翌朝、鳥羽のバスターミナルから志摩スペイン村行きの特急バスに乗ることにしました。このバスは絶景のパールロードを通り抜ける路線。車両も高速バス用の「セレガ」です。観光の乗客は少ないが、運転士は観光客には左側の座席を薦めている。景色はこちらの方がいいようです。適切で親切なサービスですね。
バスはミキモト真珠島や鳥羽水族館の前を通り過ぎる。ここまでの行程は修学旅行のとおり。しかし、いまさら水族館に行くまでもないので、ここは通り過ぎます。
バスはリアスの入り江を丁寧に通過していく。入り江では筏が多数。この筏の下にはワタシの大好きな牡蠣がたくさん実っているのでしょう。後日、ここで牡蠣の食べ放題を堪能しました。
確かに車窓の眺めは最高です。しかし気になるのは美しい眺めを切り裂くように造営されたゴルフ場。こんなのばっかり造って浮かれているからバブルが弾けるんじゃい!
バスは終点の志摩スペイン村に着きました。ここもバブルの遺物。近鉄もその扱いには苦慮しているようだが、それでもそこそこ人気のある施設のようです。で、ワタシはここを無視し、次のバスに乗り継ぎます。
怪訝そうな運転手を尻目に志摩磯部行きのバスに乗り込みました。開園直後なのに帰る客はあろうはずもない。案の定、乗客はワタシひとり。バスは三重交通では少数派の「日野車」です。
志摩磯部でうまい具合に賢島行きの普通列車に乗り継げました。2両編成の電車はワンマンです。近鉄志摩線は、以前はのどかなローカル線だったのだが、観光誘致のために近鉄が積極的に路線を改良したので、今では線路がまっすぐ引かれ、しかも複線になっています。
順調に乗り継ぐことができたので、予定より1本早い御座港行きのバスに乗れました。このバスも三重交通では少数派の「ふそう車」です。
バスは交通量の激しい国道をしばらく走り、突然左折したかと思えばいきなり漁港が現れました。波切港です。その先のバス停「大王崎灯台前」で途中下車します。灯台の名称は「大王埼灯台」で、崎の字が違う。
紺碧の空に突き刺すよう立つ22mの純白は見事としか言いようがない。灯台を管理しているおばさんが言うには、昔はここから富士山も見えたのだが、今や温暖化の影響で靄がかかって見えることがないとのこと。なんだかなぁ…
灯台の根元、には土産物屋が並んでいます。その中でも異常に多いのが真珠屋。こんなとこで売れるんやろか、生活できるんやろかと心配してしまいます。
波切の集落は画家が集まるところとしても知られています。青空と色とりどり屋根が織り成す景色は創作意欲が湧こうというもの。ところが、写真に撮ってもいい絵にならない。この写真のように電線が邪魔しています。ここは脳内でいいとこ取りできる絵画のほうが向いているのでしょう。ここの海べりの料理旅館で昼食を摂ることにしました。
波切漁港では干物が並べられています。どれも身がぷっくりしていて美味しそう。しかも激安です。でもこんなの買ったら一人モンにお多すぎるので諦めました。
灯台前から再びバス。御座港を目指します。やってきたバスはいすゞの「エルガミオ」です。
車窓からは波穏やかな景色が見えるが、ここは湾外の外洋です。べた凪の海は静か。それに比べて車内は通学の女子高生たちの騒がしいこと極まりない。
終点の御座港まで乗りとおしたのはワタシひとりだけ。御座港は以前、英虞半島へショートカットするカーフェリーも運航していたのだが、半島内の道路が整備されたので廃止に。現在は近鉄系列の志摩マリンレジャーが運行する、賢島-御座-浜島間を結ぶ1日4便の連絡船のみとなっています。
ワンマンカーならぬワンマンシップ。エンジン音は威勢がいいが、船足は遅い。小さい漁船に抜かれる始末です。
デッキに出ると哀愁漂う冬の海が広がります。ちょっとだけ鳥羽一郎になった気分。
英虞湾を漂うこと約25分、終着の賢島港に着きました。ここには後日、絶品のフレンチをいただきに再び訪れたんです。
港からすぐのところに近鉄賢島駅があります。この駅からは大阪行き、京都行き、名古屋行きが発着している。意外に大ターミナルなんだと実感します。特急に乗り込んだら、後は勝手に大阪まで連れてってくれる。いままでの人生を振り返るためのこの大人の修学旅行、あの頃には理解できなかった旨いもんに、いっぱい気づかされました。しかしあのころより余分な肉もいっぱい体に着いてしまったんですが…
- 訪問日:2006年12月10日・11日と以後数回