のほほんとしててもいいですか

ソプラノ歌手 佐藤容子のブログです。よろしくお願いいたします!

もし、この道で

2013-07-10 | 『詩・散文』





地下鉄を降りて、階段を上る




汗をふきながら、顔をしかめたサラリーマンが何人も何人も、すれ違いながら吸い込まれていく




地下へ地下へ





大手町駅は複雑だ





この出口も知らない人は知らないだろう






ビルへの道を急ぐ





ゆとりを持って出たはずだが、途中、駅のトイレで化粧を直しているうちに時間が過ぎた








別にそうじゃない




彼に会うかも、と思ったからではない





身だしなみを整えただけだ





半ば、自分に言い聞かせた







昼の時間帯だった





この界隈では名の知れたラーメン屋は、この炎天下の中でも、それなりの行列ができていた





目は、一応、行列の中に彼の姿がないことを確認していた






会ったからと言って、声をかけられるのだろうか




まったく自信がなかった






向こうさえ気づかなければ、身を隠すかもしれない、とさえ、思った





一方、もし会ったら、もう以前の私とは違うのよ、とでもいうように、余裕の笑みを見せようか、とも思った







いやいや、それはないや…










彼の勤め先のビルに差し掛かった







偶然を願いつつ、偶然を願っていなかった








暑さに頭がクラクラしてきた





夏のせいでもあり、彼のせいでもある、と、わけのわからぬ濡れ衣を着せた


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