日奈久温泉は八代市街地から10kmほど南、八代海を望む海辺にある温泉地です。室町時代に海の干潟で発見されて以来、連綿たる歴史を持つ九州の古湯。この温泉街に、ひときわ威厳を湛える建屋を持つ旅館が、創業が明治43年の金波楼です。今では貴重な木造3階建ての建屋や、まるで「千と千尋の神隠し」に出てくるような、独特の存在感を持った姿に魅せられ、この旅館に宿泊することに決めました。
正門から玄関に入ってまずびっくり!柱や梁、床や階段の手すりがピカピカに磨き上げられています。
館内を進むと桃山様式の庭園が絶妙な雰囲気を醸し出している。
客室に案内されると、実に広く、襖や欄間も手の込んだものが設えられています。この建物、国の登録有形文化財に認定されているそうです。ワタシ、文化財に宿泊しているんですね。
建物は古いが、温泉だけはリニューアルされていて、小奇麗になっています。お湯は単純泉で湯触りは柔らかい。澄明で無味無臭。残念ながら掛け流しと循環を併用していて、塩素投入ながら、この時期は世界一大きいとされる八代市名産の晩白柚(ばんぺいゆ)と大量の夏みかんが入っていて、そのいい香りでいい感じ。塩素臭をマスキングしています。
露天は桃山様式の庭園に面していて実にいい景色が楽しめます。ここには晩白柚は入れられていないが塩素臭は気にならない。このお風呂、泉質は劣るが風情は超一流ですね。せめて一部のお風呂だけでも完全掛け流しにしてもらえたらなぁ…
料理は別室でいただくのだが、はっきり言って見るべき所はありません。仕出し屋から運ばれているようで、全ての料理があらかじめ並べられています。
名産の太刀魚の塩焼きは後から運ばれてくるのだが、これも水っぽくベチャベチャ。これなら大阪湾の太刀魚のほうがもっと旨い。
朝食はまずまず。名産の竹輪を焼いていただけるのは嬉しいですね。
この旅館、温泉や料理ははっきり言っていいとは言えないが、何よりもこの建物を維持し、恐ろしいほどに掃除に傾注していることに賛辞を惜しみません。こんな建物、火事でも出したら大変なことだから、いっそ全館を禁煙にする英断があってもいいんではないかな。それと、番頭さんやスタッフの接客にはプロ意識を感じるが、若い後継者に意気込みが感じられなかったのが残念なところ。伝統を持っている宿なのだが、それを最大限に活かす方法はいくらでもあると思います。
- 泉質:弱アルカリ性単純泉 43.9度
- 場所:肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅、九州産交バス・日奈久温泉
- 訪問日:2010年1月28・29日