獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅰ章 その4

2023-02-04 01:02:23 | 東村山女性市議転落死事件

長井秀和が西東京市市議会議員選挙で当選を果たしました。
その選挙戦の中で、長井秀和は東村山市議転落事件に言及し、それを創価学会は誹謗中傷ととらえ、告訴に踏み切るというきな臭い争いも起きているようです。
私は、長井秀和自身はどうでもいいですが、東村山市議転落事件については真相解明を望むものです。
そのためには、何が問題になっているかを、今一度冷静になって考えるべきだと思います。
基本的な情報を共有するために、いくつかの資料を提示したいと思います。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんには、メールで著書を引用している件をご報告したところ、以下のように、御快諾を得ています。
「獅子風連のブログで拙著をお取り上げていただいているとのこと、ありがとうございます。
どうぞ、ご自由にお使いください。」
乙骨さん、ご了解いただき、ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
■Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


◆「事件性なし」の理由
千葉副署長は、司法解剖の所見を明らかにしたこの日夕方の記者会見でも、記者団の質問に答えて「事件性が薄い」と判断した理由を、こう説明している。
1、遺体の落下の位置が建物のすぐ近くであり、足が骨折していることからみて、足からスーッと落ちたとの推測がなりたつ。
2、ぶら下がった跡と思われる手の跡があり、落下位置と符合する。突き落とされた場合、落下位置が建物から離れる。
3、争った場合につく上腕内部の擦過傷がない、また、頭部にほとんど外傷がないなど遺体の外見上の所見。
あわせて、「事件性は薄い」との最終判断を下したのは「現場のトップである自分」であることを明らかにしている。
一連の発言からは、東村山署の「事件性なし」との判断は、現場の状況や遺体の外傷所見に加え、「万引き事件」で起訴されることを朝木さんは悲観していたと考える千葉副署長の“想像”に基づいて下された判断であることが分かる。
だが、遺族はもとより、現場を取材したマスコミ関係者のなかには、この判断に首をかしげる者が多い。というのも、「事件性なし」と判断するには現場の状況に不自然、不可解を点があまりにも多いからだ。

◆手すりと靴
まず、千葉副署長は、幅16センチの手すり(防護壁)についた指の跡を、朝木さんがぶら下がって転落した証拠だというが、この指の跡から朝木さんの指紋は採取されていない。また、踊り場の手すりは三段になっており、いちばん低いものからそれぞれ階段の床から1メートル10センチ、1メートル28センチ、1メートル50センチの高さがある。指の跡はこのうち1メートル10センチと、1メートル28センチのところについているが、外側にぶら下がるためには、手すりを乗り越えなければならない。当然、手をつくものと思われるが、手すりから朝木さんの指紋は一つも検出されていない。もちろん、朝木さんは手袋などしていなかった。
こうしたことから遺族は、ぶら下がって落ちたのではなく、落とされたのだと主張する。千葉副署長は、朝木さんが真下に落ちていることを挙げて、強制力が加わっていないと説明するが、手足の自由を拘束され、落とされだとすれば、体はスーツと真下に落ちるから、落とされたとしても矛盾はない。
また、朝木さんは発見された際、靴をはいていなかった。その後の捜査でも現場付近から靴は見つかっていない。自宅にも、「草の根」事務所にも、当日はいていた靴は残されていない。このことから遺族や関係者は、靴がないのは、誰かに連れさられた可能性を窺わせる事件性の根拠と見ている。
しかし、この点についても千葉副署長は、「靴が見つかっていないのは不自然であり、捜査の対象となる」と認めるものの、その一方で、「足の裏が汚れているので、裸足で歩いていた可能性が高い」と主張するなど、必ずしも事件性の根拠と考えていない節がある。2日タの記者会見でも、千葉副署長はこう語っている。
「たしかに靴が見つかっていないのは不自然。だから、事件性は薄いが、捜査は続ける。しかし、遺体が靴をはいていないのは自殺の典型。朝木さんのストッキングや足の裏には汚れがついているから、裸足である程度歩いたものと考えられる」
裸足で歩いた痕跡があるとするストッキングには、血糊がベットリとついており、事件後数日を経ているにもかかわらず、包んだ紙に血の痕跡が生々しく残るほど汚れていた。もちろん、血糊には砂ぼこりらしきものも混ざっていたが、それが裸足で歩いたからついたものか、それとも現場に倒れている間についたものかを、判別することなどできようもなかった。
また、裸足の足の裏についても、遺体は縫合後、棺に納める段階で拭かれている。足の裏の汚れがどの程度のものだったかは判然としない。
現場となった「ロックケープ」ビルには、外階段の横にエレベーターがあり、5階と6階の踊り場から自らの意思で飛び降りるためには、必ず階段かエレベーターを使用しなければならない。
もし、朝木さんが裸足で歩いていたとすれば、当然、どちらかに臭いの痕跡が残るはずだが、警察犬は朝木さんの臭跡を発見していない。
「8月に東村山署は、管内の清瀬市で警察犬による強盗追跡訓練を実施している。強盗に扮した警察官を、警察犬が追跡し、逮捕するというものだが、土砂降りの雨のなか、警察犬はみごとに強盗の臭跡を嗅ぎわけ、追跡に成功している」(全国紙地元記者)
土砂降りの雨のなかでも臭跡を嗅ぎわけた警察犬が、階段やエレべーターの臭跡をつきとめられないなどというようなことがあるのだろうか。
「事情聴取のときにこの点を尋ねたら、東村山署の刑事課長は『それは犬に聞いてみなければわからない』と答えた。馬鹿にするにもほどがある」(大統さん)
警察犬が臭跡を発見できなかった事実は、朝木さんが歩いたのではなく、運ばれた可能性があることを示唆しているように、私には思える。

◆鍵
靴同様、朝木さんが事務所を出る際に使ったはずのキーホルダー付きの鍵が行方不明となっていることも、不可解だといわれていた。その鍵は、事件発生から19時間後の2日午後5時半頃、「ロックケープ」ビル二階の焼肉店の裏口付近で発見された。だが、発見された時間と場所からして、果たして当初からそこに落ちていたのかどうかにも疑問がある。
「鍵は、店の裏口、ビールケースやポリバケツなど置いているエレベーター横の踊り場に落ちていたんです。酒屋さんなど出入りの業者が落としたものだと思って一日保管しておいたのですが、誰も取りにこないので、店が終わった4日の午前1時頃、駅前の交番に届けました」(焼肉店関係者)
鍵が落ちていた現場は、エレベーターと外階段の中間地点。意図的に放り投げるか、立ち寄らなければ落とせる場所ではない。私が、現場を訪れた2日早朝、警察犬はさかんに階段付近を嗅ぎ回っていたが、朝木さんが常に所持していた鍵の匂いすら、嗅ぎ分けることができなかったのだろうか。東京都内で警察犬や盲導犬を訓練する訓練士のAさんは、犬が鍵を見つけられなかったのは、不思議だと首をかしげる。
「捜査能力や捜索能力を訓練している警察犬が、限定された範囲内に落ちている所持品を発見できないなどということは、ちょっと考えにくい。警察犬が丹念に捜索して見つからなかったのであれば、事後に置かれた可能性もある」
2日の昼すぎ、私も、現場の階段をくまなく歩いたが、そのときには鍵を見つけることはできなかった。
そして、この鍵をめぐる東村山署の対応にも、きわめて不自然なものがある。焼肉店の関係者は、4日の午前1時に、鍵を東村山駅東口の駅前交番に届けているのだが、東村山署から遺族のもとに鍵が発見されたという連絡があったのは、それから1週間も後のことだったのである。
「11日午前、東村山署の遺失物係から電話がかかってきて、『朝木さんの鍵が見つかった』というんです。『どうして分かるんですか』と聞いたら、『いや、鍵を探していると聞いたので、確認に来てほしい』というのです14日の午後に確認に行くと、母の鍵は、1週間分の遺失物の鍵と同じ箱にゴチャゴチャに入れられていました」(直子さん)
しかも、直子さんらが、指紋がつくといけないということで、ティッシュでそれをつかもうとすると、係は、「みんなさわってますから、そんなことしても無駄ですよ」といって、無造作に鍵をつまみ上げている。

◆捜査への疑問
朝木さんの事件では、靴と鍵がないことが捜査上の大きな焦点になっていた。そのさなかに現場の焼き肉店から鍵の届け出があれば、すぐにでも確認に走るのか常識。にもかかわらず、数日間連絡せず、無造作に扱うなど、脳天気というか、当事者意識がないというか、呆れるばかりの対応である。千葉副署長は「慎重に捜査する」と発言したが、鍵をめぐる現場すぐ横の東村山駅東口駅前交番と東村山署遺失物係の対応は、千葉副署長の発言とは裏腹に、自殺との判断に立つ東村山署の捜査がいかにずさんであり、やる気のないものだったかを物語っている。
そうしたやる気のなさ、ずさんさは、事件発生当初の初動捜査、現場保存のあり方にも指摘できる。千葉副署長は、私の取材に対し、東村山署による現場検証は、朝木さんを救急車で搬送した後の1日深夜から2日未明にかけて行い、終了後、現場保存はしなかったと述べている。
ところが、遺族が病理解剖を希望するや東村山署は、検察官と本部の鑑識、そして警察犬の出動を要請。早朝6時頃から二度目の現場検証行っている。当然のことながら、本部鑑識による二度目の現場検証が行われるまでの数時間、現場は放置されたままだったはずだ。
2日午後の記者会見の席上、千葉副署長は捜査について「朝木さんだったので捜査は手厚くした」として、
「検察官を要請したばかりか、鑑識についても東村山署の鑑識ではなく本部の鑑識に依頼した。この種の変死事件で警察犬を要請したのも初めてだ」
と強調。現場保存をしなかったことについても、
「本部の鑑識の捜査が終了し、総合的に勘案して判断した。初動捜査が終わって縄を張るのはよほどの場合だけ」
と説明。操作は慎重かつ適正に行われており、落ち度はなかった旨強調した。
だが、検察官や本部鑑識、警察犬を蕎した二皆の検証は、遺族が病理解剖を重しだ葉
行われたのであって、当初、東村山署は、交通憲の現認証霞の検驚けで自殺と判断、そ
の時点で墨を打ち切っていたのであるoその蕪では:つがっ売方かもしれないが、検雷
と本部鑑識、そして瞥寮犬の要請は、捜査のずさんさが問題化するのを恐れた東村山署サイドの、「一生懸命捜査した」との既成事実を作るためのアリバイ工作だった感さえする。
現場は、2日早朝の現場検証が行われた後は、保存も立ち入り規制も行われず、まさに放ったらかし状態となっており、取材の記者や野次馬が自由に足を踏み入れることができた。
私も、午前11時頃、初めて転落現場に足を踏み入れたが、そこには、血糊がベットリとついたベニヤ板や、激突のショックで割れたと思われる空調パイプが、無造作に放置されており、東村山署が、朝木さんがぶら下がったと見る五階と六階の間の踊り場にも、多くの人が自由に出入りしていた。私が上がっていくと、そこでは、「キャーッ」という叫び声を聞いた女性の友人である五階の住人が、東村山署が朝木さんがぶら下がった跡と判断している指の跡を指しながら、「ここに跡がある」とマスコミ関係者にさかんに説明している最中だった。
数年前、上野・池之端、不忍池の辺りに建つマンションで、殺人事件があった。ちょうどそのとき、私は、このマンションに隣接する印刷会社に校正に通っており、数日間、毎日、現場の前を通ったが、その間、現場にはロープが張られ、立ち入りが厳重に規制されていた。他殺か疑われる場合、それこそ髪の毛一本、足跡一つにいたるまで徹底的な捜査が行われる。それだけに、東村山署の現場保存のあり方に私は強い疑問を抱いた。
「現場保存もせず、このように誰でも自由に出入りできるようにしていていいんだろうか」
既知の週刊誌や日刊紙記者に疑問をぶつけたところ、皆、一様に、東村山署の現場保存のあり方に首をかしげ、なかには、
「長い間、事件現場を取材しているけど、こんなに自由に、しかもじっくりと現場を見ることができたのは初めてですよ」
と“皮肉な”感想を漏らす記者もいた。


解説
朝木さんの事件では、靴と鍵がないことが捜査上の大きな焦点になっていた。そのさなかに現場の焼き肉店から鍵の届け出があれば、すぐにでも確認に走るのか常識。にもかかわらず、数日間連絡せず、無造作に扱うなど、脳天気というか、当事者意識がないというか、呆れるばかりの対応である。千葉副署長は「慎重に捜査する」と発言したが、鍵をめぐる現場すぐ横の東村山駅東口駅前交番と東村山署遺失物係の対応は、千葉副署長の発言とは裏腹に、自殺との判断に立つ東村山署の捜査がいかにずさんであり、やる気のないものだったかを物語っている。

私も、捜査への疑問は、増すばかりです。
テレビドラマをたくさん観てきた者の素人考えですが、「やる気のない」捜査の理由は、たいてい「上からの圧力」ですね。
「この事件は、自殺の線で、早々に幕引きを図れ」というような上からの指示が、千葉副署長あたりにあったということでしょうか。
あくまで想像ですが。

獅子風蓮