいく人たちに、「ちょっと立ち止まってくれ」と言ってるのだ。
 それがまだ間にあうか、もう手遅れかどうか・・・。
 手遅れだったら、くびれの世代には老後に「絶望」が待っているんだろうけれど。
 (頼むからそれはかんべんして欲しい)

 同世代の方、読んでください。
 団塊・団塊ジュニアもこんな「少数派の声」を黙殺してると、自分がどんな立ち位置にいるのかわかんないまま、「戦争貧乏社会」に向ってまっしぐらに突撃しちゃうよ。
 

本の本

2011-02-16 21:44:48 | 小説・読んだ本
 斉藤美奈子さんの書評本である。
 
 おいらが今、読んでいて「ハハハッ、そうだよな~」と笑いながら賛同してしまうとか、「そのとうりっ!」とおいらが思っているそれをなかなか言葉にできずにいたモヤモヤを解消してくれたと思う評論家といえば、この人と、宝塚評論家でもある荷宮和子さんのことである。
 まあ、後日荷宮さんのことはとりあげるとして、斉藤美奈子氏のこの本・・・。
 まず分厚い。(しかも2800円は高いんだけどね)
 なんか「さわやかすっきり、アナタの苦労したオサレなインテリアを壊さないような(まあそんなもんはおいらにないけど、なんてったって布団カバーがアレだし)穏やかな色調のカバー」をはずしてみると・・・げげげ。表紙本体は黒と金だ。
 ジョンプレイヤーズスペシャルか虎屋の羊羹の箱か・・・。
 でも内容も、黒と金だ。いい意味で。
 黒は渋くて鋭い見識、そして金は「ネットのせいで一億総評論家と言われているけど、その中にあって、なお輝くプロの味わい」なのだ。
 この不景気、できれば文庫で出して欲しかったけれど・・・。


最近読んでいる本

2010-09-04 18:26:58 | 小説・読んだ本
 引っ越してからというもの、図書館から遠くなりなかなか行く時間もなかったし、とりあえず今読んでいる本といえば、このぐらい・・・。

 ①森茉莉「ドッキリチャンネル」
  つくば文庫かどっから、中野翠さんのセレクトしたものが出ているけれど、おいらが読んでいるのは「森茉莉全集」の全編収録版。
  耳タコと化したパッパとの思い出&昔自慢以外は、痛烈で面白い。テレビ批評から観劇作法、着物の好みから美人論、料理といろいろ面白い森茉莉流人生の楽しみが満載だ。
  特にタレント評。いしだあゆみの項とかは、本人には悪いけどホントにそう見えるので大笑いした。ただ全集だと本自体が重いので寝ながら読むのは疲れるのだ。

 ②P・G・ウッドハウス「がんばれジーヴス」
  やっぱこのシリーズは面白い。お坊ちゃまで太平楽。それでもなんとかなっちゃうのは、古き良き時代だから?不景気だ倒産だ詐欺だ破産だ・・・そんな世知辛い世の中に疲れていると、こんな夢の世界が笑いをくれるのか・・・。
  最近白泉社でマンガ化されたようだけど、絵柄もステキだし、よくやった!と思っている。

 ③くらもちふさこ「いつもポケットにショパン」
  ピアニストを目指す少女と、その家族、そして幼馴染・・・絵柄はいかにも少女マンガだけ ど、一見繊細でちょっと子供っぽく見えるなかにドロドロの人間関係やトラップがあって、大 人になって読んでも「切ないほど不器用な大人たち」の場面とか読み応えがあって面白いと思 う。
  絵柄は昔っぽいけど、「若い時のあの思い」は現代になってもそう変わらないと思うので  かつての大映ドラマみたく、くさ~くならなさそうだったらドラマ化してみたらいいかも。

 ④相変わらず架空戦記ものも読んでいます。
   いや、この世界も実はトンデモ本から大真面目なもの、思わずホロリとしてしまうものま で、いろいろあるので今度まとめて紹介いたします。

・・・ってさあ、図書館にやっと行くことができたんだけど、思わず借りてしまったのは、
 ⑤「宝塚歌劇90年史 すみれ花歳月を重ねて」
 ⑥「東京裁判を読む」
  だったりする。
  

光瀬龍

2010-04-13 16:55:10 | 小説・読んだ本
「SF作家の曳航」と題された本です。
 この本は、作家光瀬龍の未収録エッセイ・コラム、あとがき、昔の作品の一部を集めて、それで伝記を作ってしまうという本です。
 評伝ではありませんし、熱心なファンによるパーフェクトカタログ形式のものでもない。 おまけに年表とかもすべての作品について書かれているわけではないし、作品リストもないから資料としては、ちょっと使いにくい本だ。

 まあ、このエッセイ集の中から浮かんでくる作者像もあるわけです。
 それは編者があまり顔を出さないから、かもしれません。
 指先でページをめくるたびに、うっすら浮かんでくる作者の顔。
 それをさらにたどり、さらに考え・・・。
 そうやって、自分の中の作家像ができていくのも楽しみのひとつだと思う。

 なんか、どんな作家でも「ファン意識が強く、語りたがり」の人が作った評伝って、暑苦しいんですよ、おいらには。
「私が(俺が)やんなきゃ誰がやる」
 みたいなものが前面に出た作品は、確かに労作が多いけれど、
「その作家がいい悪いは、最終的に読者が判断すればいいじゃん」
 と思っていても、編者から
「いいえっ!それは違うでんすっ!アナタは知らないんでしょ?」
 って鼻息荒く反撃されそうで・・・それこそ、「贔屓の引き倒し」なんだけどさあ。
 だから暴露本好きなのかな、おいら。

 この本はまあ、そういう「作者と編者の距離の置き方」には合格です。
 光瀬龍さんが好きなおいらには、未読のものを読めるパーフェクトファイルみたいなものも欲しいけど、この本からうっすら浮かびあがってくるものも、好きです。
 子供の頃のUFO体験、戦争体験、青春時代・・・。
 「熱く語ってくれるのは、ファングラブに任せておけば」
 みたいな姿勢が・・・。

 まあ、熱心なマニアが掬ってくれた余りものにも、掘り出しものがあるかもしれないってことで・・・。
 たたじ、今光瀬の書いたものを探して、これから読もうという人にはあまり役に立たないと思う・・・。