奥津温泉の老舗旅館のひとつ、河鹿園です。ここの温泉は、大・小および露天の各浴場が時間帯によっての入替制で、夕方の大浴場は男タイムです。この大浴場も決して豪華ではないが、実にセンスがいい。
昭和初期のデザインらしく、壁や床に細かいタイルが曲面的にびっしり貼られていて質感を演出し、重厚なドア金具も時代を感じさせます。こんな手間のかかる造作は現在では不可能でしょう。なんでも、この細かいタイルは現在では手に入らないらしく、剥れて流されてしまったら大変だとか。流れ出た河原まで探しに行くこともあるそうです。驚くことに、掛け流しの浴槽の縁から溢れたお湯が浴室の床を均等に流れるようになっていて、足元がヒンヤリすることがないよう配慮されている。芸の細かさに脱帽です。
この旅館の温泉はもちろん掛け流しではあるが、若干の加温があるようです。しかし、これだけの大きい浴槽を快適なレベルに保つためには仕方ないかな。
露天のほうでも石畳に少しずつお湯が流れるようになっていて、足が冷たくないように配慮されています。
この露天では、閑散期は入浴の前に帳場に依頼して加温してもらうようになっています。逆に言えば、依頼しなきゃ源泉そのままってこと…もちろん加温なしのお湯でいただきました。真冬にはちょっと厳しいが、新鮮なお湯は気持ち良い。
浴槽の底から竹筒を通じてお湯が噴出している。真賀温泉と同じ手法ですね。ただし、泡付きは東和楼に比べると劣ることは否めません。この後すぐに大浴場で暖まったのは言うまでもありません。
朝風呂は小さいほうの内湯です。こちらは新しく設置されたとのこと。ただし、大浴場ほどの質感を味わうまではいきません。
料理は一般的な旅館の料理です。牡丹鍋も副えられるが、それほど賛美できるものではない。
赤飯のあんかけがいちばん良かったかな。この旅館の名物料理の鯉こくは、この日は食材が手に入らなかったらしく出てきませんでした。予約の段階で聞いていたので不満はありませんが…正月明けなので仕方ない。
ともあれ、実に上品な昭和の匂いが漂っているこの旅館、日本画や洋画、棟方志功の版画など値打ちのありそうな美術品を集めたギャラリーが宿泊者に開放されているのだが、セキュリティーや空調など、管理も大変でしょうね。
無駄を排し、いいものだけを飾るセンスは一流といえます。
- 泉質:弱アルカリ性単純泉 38~40度
- 場所:中鉄バス・奥津温泉BS
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