JRきのくに線・紀伊勝浦駅から北方向に歩いて15分ぐらいのところにある、バウハウス様式を思わせるモダンながらも少しレトロな建物が印象的なホテルです。
南紀を代表する温泉地の勝浦温泉には「ホテル浦島」のような超弩級ホテルや、格安志向で人気を集める「湯快リゾート越之湯」など、どちらかというと団体旅行やファミリー向けの旅館が大多数。
そんな中、この「海のホテル一の滝」は客室数21室という勝浦では小規模な部類で、しかも料理を提供しない素泊まりのみ。ホテルながら客室は純和風で、あらかじめ蒲団が敷かれているなど、過度なもてなしのないスマートな運営方針が好ましい。
前述の通り、食事の提供がないものの、生鮮マグロの水揚げ量日本一を誇る勝浦のこと、新鮮な魚を取り扱う料理屋が多数存在するので不便はありません。
温泉は男・女の大浴場にあり、大きな窓から熊野灘が一望で、弁天島と行き交う小船…風呂屋の壁にペンキで描かれている世界がリアルに再現されているようです。
浴場は半円形になっていて、この半円の外周に沿って浴槽があり、そのうちの3分の2ほどが加温・掛け流しの浴槽、残り3分の1が加温なしの源泉そのまま放流している浴槽です。
この非加温が秀逸。僅かに湯の花が見られる澄明なお湯は、硫黄臭があり、少しヌメリ感もある、最初は温いと思うが、じっくり浸かっているうちにだんだんホカホカしてきます。これが単純泉とはにわかに信じがたい浴感があります。
また、この旅館には露天はありません。湧出の温度が高くないので、無理して加温をせざるを得ない露天を造ってもお湯を劣化させるだけ。このあたりにお湯に対するこだわりが感じられます。
この温泉、地元の人からも愛されているようで、外来入浴のお客さんが多数訪れます。混雑する夜の入浴は落ち着かないので、宿泊者しかいない早朝が狙い目です。
温いお湯に浸かりながら睡眠と覚醒の間を彷徨う悦楽。これはなかなか得がたい贅沢です。
・場所:JRきのくに線・紀伊勝浦駅
・泉質:単純泉 38.8℃
・訪問日:2011年7月3日
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