関西人はなぜか各私鉄を「○○電車」と呼びます。なんでかと考えてみたら「阪神」「阪急」「近鉄」「南海」と呼ぶと、野球のチームと紛らわしいからなんでしょう。今では「阪神」だけになってしまいましたが…濃ゆいオッサンたちで賑わっていた大阪球場や日生球場がまだあったワタシたち世代が子どものころ、大阪の子どもたちの多くは林間学校として高野山を訪れました。ワタシもそのひとり。初めてクラスのお友達と入るお風呂、お約束の「枕投げ」、先生に叱られての正座…無垢だったころの思い出がよみがえってきます。あれから30余年。社会の波に揉まれ、人生の垢にまみれ、そのうえ酒に溺れるようになって、まっしぐらにオッサン化していくワタシ。自身を反省するため、梅雨時ではあるが、久しぶりに高野山で身も心も洗い流そうと思いました。ついでに、龍神で温泉も…エヘ
前置きが長くなったが、で、高野山へ行くには、当然ながら南海電車です。大阪球場のあった難波駅から高野山行きの特急「こうや」に乗り込みます。電車は高野山ではなく極楽橋駅が終点。
この駅は高野山へのケーブルカーの乗り継ぎのためだけに存在する駅で、乗客のすべてがケーブルカーに乗って高野山に至ります。このケーブルカーは特急電車と一連のものとして取り扱っているようです。
改札を出て、駅前の南海りんかんバスの事務所で護摩壇山までの切符を求めると、副長と呼ばれる人が出てきて少々狼狽している。なんでも、このバスは客がいなけりゃ走らせない予約制らしいのです。知らなかった…ともあれ、出発予定時間までかなり時間があったので、バスを手配してくれることになりました。副長がバスの手配をするため奥の部屋でバタバタとしている。
「こんな日に龍神に行く変な客が一人現れたから、悪いけど行ったってくれへんか?」
「ええ???車、ありませんよ」
「どんなんでもかまへん、動くやつ出して!」
っとまあ、勝手にこんな舞台裏を想像してみましたが…
無事、急行バスの切符を手に入れ、ケーブルカー連絡の路線バスに乗って高野山の中心地に向かいます。真言宗の総本山「金剛峰寺」や美しい朱塗りの「根本大塔」など、高野山の寺々を参拝したあと、ここから奥の院へ歩くことにしました。
街中では名物の胡麻豆腐や数珠の店のなかに、「般若湯」と記した看板を掲げたお店が…酒屋のことです。真言密教の大道場では大っぴらに酒とは記せないからですね。
歴史上の有名人のお墓が立ち並ぶ杉木立の中を相当歩いた先に奥の院があります。境内では、多くの人たちが熱心に「南無金剛遍照…」と唱えています。ワタシも混じって日ごろの悪行を懺悔。
奥の院には広大な霊園があり、大企業や資産家などが、さまざまな趣向を凝らしたお墓を建立しています。ロケットの形をしたのが飛行機を作っている会社「新明和工業」。コーヒーカップの形は「UCC」などなど。「奥の院口」のバス停付近には土産物屋や食堂が並んでいて、ここで昼食。ついさっき懺悔したことも忘れて生ビールをキューっと一杯。さんざん歩いたので旨さもひとしおです。
そんなこんなのうちにバスの時間となり、バス停に護摩壇山行きのバスが迎えに来てくれました。バスは急遽手配したであろう観光タイプ中型のふそう「エアロミディ」です。そして予想通り、乗客はワタシひとり。標高の高い高野山から、さらに上に向かっていきます。以前は有料だった高野龍神スカイラインは全区間2車線のよく整備された道路で、和歌山最高峰の護摩壇山の山頂を越えていきます。標高が高くなると周囲に霧が・・・いや、雲だ。それまで見えていた景色が全く見えなくなりました。やはり梅雨時に来たのは失敗だったかな?
乗り継ぎの護摩壇山には有料の展望台「ごまさんスカイタワー」があり、時間待ちの間に入場できるか運転士に聞いてみると…
「お客さん、今日はアカン。何にも見えんよ。お金のムダ」
護摩壇山に着いたら反対方向から龍神自動車のバスが迎えに来てくれました。車両は日産ディーゼル・富士重工の中型で、なんとワンステップ。今やこんな山岳路線にもワンステ導入が進んでるのですねぇ。そして、またまた乗客はワタシひとりです。
「美人の湯」と称する温泉は、アルカリ性のヌルヌル感が特徴です。日本三大美人の湯と呼ばれているのは、島根県の湯の川温泉、群馬県の川中温泉。そして、その中でもいちばん名の通っているのが和歌山県の龍神温泉でしょうね。
翌朝、龍神を早々に脱出し、田辺に向かいました。さすがに朝の便は地元の老人や小学生たちを乗せているので賑やかです。整備された道路を通るので田辺までは1時間ちょっと…もう龍神を秘境とはいえませんね。残念ながら温泉に満足できなかったので、このあと明光バスに乗って白浜に行ったのは内緒です。
余談ながら、2009年の夏限定で熊野交通が高野山と那智勝浦をダイレクトに結ぶ熊野・高野アクセスバスが運行されたので乗ってみました。高野山から龍神まではほぼ同じルートを走るが、龍神は大型バスが入れないので、残念ながら通過することになるが、護摩壇山からの見晴らしを楽しむことができたと思います…ええ、このときも霧だったのでなんも見えなかったので…(涙)
- 訪問日:2005年6月22~23日
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