JR紀伊田辺駅からバスで2時間ほど(龍神自動車)、JR新宮駅からは1時間ほど(熊野交通・奈良交通)。そして日本一長距の路線バスとして有名な奈良交通・八木新宮特急バスで大和八木駅から5時間半!ほど揺られてようやくたどり着く川湯温泉。遠い場所だからこそ秘湯を訪れてきたという実感がわいてきます。
「冨士屋」は熊野本宮温泉郷・川湯温泉にある老舗の温泉旅館。ここは川湯温泉随一の伝統と格式を持つ旅館で、それが証拠に、玄関の前に各バス路線のバス停があり、その名称も「ふじや前」。この隣の「かめや前」とともに、老舗旅館たる証左です。
たびたび訪れている熊野の温泉で、川湯で定宿にしているのはお隣の「亀屋旅館」なんだが、今回は年に一度に限られる夏の贅沢旅行。熊野ではおそらくここだけ、露天風呂の備えた部屋「熊野モダンルーム」のあるこの「冨士屋」でお世話になることにしました。
「熊野モダンルーム」は3室、宿泊したのは熊野の竹をふんだんに使用したという「せきれい」のお部屋です。ワンルーム・50㎡ちょっとの空間に、ベッド、洗面、シャワー、トイレが配置され、広いベランダにこの部屋の白眉、部屋付きの露天風呂が備えられています。なによりうれしいのがチェックインが14時から可能なこと。この部屋でよりゆっくり過ごすことができるのもここを選んだ理由の一つです。
ナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉の自家源泉を持つこの旅館では、男女の大浴場、露天浴場、貸切露天とともに、部屋の露店にも今まさに湧出したばかりの温泉が惜しげもなくかけ流されています。
湯の花の浮かぶ澄明のお湯は、僅かに塩味があるが匂いも希薄で、端正な湯質。高温のため加水されているが、加水を絞って濃厚な温泉を造りだすことができるのは専用露天風呂の特権です。
川湯温泉は河原を掘ると温泉がポコポコと湧いてくるという、西日本では関西ではおそらくここだけの珍しい温泉。夏休みに突入したこの時期は、エメラルド色の大塔川に子どもたちや、最近急増してきた欧米系の外国人、そして野生のカモまで仲良く水遊びを楽しんでいる。その嬌声を聞きながら、こちらは静かに湯浴みを楽しみます。
食事は専用の個室に用意されます。「せきれい」の部屋にあてがわれているのは稲葉根という個室。老舗旅館の矜持が感じられる地元の食材を活かした手作り感のある料理の数々が楽しめます。
料理の詳細は食べログで。
この旅館の極上の温泉と、洗練されたお料理、そしてさりげないサービス。ここでは日本が世界に誇るべき温泉文化を味わうことができると思います。
・場所:奈良交通、熊野交通、龍神自動車・冨士屋前BS
・泉質:ナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉 73℃
・訪問日:2016年7月23日
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