のほほんとしててもいいですか

ソプラノ歌手 佐藤容子のブログです。よろしくお願いいたします!

菩提樹 Der Lindenbaum

2006-10-03 | 『音楽のはなし』
シューベルトが死の前年、1827年に作った歌曲集「冬の旅」の5曲目



市門の前の噴水のそばに菩提樹が一本立っている。

その木の影でたくさんの甘い夢を見たものだった。

僕はたくさんの愛の言葉をその木の皮に彫り付けた。

うれしいときも悲しいときも 自然に足が向いてしまった。

今日も真夜中に木のそばを通らなければならなかった。

それで暗闇の中なのに目をしっかりと閉じてしまった。

すると枝枝のざわめきが僕に呼びかけるように思われた。

「私のところへおいで、若者よ。ここがお前の憩いの場なのだ」

冷たい風が真正面から僕の顔に吹き付けた。

帽子が頭から飛んでいったが僕は振り向きもしなかった。

いま僕はあの場所から何時間も離れたところにいる。

だがざわめきがいつまでも耳に残る。

「ここがお前の憩いの場なのだ」



冬の旅 Winterreise D911,Op.89。
1823年に作曲された『美しき水車小屋の娘』と同じ、ドイツの詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集による。
二部に分かれた24の歌曲からなる。
『冬の旅』は若者は最初から失恋した状態にあり、詳しい状況は語られないが街を捨ててさすらいの旅を続けていく。
全曲を通して「疎外感」、「絶望と悲しみ」、「決して得られないもの、もう失われてしまったものへの憧れ」に満ちて、唯一の慰めである「死」を求めながらも旅を続ける若者の姿が描かれている。



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帰れソレントへ Torna a Surriento

2006-10-03 | 『音楽のはなし』
デ・クルティスの代表作のひとつ、帰れソレントへ、はどんな内容でしょうか。

この曲は、自分のもとから去っていった恋人に、ソレントに帰ってきてほしい、とうたっています。






ごらん、海を、なんときれいだ。

とても気持ちをかきたてる。

あんたもそうだが、見るものを、目覚めながら夢心地にさせる。

ごらん、ほら、あの庭を。

花咲くオレンジの香りを、ほら、かいでごらん。

なんともかぐわしいこの匂いは、心の中までしみこんでくる。

なのにあんたはいう。「私はいく、さようなら」と。

あんたは離れていくのか、この心から。

この愛の土地から??

そう決めて、もう帰らないつもりなのか。

私をおいていかないで。

私をこんなに苦しめないで。

ソレントへ帰ってくるんだ。

そして私を安心させてほしい。





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